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オタクはチートを望まない  作者: 福島 まゆ
第11章 鉄道の延伸計画
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第250話・ダリアさん、夜番する

これからも、頑張っていきます。

感想などがありましたら、どんどんお寄せください!

魔の森は夜更けと共に、だんだん底冷えして来る。

今日一日の疲れが出たのか、カイトたちはテント内ですっかり寝静まっていた。

それにも関わらず、パチパチという音を立てて点された焚き火の焔が、辺りを明るく照らし出す。

火の無用心、という訳ではない。


「・・・・。」


一心不乱に、くすぶる焔を見つめるのはダリアさんだ。

先ほどのカイトとの『勝負』にボロ負けした彼女は、示談によって何とか『朝食抜き』を回避。

代わりに、カイトに代わって『夜番』を買って出た。

たった一夜寝ない位、何ともない。

それより『朝飯抜き』の方が、彼女的にはずっとマズかった。

もっと鍛錬して、今度こそ彼をボコボコにしよう。

いつか、その内に。


「くあああ・・・!!」


眠くはないとはいえ、生理的にどうしても欠伸あくびが出てしまうから不思議だ。

昔はこんな事はなかったのに。

最近『夜は寝る』という生活を続けていた、弊害だろうか?


「・・ん?」


さくさくと、後ろからこちらへ向かってくる足音が聞こえる。

とても小さい音だが、これに素早く反応する彼女。

ドラゴンの感覚は、すべてにおいて優れている。

それは人間体になると制約はかかるが、大きくは変わらない。


「おや、あなたは・・・。」


相手の姿を見て、警戒を解くダリアさん。

やってきたのは、くだんの獣人の奴隷であった。


「このような夜更けに、何か御用でしょうか?」


一応だが自分の立場は、メイド。

従者としての勤めを果たし上げるのも、また良きかな。

自分で言い出した以上、果たし上げてこそのプライドだ。


「・・・・。」


「これは・・?」


無言で彼女が差し出してきたのは、アッケビの実。

甘くて美味い、森に自生する木の実だ。

かなりたくさんあるように見受けられるが、私にくれるという事だろうか?

いや、それよりも問題なのは。


「あなた、いつ私の目を盗んで、森の中へ入ったのですか?」


「・・・・?」


ダリアさんが向ける殺気に動じることなく、小首をかしげる女性。

そういえば夕食後のバトルから帰った後、この女の姿は確認していなかった。

あの間に、森に分け入っていたのだろうか?

だとしたら、とんだ『夜番』である。

この事はカイト殿様には、黙っていよう。


「木の実は、ありがたく頂戴いたします。 明日の朝、皆で頂くとしましょう。」


「・・・!」


彼女もそれを望んでいるようで、首を大きく縦に振る。

1人占めも考えなくはなかったが、こんな夜更けに1人で食っても、楽しくない。

カイト殿様方が起きている上で、幾人かで食卓を囲んで食事をとるから良いのであって、そうでなくては料理の美味さは半減だ。

面白くも、何ともない。

正直それなら食事などせずに、空気中の魔素を吸収するだけでも、別に死にはしない。


「明日は早いですよ、カイト殿様の行動は殺人級です。 用事が済んだのならば、お早く寝る事を薦めます。」


「・・・。」


焚き火の前で、番を続けるダリアさん。

だが一向に、この女性は離れようとせず、テントを指差す。

まさか、彼のことを知りたいとでも言っているのだろうか?

獣人の感覚は鋭いので、彼に何か感じることでもあったのだろう。

『ふむ。』と一考するダリアさん。


「彼を一言で表すならば『お人好ひとよしのドあほう』ですね、大公という人間の地位に就きべアルという領地で領主をしながら、彼からはそのような威厳が一切感じられません。 私含め、奥様などの周りの方々のフォローで、何とかやっては居ますが・・・。」


「・・・!!」


獣人女性の顔が驚愕に包まれるが、それに気にすることなく、ダリアさんは話を続ける。

彼に関してなら、特筆すべき点が山ほどある。


「彼はこの世界で、何より強力な力を有しています。 それを使えば世界を滅ぼすことも出来るというのに彼は征服すら、しようとはしない。 そんな彼に興味を持ち、私はそれまで見下していた人間の世界に、足を踏み入れてみたのですよ。」


「・・・?」


不思議そうに、ダリアさんを指差す彼女。

しまった、口を滑らせて、余計なことまで言ってしまっていた。

この事は秘密にしていないと、どうやらメイドが続けられなくなるよう。

・・・まあ、このような奴隷の獣人ふぜいが、自分の正体に気づくことはなかろう。

でもアブないところではあった。


「私の正体は秘密で。 ところであなたは、しゃべれないのですか??」


「?」


この娘は、会ってから一度も言葉を発していない。

いちいち意思疎通するのが、億劫おっくうだ。

もし話せるのならば、話してほしい。


「でも・・私が話すと皆、不幸になるから・・・。」


しぼり出すように発せられた、小さな声。

言葉の裏に、何か大きなモノを感じる。

過去に何か、あったのかもしれないと思った。

が、そんな事は私は知らないし、知ろうとも思わない。


「・・・あなたの発する言葉には、魔力は感じません。 少なくともあなたが話すことで不幸が起きるなどという事は、起こり得ないでしょう。」


「!!」


「何よりさような不幸ごと、私やカイト殿様の力があれば、どのような事でもね付けられるでしょう。 むしろ送りつけてきた奴を完膚かんぷなきまでに殲滅せんめついたします。」


いらないモノをくれたバカには、100倍以上にして返してやる。

死んでも魂までむさぼりつくして、ズタズタに引き裂いてくれよう。

むしろ楽しそうなので、イッツカモンだ。

ま、そんな身の程知らずも、そうそう居ないであろうが。

おのれの願望を、笑みと共に漏らす。

・・・それよりも、先ほどより彼女には気になる箇所が。


「ところであなた・・・その頭の上の耳、触らせて貰えませんか? 興味が湧くと言いますか、ぜひその、モフモフを・・・!!」


「!!!!」


「お待ちなさい、私から逃げようなどとしてもムダですよ?? フフフフフ・・・!!!」


彼女たち2人の『追い駆けっこ』は、この後、夜明けまで続くのだった・・・。


なお後日、この事がバレてダリアさんは、カイトに渾身こんしんの拳骨を食らうこととなる。

彼の攻撃が速すぎて、とてもこれを避ける事はかなわず・・・

感想としては、今までの竜生で一番、痛かったですね。



ダリアさんの負ったケガは、すぐに治癒魔法で治療されました。

制裁のため、痛みのみを少し残して・・・

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