第25話・うまい話と大損害
拙い文章で申し訳ございません。
頑張って行けるところまで行きたいです。
せめて、伏線は回収したいと思います。
今私の前には、二人の若者がいる。
先日、ガジェットの奴が、『話したいと言う冒険者がいる』と言うので、面白そうだと、会うことにした。
この街のギルドマスターとは以前から知り合いで、戦友と言える。
この二人が来る前に、ある程度の人となりを聞いてみたのだが、勇者並みに強い、素性がまったく分からない青年だという。
一ヶ月ほど前に突如、この街にやってきて冒険者登録をした。
そのときのレベルから、Sランク並の実力であることが分かったが、登録上の問題でCランク扱いになっているのだという。
その青年が、何かこの街を復興させる得策を持ってきたらしい。
かな~り怪しいが、今は藁にもすがる思いだ。
今はもう、かなりこの街はまずい状況にあるといえる。
それを打開できる可能性があるのなら、是非聞いてみたい。
そうしてやってきたのは、思っていたよりずっと若い、青年だった。
顔には出していないが、思わず私は、ギルドマスターのほうへ顔を見やる。
深く頷いていることから、間違いないらしい。
しかも小さな子供までつれている。
これは聞いていない。 失礼は百も承知で聞いてしまう。
『その女の子は、君の何か』と。
・・・・その子は、どうやら青年の”妹”らしい。
はっきり言って、彼とは似ていない。 まったく似ていない。
だが二人が醸し出す雰囲気から、お互いがお互いを、とても大切に思っているらしいことはすぐに分かった。
親同士が再婚して・・・だとか、養子だとか、この世界ではいろいろある。
この世界では、大金持ちの坊ちゃんが次の日、両親ともに死んで、『孤児』となってしまう事もあるのだ。
別に似ていない兄妹も不思議ではない。
女の子の方も、十分すごい実力者に見えたが、冒険者ではないという。
まあ・・・今、重要なのはそこではない。
自己紹介もお互い済み、本題へと移る。
□ □ □
「ふむ、魔石の採掘・・・・か。」
思わぬ提案に、腕を組んで思案する。
盲点であった。
魔石は強大な、魔物からだけ採取できるというのが、世界の常識なので。
一応、土地にも魔石が存在することは確認されていたが、そういった土地は一般に、大変危険な地帯で、
地中を掘るなんてことをしている間に、魔物に襲われてしまうのだ。
そもそも土地に、魔石が存在していることを知らないものも多い。
しかし今、魔の森は正体不明の現象で魔物が一匹もいない。
つまり、上記の安全性は確保されていると言える。
魔石からは尋常ではない、魔力が出ているが、それは各個人が防御魔法を展開すれば済むことだ。
掘り出す方法についても、心当たりがあったとかで今、準備中らしい。
はっきり言って、この上ない提案である。
安全性も高く、財政も潤って、さらに初期投資もほとんどかからない。
やりようによっては多くの雇用者も生まれ、下手をすれば前よりこの街が発展するだろう。
しかし・・・・・・・。
話がうますぎる!!
「これは何かある!!」と、自分の長年の勘が警鐘を鳴らす。
なぜならもし、そんなことを思いつくなら、こうして誰かに教えるより、勝手に持ち出して売ればいいのだから。
誰も咎めなどしないだろうし、気にも留めない。
それをわざわざ、よりによって領主たる自分に教える。
警戒して差し支えないのは、火を見るより明らかだ。
ちなみにギルドマスターは、先ほどから一言もしゃべらず、静かにカイト君の話を聴いている。
彼の、カイト君の意図が読めない。
いったい彼は何を目論んで、私にこの話をしているのだろうか?
表情から、感情を読み取ってみようとしてみるが、まったく読み取れない。
分かるのは、「自分の提案が受け入れられている」ということに関すると思われる、喜びの感情だけであった。
女の子も一応、チラッと見てみたがキョトンとした表情をしていた。
そもそも、何の話をしているのかも分かっていなさそうだ。
このまま、彼の提案を鵜呑みにしたら危険だと思う。
もう、失礼とかは言っていられない。
ひとつの街の運命がかかっているのだ。
これが引き金に、街が滅亡することだってありえなくない話なのだ。
「君は、一体何を望んでいるんだね・・・・・?」
真剣に、彼の目を見てそう質問した。
途端にキョトンとした表情になるカイト君。
核心を突かれて、驚いているのだろう。
こういうのは、人生経験の多いほうに分が上がるのだ。
「参ったな・・・・気づかれてしまいましたか。」
バツが悪そうな顔を浮かべるカイトという青年。
やはりか・・・・。
聞いてよかったと思う。
危ないところであった。
ギルドマスターも、『まさか・・・』という顔をしている。
相当、彼の言葉が予想外だったのだろう。
人間をすぐには、信用してはならないのだ。
世の中、どこに落とし穴があるのか、分からないのだから。
「実は・・・・」
次に彼から発せられた言葉に私は、度肝を抜かれるのであった。
□ □ □
彼は話が終わると、実に嬉しそうに妹と呼ばれた女の子と帰っていった。
そして私の隣にいるギルドマスターのヤツはと言えば・・・・
「いい青年だったろう?」
と、私に話を振ってきた。
「ははは・・・・。」
返事は、笑うことでしか返せなかった。
彼が私に求めたことは・・・・
はっきり言って大損害だ。
お金なんかどうでもいい。
街のためとはいえ、私は大変惜しいものを失うことになる。
「カイト、か・・・・」
実に面白い人間であった。
やっと25話。
早く物語の本筋に移行したいです。
カイトが領主様に求めたことは・・・・
次回、書きたいと思っています。




