第24話・シェラリータという街
拙い文章で申し訳ありません。
頑張って、いいところまで進める心づもりです。
シェラリータの街の真ん中のあたりには、少々目立つぐらいの、こじんまりとした屋敷がある。
倹約家で、行動派で有名な辺境伯たるこの街の領主宅である。
彼の名は、ラウゲット・シェラリータ。
貴族の身分を持っているが、服装などは地味で、街を歩いていたらたぶん、分からないだろう。
もともとは冒険者で、武勲をあげたのが項をなして、この地位に上り詰めたとか・・・・
彼は常に街の人々の味方で、以前にこの街を治めていた貴族の派閥の不正などを見つけ、
これを投獄した。
今でもその者たちは、王都にある監獄所へ収監されている。
また、王宮から支払われる給料の大半を、街の整備や、治安向上のために投資していた。
もともとが貴族でない事もあり高飛車でもなく、自分だけ豪華絢爛に、ということも無かった。
このような清廉潔白さもあり、住民からの評判も上々で、
とうとうその功績により、街に自分の名前をつけることを許され、
さらに、自治政治が許されるまでになった。
以前の街は、魔の森の近くということで人も少なく、治安もあまりよくなかった。
そんな寂れた街だったのを、魔の森の近くということを逆手にとり、ここまで発展させた。
その手腕は、本物である。
これからもっと、民に暮らしやすい、そんな街を目指していた折、事件が起きた。
魔物災害。
彼が冒険者をしていたころにも幾度かは遭遇した。
そしてその危険性も、熟知していた。
これに迅速な対応したラウゲットは、すぐに調査隊や、討伐隊を派遣した。
しかしここで、大変なことが起きた。
なぜか、魔の森の魔素が消滅してしまったのである。
ようは、魔物災害は食い止められたことに他ならない。
しかしこれは、手放しで喜べるような事ではなかった。
森から魔素が消滅してしまったという事は、つまり、魔物がいなくなってしまったことになる。
ラウゲットの、『領地が魔の森近く』という短所を逆手にとっていたこの街の産業は、音を立てて崩れた行った・・・・
この緊急事態に、領主は迅速な対応を見せた。
すぐにも、代替案を考えねばならない。
しかし新しい産業に手を出そうにも、財源は有限で、多くの冒険者たちや商人や、一部の住人が街を離れてしまう。
先日はギルドの総督会から、『支部を撤退させる』旨の通知が来た。
後が無い。
このままではこの街は、廃都となってしまう事だろう。
そんな折、この街のギルドのギルドマスターから、ある青年を紹介された。
□ □ □
「き・・・緊張するなー・・・」
先日、カイトは新事業に向けて、ギルドへ相談に赴いた。
それから数日後、ギルドマスターに呼ばれ、彼はこの街の領主様と、面会する運びとなる。
ちなみに今、隣にはギルドマスターは居らず、宿からずっと一緒のノゾミだけだ。
ギルドマスターは先に、屋敷へと入っているらしい。
件の彼女との約束から、隣にいるノゾミの存在が、いろいろなカイトの不安を増長させる。
今にも飛び出てきそうな、心臓を必死で押さえ、カイトたちは立派な門をくぐっていった。
□ □ □
コンコン
「旦那様、カイトさまをお連れしました。」
俺の前にいる、この屋敷と使用人と思われる女性が、大きな扉をノックする。
噂とかでだけ聞いていたメイドさんだ。
その立ち振る舞いと出で立ちからは、気品が醸し出されている。
本物のメイドさんて、こんな人なんだなと、カイトは感じた。
玄関からここまで業務的な話以外には、ほとんど何もしゃべらずに、ただ淡々と案内だけしてくれた。
屋敷の感想は『すごい』に尽きる。
まず広い。
俺が泊まっている宿の二倍以上の大きさがある。(宿の大きさが大体、二階建てのアパートほど。)
けっして華美や派手ではない。
屋敷の建物自体やちょっとした調度品からは、気品を感じる。
結構感動した。
ノゾミも、キョロキョロと落ち着かない様子だった。
俺の服の裾をギュっと掴んでいたのが、妙にかわいらしかった。
案内がてら屋敷を見回していると、一つの大きな扉の前で、メイドさんが立ち止まり、軽く二回、ノックをする。
この部屋の中に、領主様がいるようだ。
部屋の中から、「入ってくれ」という男の人の声が聞こえてくる。
メイドさんがその声と同時に両手で右側の扉を開け、俺とノゾミに「どうぞ」と中へ促す。
中には、ソファーに腰掛けている二人の男性がいる。
一人はギルドマスターだ。 心なしか、いつもよりパリッとした印象を受ける。
もう一人は、なんだか冒険者風の服装を身にまとった、五十歳位の男性だ。
俺が来るまでの間、この二人は談笑していたようである。
「では私は、扉の前で控えておりますので、御用の際はお申し付けください。」
とてもきれいなお辞儀をして、出て行くメイドさん。
部屋には入ってこないんだな。
まあ、領主様宅ともなれば、聞いてはいけない話とかもあるのだろう。
「よく来てくれた。堅苦しいのは抜きにしよう。 どうか、ソファーに腰掛けてくれ。 立たれたんじゃ、話しにくい。」
促されるまま、俺とノゾミがソファーへと腰掛ける。
その際、「失礼します」というのは忘れない。
ノゾミも俺のまねをして「シツレイシマス?」と領主へ言う。
うん、感心感心。
このまま人間の生活に慣れてくれるといいな。
「うん? 失礼だが、そちらのお嬢さんは?」
領主様が、不思議そうな顔をして聞いてくる。
あ~~そうだよな。 呼んだのは俺だけだもんな。
「彼女は、僕の・・・・・妹です。」
言っておいてアレだが、苦しいと思う。
だって俺と、ノゾミは似て無いもの。
髪とか肌の色とか。 実際、種族すら違うし。
でも、とっさに思いついたのがこれだった。
ギルドマスターは信じられないものを見るような目で、こちらを見てくる。
・・・何回か、俺と一緒にいるところを見られてはいたが、こんな話はしたことが無かったからな。
ビックリカミングアウトってところであろう。
厳密には、『カミングアウト』からは、程遠いけど。
「ほう・・・妹さんか・・・・」
こちらに品定めするような視線を送る領主様。
絶対に疑われている・・・・・・
せめて友達とかにしておくべきだったかと、後悔する。
「そうそう、自己紹介がまだだったな。私はこの街の領主を勤めさせていただいている、
ラウゲット・シェラリータだ。 親しい者は『ラウ』と呼ぶ。」
面と向かって、俺とノゾミに自己紹介してくる領主様。
「Cランク冒険者の、カイト・スズキです。 こっちは今紹介した、妹のノゾミです。冒険者登録はしていません。」
昨日、ギルドマスターに教えて貰ったとおりに、おれも自己紹介する。
もう、言ってしまった事なので、ノゾミは妹として再度紹介した。
「カイト君に、ノゾミさんか。 今日はよろしく頼むよ?」
「はい、よろしくお願いします。」
この話し合いに、文字通り、俺とこの街の、すべてがかかっていると思う。
だからここからは一層、気を引き締めねばならない。
カイト君のすべてがかかっているとは、どういうことでしょうか?
ウ~~・・・・伏線に作者自身が引っかかってしまっている・・・・・




