表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オタクはチートを望まない  作者: 福島 まゆ
第11章 鉄道の延伸計画
265/361

第247話・襲われた商隊

これからも、頑張っていきます。

感想などがありましたら、どんどんお寄せ下さい!

先ほどから、足が痛い。

歩き疲れているのではない。

後ろのかたが、俺の足をけってくるのだ。

ゲシゲシと。


「・・・ダリアさん、いい加減やめてくれない?」


「なぜ宿に泊まらなかったのですか? 泊まるとおっしゃったではないですか・・!!」


「それについては、謝っているじゃないか。」


鉄道の地盤調査2日目の夜。

予定とは違い、カイト達の姿は魔の森の中にあった。

辺りに魔力灯などはなく、暗闇と静寂が、森の中を包んでいく。

頼りは周辺を照らし出している、メラメラと燃える焚き火だけ。

ダリアさんが怒っているのは、まさにその点である。

今日は宿に泊まると言ったのに、現状は森で野宿だ。

生理的にイヤなのではなく、明日の食事が不安なのだ。

食い物の恨みは、恐ろしい。


「せっかく明日も、美味な食事にありつけると思っておりましたのに。」


「気になるんだよ、魔族が出るっていうのが。 もしかしたらヒカリの素性が分かるかもしれないわけだし。」


「?」


自分の話題となったことが不思議なのか、ヒカリが小首をかしげる。

彼女は4年前に、森で記憶をなくした状態で拾ったのが、そもそもの出会いである。

すぐに彼女が魔族であるということは判明したのだが、彼女が何者なのか、どうして1人だったのか、今でも分からないことが多い。

もし近くに魔族が居るのであれば、もしかしたら何か、有益な情報を聞くことが出来るのではと思った次第だ。

むろん、アブなくなったら逃げるが。

会う人全員が口をそろえて、『魔族は危険だ』というのが、何とも気にはなるし。


「は~、ダリアさんも俺の足をける暇があったら、テントを張るの手伝ってよ。」


「そんなもの、魔法でやってしまえば良いではないですか。」


ダメなんだよ。

魔の森だと、どうにも魔法の制御が利かなくて、テントを張るつもりが家が建ったりするんだよ。

きっとこれは、魔素が濃いせいに違いない。

1泊しかしないのに家を建てても、勿体無いし、往来の邪魔である。

アイテムボックスにテントが入っていなかったら、どうなっていた事やら。


「さあさあ、早く食事にありつきたいなら、手伝った、手伝った!!」


「まったく、このような面倒なことをせずとも家の一軒ぐらい・・・」


ブツクサ言いつつも、ダリアさんもテント張りを手伝いはじめた。

ダリアさんが打つと、釘が地面に埋まってしまうので、彼女にはテント本体を持ってもらう。

そうそう、その調子。

勢いあまって、テントを破らないでね。


2人ですると効率がだんぜんよく、テントはあっという間に完成した。

早速、3人で焚き火を囲み、この日の夕食をとり始める事に。

炎竜亭で作ってもらった料理を、アイテムの中から出して、それを並べていく。

待ちに待った食事だと言うのにただ1人、ダリアさんの顔が浮かない。


「少ないですね・・・」


「あのねぇ・・・。」


あなたが昼に、宿の食材を食いつぶしてしまったんでしょうが。

持たされた量が少ないと言うより、あなたが食べてしまったんですよ。

まったく、ここで彼女に愚痴られては、たまったモノではない。

明日も、朝は早いのだ。


「しょうがないな・・・食材を調達してくるから、少し待ってて。」


「え、お兄ちゃんドコ行くの?」


「すぐ帰ってくるよ。 ヒカリはここで待ってて」


ダリアさんを黙らせるため、俺は久しぶりに狩りに出る事に。

近くにソニック・シギーくらい居るであろう。

辺りは真っ暗なので、探索魔法で獲物を探す。


「・・・・ん!?」


「獲物が見つかりましたか?」


「いや、ダリアさんもあっちを見てくれないか。」


「?」


カイトが指差す方向に、注視するダリアさん。

その方向には、数台の馬車が居るようだった。

この辺りは交易ルートから外れているはずだが、気になるのはそこではない。

馬車の周りを囲むようにして、大きな生き物が居るようなのだ。

この5年間、今まで見たことがない生物だ。


「オークが馬車を襲っているようですね。 あれはマズいので、他の獲物にしてもらえますか??」


淡々と説明するダリアさん。

なんか思いっきりスルーしようとしている。

フ・・・さすがはダリアさんだな。

オークという生物は分からないが、現況では良い奴でない事は、間違いなかろう。


「そうか間違いないか、ならダリアさんも来て! 襲われているなら、助けなきゃ!! ヒカリはここで留守番していてくれ!」


言うが早いか、カイトは馬車が居ると思われる方向へ駆け出した。

周りの魔素が濃く、転移は使えない。

ここから現場までは遠いようなので、急がなければならない。

ため息を漏らし、ダリアさんもカイトに付いて森の中へと駆け出していく。


「待ってお兄ちゃん、私も・・・!!」


それに倣うようにして、ヒカリも森の中へと駆け出して行く。

後には、野宿の準備だけが残される形となった・・・



◇◇◇



「このバケモノめ、死ねえええええ!!!」


ガキン!


商人が突き立てた剣は、魔物の硬い表皮によって弾かれてしまう。

この剣では、まったく歯が立たない。

後方へ跳び、剣を持ち替えて今一度、体勢を整える。


バキメキメキ・・・!

「ぐああ・・・・・・!!!」


その間にも、また1人の仲間の商人が魔物に頭を握りつぶされ、死ぬ。

魔物は複数おり、少しでも気を抜けば、ああして背後などから不意を突かれる。

可哀そうだとは思わない。

気配りを怠るから、ああなるのだ。


「クソッ! なんて運が悪いんだ!!」


相対しているのは、オークと言うブタに似た二足歩行の魔物だ。

一般的に性欲や食欲などの欲望に忠実な、頭の悪く筋力に特化した魔物で知られる。

オークの数は3体。

周りの仲間は全て死に、生きているのはわずかな人数の『商品』だけ。

このままではオークどもに取り囲まれ、自分の身が危うくなる。


「ちっ! おい奴隷、こっちに来い。 お前らも囮になるんだよ!!」


この商隊の積荷、それは『奴隷』である。

王都から注文で、ボルタと言う街の商会に納品する途中であった。

だが男の奴隷は先ほど盾にして、魔物の手によって皆殺しにされた。

残りは女の奴隷だけであり、とんだ大損をこいてしまった。

しかし命には代えられない。

オークは性欲に忠実な魔物。

しゃくにさわるが、やつらもそれが目当てらしいので、この際くれてやるとしよう。


「聞こえなかったのか、このアマ! こっちに来るんだよ!!」


「いや! あんなバケモノの相手をするくらいなら、死んだ方がマシよ!!」


「死ぬなら俺が逃げるのが済んでから、思う存分死ね!!」


倒された馬車の中に居た、女奴隷を無理やり引っ張り出し、オークの居る方へと押し出す。

だが女は、魔物の振りかざした棍棒こんぼうに当てられ、そのまま木に叩きつけられた。

ピクリとも動かないところを見ると、死んだようだ。

オークたちの赤い目が、暗闇の中に妖しく光る。


「ブモオオオオオオオオオ!!!!」


「ち、ちくしょう!? なんでダメなんだよ!!」


オークは一般的に力が強く、そして警戒心が強い魔物で知られる。

商人が押し出した女は、彼らにとって十分に警戒するに値した。

そして、先ほどから向かってくるこの男は間違いなく敵であり、邪魔な存在でしかない。


「わあああああああ!!!」


奴隷を置いて、商人の男はこの場から離れようと、全力で森の奥のほうを目指して駆け出す。

だが男の逃亡劇は、そこで終了した。


どすん!!


「ぎゃ・・・・あ!!!!」


飛んで来た棍棒こんぼうに体を押しつぶされ、断末摩を上げる間もなく、彼は絶命した。

不敵な笑みを浮かべ、3体のオークたちは倒れた馬車へと近づく。

このままではあの魔物に犯され、最後には中の女奴隷たちは殺されてしまうであろう。


「メル、あんたはこの毛布の中に隠れていなさい! あなただけでも生き残るのよ!!」


1人の女奴隷の言葉に、首を大きく振るメルと呼ばれた獣人奴隷。

『自分だけ生き残る』というのが、イヤなのであろう。

だが今は、彼女を説得している時間はない。


「あなたはまだ若いわ! 事後にあなたは『慈愛の大公様』の下に向かうのよ!! 私たちの分も、自由に生きて!!!」


「・・・!!!!」


言うが早いか、メルを積荷の毛布で包み、彼女はそれを場所の奥へ蹴飛ばした。

毛布はゴロゴロと転がり、倒れた馬車の隅へ落ちた。

それを見計らうようにして馬車の入り口から、オークの大きな手が入れられ、奴隷達は成す術なく、これに捕まった。


「「「きゃあああああああああああ!!!!」」」


「ブフフフフフ!!」


魔の森には、数多あまたの女性達の悲鳴、それとオークの下卑た野太い笑い声だけが、響いた・・・



オークは、肉弾戦に特化した魔王軍の兵士です。

ゴブリンと並んで主兵力であり、『バカ』と軍内で揶揄されている存在です。

中には、少しは頭の回るのも居るようですが。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ