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オタクはチートを望まない  作者: 福島 まゆ
第11章 鉄道の延伸計画
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第249話・私は、何かしたでしょうか?

これからも、頑張っていきます。

感想などがありましたら、どんどんお寄せください!


また、私は生き残ってしまうのだろうか?


一体、これで何度目だろう。

暗い中、仲間達の悲鳴と魔物の咆哮ほうこうだけが、辺りに響くのが聞こえる。

凄惨な光景が、目の前にありありと映し出されるようだ。

毛布越しだったといえ、かなり強く馬車に打ち付けられたらしく、動かそうとすると体が悲鳴を上げる。

当たり所が悪かったのか、意識が朦朧もうろうとしていく。

薄れ行く意識の中、最後に言われた一言が、頭に反芻はんすうされる。


『私たちの分も、自由に生きて!!!』


・・・私が生きて、それでどうなると言うのか。

私のような獣人は差別される対象で、人間達と同じに扱われることなどない。

生きても、辛いだけ。

この耳が無ければ、尻尾が無ければと、今まで何度思ったことか。

ただ獣人と言うだけで、奴隷と言う身分。

神様、私たちは何か、過去にあやまちを犯したのでしょうか??


答えられることの無い疑問を最後に、彼女は意識を闇の中へと落としていった・・・・




◇◇◇




「お、良かった! 気がついたね!?」


「!!?」


目を開けて最初に飛び込んできた、白服の同年齢ぐらいの男性。

あまりに急なことに、彼女は大きく後ずさりをする。

困惑と共に、鋭い視線を彼らへと向ける。

どうやらカイトたちは、この女性に警戒をされているようだ。

まあ、そうなりますよね・・・。

傷は治癒魔法で治したから、別にいいけどさ。


「ふう・・・」


「カイト殿様、早く夕食を! 私は腹が空きすぎて死んでしまいそうです!!」


「待てよダリアさん、お客さんが先!!」


「ううぅ・・・・」


カイトに『待て』の指示を出され、焚き火の後ろに引っ込むダリアさん。

あなたは俺に、ため息をつく暇すら与えてはくれないのか。

夕食前にこんな事になってしまい、腹がすいているのは分かるが、まずは衰弱したこの生き残りの女性に何かを食わせなくては。

やっと生存者を見つけたのだから、せめてこの1人でも、丁重に保護したい。


先ほど捕ってきたソニック・シギーを鍋で煮込んで作ったスープを、女性の前に差し出す。

今回の事件で助けられたのは、結局灰色の髪の毛と耳を持つ、獣人の彼女1人だけ。

彼女は見たところ、あちこちがやせ細っており、奴隷であったことを考えても、少なくともここ最近は、マトモに食べていないとも考えられる。

だからこその、『スープ』だ。

いきなり消化の悪いモノを出したら、体調を崩してしまう恐れがあるからな。

地球知識だけど、基本的に異世界でも大きな違いはあるまい。

だがしかし、彼女はなかなか警戒を解いてはくれない。

お腹は空いているはずだと思うんだけど・・・・

うーん、毒でも入っていると思っているのだろうか?


バクバクガツガツ!


・・横からくだんのスープをかきこむ音が。

ひょっとしなくても、ひょっとしているだろう。

少しぐらい、ガマンしてほしかった。


「こら、ダリアさんまだだったら!!」


「もう我慢なりません! 私は食います!!」


ダリアさんの目が、ギラギラしている。

コワいよ。

それではまるで、獲物を狙う野生の狼だよ。

無垢な少女の見た目とは、あまりにもミスマッチだ。


が、ダリアさんの食うのを見て安心したのか、お客さんがスープを口に運び始めた。

図らずもダリアさんのコレが、毒見役としての効果を発揮したらしい。

うーん、結果オーライ?


「さ、俺たちも夕飯だ。 いただきます!」


「「いただきます!!」」


だいぶ遅い夕食になってしまった。

先ほどの事もあって探索魔法での警戒は怠らないが、今のところは特に、変わった様子は無い。

まあさっきから何人か、こちらを伺っている人たちがいらっしゃるようだけど、特にあちらからは接触が無いので、無視をする。

多分ちょっとした、通りすがりだろう。


「お兄ちゃん、この料理何?」


「うまいだろ、お好み焼きっていうんだ。」


地球名だけどね。

本当の料理名は、知らない。

彼女の評判は上場のようなので、良かった。

ちなみに俺は、ソースがたっぷりかかっているのが、好みだ。

この世界に、ウスターソースなんか無いけど。


「カイト殿様、このような事があったのです。 明日はこの森で休息いたしませんか?」


「ダメだよ、ベアルまではあとちょっとだろう? 屋敷に着いたら幾らでも休んでいいから。」


こんな森で、2日も野宿とかちょっとイヤだ。

どうせ残る距離はだいぶ少なくなっているのだから、ちょっとガマンしてほしい。

大袈裟に落ち込んでも、こればかりは譲れません。

何よりこの女性を、早くどうにかせねばならないのだ。

なるべく早く、ベアルへ赴いて、然るべき対処をせねばならないだろう。

そのためにも、明日休むなど言語道断なのだ。

彼女は火傷しないためか、少量ずつスススッとスープをかきこんでいる。

早速、聞きたいことから質問させてもらうか。


「ねぇ君、名前はなんていうの? 差し支えなければ、教えてもらえないかな??」


「・・・・・。」


スープを食す手を止め、その女性は顔をうつむかせた。

名前を言いたくないのだろうか?

もしくは名前に関して、何かしらのトラウマがあるとか・・・

だとすると、悪いことを聞いてしまったかもしれない。


「ご、ごめん、他意はないんだ。 純粋に君の名前が知りたくて・・・言いたくないなら言わなくていいんだ。」


「・・・・・。」


一言もしゃべることなく、再び彼女は食事の手を動かし始めた。

・・・さ、俺も食う・・。


「ど!? お、俺の分の食事が・・・!!!」


話し込んでいるうちに、いつの間にやらカイトの前に並べられていた夕食が、カラッポになっていた。

まさか、野生動物にやられた!??

いや、その判断は性急に過ぎるだろう。

きっと犯人は、メンバーの中に居る!!

一番、疑わしいのは・・・


「ダリアさん、俺の分まで食ったろ!?」


「食べましたが、何か?」


ダリアさん、まさかのあっさり自白。

隠すとか言う考えは、毛頭ないらしい。

いや、何をちゃっかり他人ひとの分まで食べてるんだよコンチクショー!!

『蒼き炎竜亭』の料理は、好きなので、カイトの怒りはひとしおだ。

食い物の恨みは、恐ろしい。

カイトからは、怒りの焔が湧き上がる。


「ダリアさん、そういえば少し前に『遊ぶ』約束をしていたよね? 明日の朝ごはんをかけて、勝負しない?」


「ほほう、これまた酔狂な・・・望むところです。」


そう言って、薄笑いを浮かべるダリアさん。

『酔狂』などとは言っているが、彼女はノリノリである。

俺も彼女に一言、謝らせるため、全力でいかせてもらう。

人気のない森で、助かった。


双方すっと立ち上がると、その姿を森の中へと消していく。

ヒカリと獣人の女性は、それを黙って見送ることしか、出来なかった・・・・




事後の森の後片付けは、きちんと行われました。

自然破壊、ダメ絶対。

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