表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オタクはチートを望まない  作者: 福島 まゆ
第11章 鉄道の延伸計画
262/361

第244話・新たな地盤調査

これからも、頑張っていきます。

感想などがありましたら、どんどんお寄せください!

「という訳で、魔石をお願いします。」


アリアたちが鉄道研究所で、女の会話を楽しんでいた頃。

小姑こじゅうとカイトは、丘の上にあるグレーツクの神社にいた。

石神様いわがみさま』に、魔石の鉱脈を作っていただくために。

前に約束したことでもあるし、特に問題はないはずである。


『・・・キサマ、今のこの状況を知っていて、それを言っておるのか?』


いや、確かにそれ自体は良かったが、時期が悪かった。

現在グレーツクに新たに建立こんりゅうされた神社では、祭りが開催されている。

数百年前から続くモノで、特に今回は『神様が戻った』と言うことで、より盛大に催されていたようだ。

カイトは鉄道で頭がいっぱいで、そんな事は露も知らなかった。

また怒りを買って、おかしな呪いを掛けられないようにしろよ。


「お祭りですか、俺もこういうの大好きです。 なるべく俺の用をパパッと済ませるんでは、ダメですか??」


顔色を悪くする石神様に、なおも食い下がるカイト。

それに少しお怒り気味に、像は口を開く。


『・・やるのはワシだろうが。 魔石を採掘できるようにするには、土中の魔素を濃くして結晶化するのを、土に促さねばならないのだぞ?』


像のこの発言に、おそるおそると言ったていで、質問するカイト。


「それって結構、時間がかかりますか?」


『数日はかかるであろうな。』


「・・・・。」


数日か・・・

短いような、長いような。

本来であれば何とも思わないが、祭り期間は数日らしい。

ようするに無理にすると、祭りを台無しにしてしまう。

しかしそれとは裏腹に、問題案件を早急に片付けたい自分と、『急がば回れ』を推す自分が居る。

葛藤しても意味は無いが、彼の心境はフクザツなものだった。


「タイミングが悪いぞ小僧、今はグレーツク中でお祭り騒ぎだ。 石神様に用なら、後にしろ。」

「どうせヒマなら、お前も祭りを楽しんでけよ。」

「ごめんね小僧さん、そういうわけだから、もう数日、待ってもらえるかい?」


「・・・・。」


口々にカイトをたしなめる、グレーツクの住民達。

もはや彼に『トップの威厳』はカケラたりとも残されては居なかった。

彼が偉そうにしないのと、単に無計画なのが祟ったカタチだ。

今さらどうにかする気はサラサラ無いので、多分、この関係は半永久的に続くことだろう。


「カイト殿様、いかがしますか?」


「どうしよう・・」


こうなっては、カイトに成す術はなかった。

解決の糸口は、数日待つほかにない。

無理に石神様を連れて行って、彼らにヘソを曲げられては困るし。

しかし、何もしないのは、どうにも時間がもったいない気がする。

いや待てよ、いっそのこと期間が数日も空くのなら、思い切って・・


「ダリアさん、ちょっと用事が出来たんだけど、付いて来てくれない?」


「面白そうでございますね。 もちろん同行させていただきます。」


ダリアさんが乗り気で助かった。

俺一人でヒカリを連れて行動するのには、少し無理があるので。


「それでは石神様、また3日後くらいに来ますんで、そのときに。」


『なんだ帰るのか? 貴様も、祭りを楽しんで行けば良いものを。』


祭りを楽しむか・・・。

確かにそうしたいところではあるが、今は遅れ気味の鉄道建設に、すべてを課したい。

なるべく時間があるときに、多くのことを済ませておきたいのだ。

祭りはまた来年に、アリア達と一緒にでも。


「お兄ちゃん、これからどうするの?」


「ちょっと遠くに出かけるんだ。 疲れたら言ってね?」


「?」


ヒカリの頭に手を置くカイト。

彼女はりんごのように顔を紅潮させながら、嬉しそうにはにかむ。

これで、出発の準備はバッチリだ。


「ダリアさん、行くよ。」


「はい。」


ダリアさんを呼び、3人で手をつなぐ。

これでいっぺんに、転移が出来るのだ。


「転移!!」


手をつないだ状態で、3人は青い光に包まれ、消えていった・・・


◇◇◇


「転移終了!」


急速に青い光が収束し、中から3人の姿が現れる。

とたんに香ってくるのは、心地よいそよ風と、潮の香り。


「あれ・・お兄ちゃんここ、バルアだよ?」


「そ。」


「はあ・・・。 どうりで最近、見覚えがあると思いました。」


今まで俺たちは『王都まで鉄道を・・』という話しかしていなかったからな。

ヒカリたちが混乱するのも、当然の事だろう。

鉄道ルート調査第1弾。

実質、俺が管理している領地、バルア。

ここから今回敷かれる予定の、鉄道の調査を行う。

転移場所は、特に街中である必要は無かったので、城壁の外である。


「今回ベアルまで鉄道を敷くのは、この街までなんだ。 予定ルートを考えると、ここからベアルまではかなり離れているけど、3日あればどうにかなる。」


「・・・ずいぶん強行軍ですね。」


バルアからベアルまでは、距離にしておおよそ200キロある。

だがこれは、ビルバス山脈を通過する最短ルートの場合。

シェラリータ、王都経由ともなると、それはまるで弧を描くような形となり、総延長距離は700キロ弱にも達する!

ちなみにこれは日本の東北新幹線、東京から新青森とほぼ同じ距離。

ご参考までに。


「早速探査するから、ダリアさんはドラゴン形態になって!!」


「・・なぜ・・・ですか?」


イヤな予感がする。

また彼は、重いモノを持たせるのだろうか?

もう筋肉痛は、金輪際ゴメンである。

自然、彼から距離をとる彼女。


「大したことを頼むわけじゃないよ、空を飛んでもらいたいだけ。 ダリアさんが飛んで、俺が魔法で探査。 効率的でしょ??」


彼のいう事はつまり、空からの赤外線探査に近い。

なるほど、これなら距離が遠くても、大きな時間短縮が図れる。

もちろん、実現できれば。


「・・・カイト殿様、私は、飛べません。」


「・・・あ・・・・。」


何度も言うが、ダリアさんは地竜。(自称)

翼はあるが、どうやら空は飛べないようなのだ。

彼女はことさら、この事を気にしていおり、密かに練習までしている。

その事を、カイトは知っていた。


「ごめんねダリアさん、他の方法を考えよう。」


「お役に立てず、恐縮です。」


ダリアさんに詫びを入れるカイト。

空を飛んでの探査は、すぐさま廃案となった。

浮遊魔法は多くの魔力を消費するので、探査をしながらの行使は難しいし。

では探査は、どうするか?


「空がダメとなると。 う~ん、徒歩・・かなぁ~~?」


「「・・・・。」」


このメンバーで出来る、一番に調査がしやすい移動方法。

行程は、道なき道をおよそ700キロ。

3日での探査終了は、かなり困難を極めそうだ・・・




◇◇◇




その頃の王宮。

国王であるゼイドの下へ向かい、きさきであるミカナは、長い廊下をコツコツと足音を響かせながら、歩んでいた。


諸国はいざ知らず、法国の后には仕事がある。

建物のちょっとした手入れや、使用人間の揉め事など、王宮内の小さな案件の取りまとめは、主に彼女が行っている。

今回も例に漏れず、王宮内に飾っている調度品の入れ替えの申請のため、国王の元へ出向いていた。

『玉座の間』の重厚な扉の前に立ち、軽くコンコンと、ノックする。

するとしばらくして、「入れ!」と言う国王陛下の許しの言葉が聞こえてきた。


「それでは陛下、私めのご報告はこれにて・・・。」


「うむ、ご苦労であった。」


中へ入ると、国王の前には黒ずくめの忍者のような者が居た。

どうやらちょうど話が終ったところのようで、后と入れ替わるように、彼は礼をして退室していった。


「どうしたミカナ。 何か問題か?」


「いいえ、些細な案件です。 それより今の彼は??」


あんな人間、彼女には見覚えが無い。

何か悪いことでも起きたのかと、心配になる。


「なに、案ずることは無い。 ベアルに放っていた密偵の定期報告がまいったのじゃ。」


「・・・まだそのような事をされていたのですか?」


隠し立てするような素振りを見せず、淡々とした口調で説明した国王。

これにはミカナも、呆れるほか無かった。

彼が何をしようとしているのかは、大方、見当はついている。


「アリア関連ですね? まったくこのような事があの子にバレれば、嫌われてしまいますよ??」


脅すように、国王に釘を刺すミカナ。

国王が諸領に密偵を放って、動向を観察するのはフツウだが、観察しているのは多分、『アリアが幸せかどうか』だろう。

密偵の存在自体はあの子も知っているだろうが、観察対象が自分とは、夢にも思っていないはず。

知れたらきっと、憤慨すること間違いなし。

まったく娘が大切なのは分かるが、困ったヒトだ。


「それだけではない、鉄道建設の進捗状況しんちょくじょうきょう逐一ちくいち、報告させている。 今は特に、動きは無いようだがな。」


「鉄道ですか・・あなたはずいぶんと、ご執心でしたものね。 あなたはアレを何に、活用するつもりですか?」


『交通運輸』の円滑のため。

それが最初に彼が唱えた、鉄道の価値であった。

だがどうにもそれだけでは、腑に落ちないところがあった。

それだけの為に、建設費助成のため国庫から大枚を出すほど、彼は考えなしではない。

方々の領主からも、『不公平』といった苦情も来ている。


「今、魔族と我々は休戦状態にある。 だがそれは、『平和』が訪れたのとは違う。 有事には国境に多くの兵を派遣せねばならない。 その運搬に、アレは有用であると判断したまでだ。」


「・・・・戦争、ですか。」


魔族との戦争。

そうなれば、国境を接する法国は戦場となるだろう。

当然、戦地に多くの兵や物資を送らねばならない事態となる。

馬車では時間がかかる上、多くのモノは運べない。

そこで、『軍隊の鉄道輸送』に目をつけたのだった。

鉄道の早さ、そして一度の輸送量が、国王の目に留まった形だ。


「そうならない事を祈るが、対策は講じておかねばならない。 国境市民の避難にも、アレは使えるからな・・・」


「ですがもし、そうなれば彼らは・・・いいえ、何でもありません。」


べアルも魔族領にほど近い。

有事には市民は避難となるが、カイトたちをはじめとした貴族は、物資の補充や兵の宿舎建設などのため、領地に残ることになる。

陥落する、最後のその日まで。

それは彼らが『ベアル領主』となったその日から、決まったことである。

今はただ、そのような事が起きないことを、祈るほかに手は無かった。


「それと、ワシも鉄道に乗ってみたい。」


「・・・・はい?」


思わず耳を疑った。

今までとは打って変わった、国王の口調に、ミカナは怪訝な表情を浮かべる。


「今ある鉄道は、ベアル領の実に短い距離を走っているだけだ。 わしは忙しいので、それには乗りに行けぬ。」


「あなたと言う人は・・・・!!」


結局は、彼の興味本位で話が進んでいたらしい。

先ほどの話もまんざらウソではないだろうが、今となっては、それはおまけのような感じしかしない。

わなわなと、肩を震わせる彼女。

ゼイドはそれを、両手で制してなだめにかかる。


「この事は決して、他の貴族たちには聞かれないよう、気をつけてくださいね!?」


「分かっている。」


苦笑しながら、后に笑みを浮かべるゼイド。

このような事を聞かれれば、あちこちで暴動が発生すること間違いなしだ。

魔族との対戦前の内乱は、本当にヤメてほしい。



渦巻く様々な感情をよそに、彼らは窓越しに南西の方角へと視線を向けた。

あの森と雪を頂いた峰の先に、ベアル領が存在している。


そして休戦状態が続く、魔族領も、同じ方向に存在している・・・・



バルアからベアルまでは、せいぜい200キロほどしかありません。

ですが山脈越えは、急な山道が続くので、超えるのにはとても時間がかるのです。

それは道が整備された今でも、同じことです。


ちなみに王都からバルアは100キロ強で、こちらの旅程はそう、長いものではありません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ