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オタクはチートを望まない  作者: 福島 まゆ
第11章 鉄道の延伸計画
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第248話・発見!


作者がニガテなはずの、ちょいスプラッタ描写ありです。

苦手な方は、ご注意下さい。



「なんだ、これは・・・!!」


辺りに広がる光景を前にして、憤慨ふんがいやるたかないと言った面持ちで、カイトは驚きの声を上げる。

5台の馬車が壊され、残骸が散らばっている。

それに寄り添うようにして、多くの血濡れの人間の死体が、転がっていた。

文字通り、辺り一面は血の海である。


「く・・!」


血の匂いが、鼻をつく。

暗闇のせいでよく見えないのだが死んだ人間は、その多くにかせがはめられているように見える。

奴隷さんたちか・・俺の領地に向かっていたのだろうか?


死のにおいに周囲がまかれる中、視界の中には3体の動く何かが見えた。

これが先ほど垣間見た、生き物のようだ。

『オーク』と言ったっけ?

何かに気をとられているようで、まだこちらの存在には気がついていないようだ。


「ほほう、オークは人間の奴隷商の隊列を狙ったようですね、何とも彼等かれららしい。」


感心仕切りと言った風に、声を上げるダリアさん。

俺はオークを知らないが、彼女は知っているようだ。

この状況で彼女に、聞きたい事は一つ。


「ダリアさん、オークって話は通じるかい?」


「そうですね・・・頭が悪いので、明日には忘れるかと。」


ありがとうダリアさん。

どうやら、話は通じないらしい。

だとしたら今後のためにも、こいつらは倒しておいた方がよさそうだ。


「ダリアさん、お腹すいているんでしょ? 焼いてあげるから食べたら?」


「イヤですね、オークの肉はくさくて、食べられません。 私はグルメなんです。」


「あ、そ。」


食べる気はないが、倒す気はあるようで、彼女が戦闘モードになる。

重力操作して一気にカタをつけようかと思ったけど、やめた。

これだけ凄惨なことをしたのだ。

彼らにも、同じ位の苦しみを味わっていただくとする。


「ヒカリ、お前はここに居ろ。 まったく留守を頼んでおいたのに・・・!」


「ごめんなさい・・・」


うつむき加減に、謝ってくるヒカリ。

付いて来てしまったモノはしょうがない。

せめて彼女に危害が及ばないよう、気がけなくては。


「ダリアさん、俺は結界を張る! 思う存分やっておしまい!!」


「承知しました!!」


カイトの掛け声と共に、ダリアさんはオークの中へと飛び込んでいった。

なんだか彼の一人称が、ビミョーにおかしかった。



◇◇◇



ダリアさんの『思う存分』。

あれはスゴイの一言に尽きた。

もうね、オークをおもちゃにしていたよ。

見ていたこっちが、申し訳ない気持ちになったね。

あれが世紀末の光景なのだろうかと、思ってしまったよ。

任せてごめんなさい、せめて成仏してオークさん。

南無阿弥陀仏なむあみだぶつ・・・


と言うわけで、彼女の蹂躙じゅうりんシーンは割愛。


「カイト殿様、何もそこまでせずとも・・・・」


「何を言っているんだよ、死んだら皆同じ。 供養しないと。」


「くよう?」


オーク含め、ご遺体は丁重に葬らせていただいた。

死ねば平等に、供養をしてやらねばならない。

この世界で仏が居るかは不明だが、これは気分の問題なのだ。

居ると思えばいる。

ダリアさんが怪訝な表情を浮かべているけど、それは気にしない。

供養がてら、悪いとは思ったが奴隷さんたちの『隷属契約書』も燃やして灰にさせてもらった。

死んだあとまで、奴隷である必要なんかない。

同様に遺体に着けられた枷も、壊して外させてもらった。

だが、カイトの心は少しも晴れない・・・・


「もう少し早く到着していれば、誰かは救えたろうにな・・・」


はあぁ・・・と深いため息をつくカイト。

結局、見渡す限り生きている者は誰も居なかった。

駆けつけるのがもう少し早ければ、誰かは救えたかもしれないが・・・

残念だ。


「後悔など、あなたには似合いませんよ。」


「・・・ありがとうダリアさん。」


彼女は、俺を慰めてくれるようだ。

ダリアさんも一丁前に、人を気遣うと言う事ができるようになってきたらしい。

そうだな、後悔なんかしても始まらない。


「あなたにはいつも通りバカで居てもらわなければ、この先お傍に居ても楽しくありません。」


「台無しだよ!!」


なんだよバカで居ろって!?

現状の俺を馬鹿にするのは良いとして、この先の長い人生あなたの為にバカになど、なりたくありません!!

まったくヒトがシミジミしていたって言うのに、まったくこのヒトは!


「あれ、そういえばヒカリは??」


「さて?」


ヒカリが見当たらない。

さっきまで俺の横で、手を合わせていたのに!

どこ行った!??

すぐに周囲に探索魔法を展開するカイト。

森の中全体に、効果が及ぶようにする・・・と。

ヒカリの気配は、すぐ近くの倒れている馬車の中からした。

何か探している風にも見えるが・・・。

とりあえず、ホッとした。

っていうかダリアさん、気がついてたでしょ??


「ダリアさん、気がついているのなら言ってよ・・・。」


「さて?」


吹けていない口笛を口ずさみながら、ダリアさんは明後日の方向を見る。

ばっくれるのだけは、一人前だ。

まったく誰に教わったのやら・・・。

ため息を漏らし、カイトは馬車に顔を突っ込む。

どうやら無事のようで、ホッとした。


「どうしたんだヒカリ、何かあったのか??」


「お兄ちゃん、この毛布、動いてるよ?」


「何!?」


ヒカリが指差す一枚の毛布。

彼女の言うとおり、かすかに動いているようにも見える。

先ほどは気がつかなかった。

もしかしたら、生存者かも知れないぞ!!

カイトは希望を胸に、『救助活動』を行うのだった・・・




◇◇◇





「まったく、あのバカ共め・・!!!」


茂みに身を隠した女魔族は、思わず舌打ちする。

少し前に魔王様から『全てを焼き払おうとも、エルを探せ』との命を受けた彼女。

・・・が、まさかそれを鵜呑みにして、すぐに国土を焦土に変える愚行はしない。

それは本当の、最終手段とするのだ。

これまで目立つ行動は極力差し控え、隠れるように探索を行ってきた。

だと言うのに。


「オークどもはどうやら、人間の女の匂いを嗅ぎつけたようにございます。」


「くそっっ!!」


行方不明のエルガンティア様探索のためとは言え、兵力不足をオークなんかでまかなったのが、悪かった。

急に居なくなったと思ったら、いつの間にか人間の商隊を襲っていたのだ。

『目立つような行動は差し控えよ』と、あれほど厳命したのに奴らはもう、忘れたらしい。


「魔将様、このままでは我々の探索が、遅れるばかりでございます。」


「ちっっ・・! 仕方がない。」


部下が、探索の遅れを心配する。

これが知れれば、魔王様がどれほどお怒りになることか。

致し方ない。

オーク含め、我々の存在を知られないためにも商隊には消滅してもらおう。

商人ぶぜいが行方不明になったところで、国は介入しては来まい。

オーク共にも、ここで視界から消えてもらう。

役立たずには、死あるのみだ。


しかし茂みから飛び出そうとした瞬間、ただならぬ気配を察知し、彼女らは再び茂みに身を隠れた。

やって来たのは、妙な出で立ちの男女の2人組みであった。

何だ、アイツらは??


疑心に駆られる彼女らだったが、その表情はすぐ、驚愕のものへと変わった。


「バカな・・・・・!!」


部下含め、女魔族は目の前の光景に思わず、目を見張った。

使用人らしい人間の子供が、たった1人でオークを皆殺しにしてしまったのだ。

早すぎて、魔族たちは誰一人として、何が起きたのかを目に捉えることは出来なかった。

隣の白服の男が張る障壁魔法もそう。

あんな強度のものは、魔王様ですら張れないかもしれない。

いや、何より問題なのは。


「魔将様、あの男の後ろに居るのは・・・!」


「分かっている、しかし何故・・・・?」


白服の男の後ろに居る、黒髪の女の子。

発せられる魔力の波動を考えても、まず間違いない。

あれはエルガンティア様だ。

やっと見つけた!!!


「魔将様、あの人間どもを倒し、早くエルガンティア様を救出いたしましょう!!」


「いや待て、それにしては様子がおかしい。」


最初見たときは、てっきり捕虜にされているものと思った。

だがエル様の幼い言動、そして注意を受けた時のあの態度。

虜囚の身にしては、どうにも腑に落ちない行動が多く見受けられる。


それに彼らの『力』も未知数の現状で、飛び出すのは得策ではない。

ここはしばらく、様子を見てみよう。


「しばらく奴らを監視する。 決して悟られぬようにせよ!」


「「「御意!!」」」


魔族たちは、カイトたちの尾行を開始するのだった・・・・



まだ続きます。

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