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オタクはチートを望まない  作者: 福島 まゆ
第10章・鉄道の前に
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第240話・テツの亡人

これからも、頑張っていきます。

感想などがありましたら、どんどんお寄せ下さい!

カイト様が先ほど、やっと帰られました。

彼が隣の領地へ書状をたまわりにいかれて、丸1日以上が経ちます。

彼は移動に転移が使えるため、どんな長距離の移動でも、一両日中に終らせることが可能なのです。


「奥様、調査結果を纏めたものは、こちらになります。」


「ありがとうございます。 あなた達はひと時の間、休んで下さい。」


あっちで現地調査。

こっちで資料作成。

そちらでその纏め。

多くの者たちが、領内の問題解決のために動いてくれました。

これらは全て、領主様であるカイト様にお話を通して許可を得ることで、やっと『終わり』となります。

それもあって彼には、シェラリータから帰られた後はじっくり休んでいただき、次の日にこれらの話をさせていただこうと考えていました。


「は~~~・・・」


・・・が、彼が帰って来たのは先ほど。

伯爵様との話が長引いたのか、それ以外の理由なのか・・

ため息が出るのも、しかりです。

イヤな予感しかしないので、彼に問い詰める事はしませんでした。


「ここが・・アリアの部屋かい?」


「そうでございますが、何か?」


彼が帰るのが、あまりにも遅いのでやむなく、資料の準備などは私の私室でさせていただきました。

ですが私の部屋には、ちょっと問題が・・・

カイト様の魔絵を、飾っていたのです。

いつものヘラヘラされているお姿のは、追い込み用。

かっこよく凛々しいお姿のは、疲れたときや覇気を出す用。

などなど・・・

ほかにも安眠用にお手製のぬいぐるみがあります。

今ではこれ無しでは、寝付けなくなってしまいました。


カイト様、恐るべし!!


当然彼に、そんなことは知られたくありません。

夫婦とはいえ、断固拒否させていただきます。

彼をここに招くに当たり、部屋の中のモノを運び出していただきました。

使用人たちの間では周知の事実なので、特に抵抗はありません。

この際『彼に』知られなければ良いのです。


悟られぬように、彼との議論に、注意を割きましょう。

完璧な場所でブツは、保管されているはずですから。


「バルアのハワイ化・・じゃなくて観光リゾート化は、また後でいい対策でも考えておくよ。 それで良いかい?」


「ええ、よろしくお願いいたしますわ。」


かねてからのバルアの再興計画は、とりあえずのところ保留のようです。

私は基本的に部外者なので、あまり首は突っ込めません。

ここは彼に任せるのが得策でしょう。

『鉄道』が絡んでいれば、彼はさえていますし。


「じゃあ、これで話は終わりだね?」


「いいえ。」


早く仕事を終らせたいのですね?

でも本来あなた様には、『休む』などという事は出来ないほど仕事があるのですよ?

彼に言っても、無駄でしょうがね。

こうして口頭でご説明して、その上で指示を仰ぐのが、問題解決の上で最も早く、そして効率的なのです。

忘れることもしばしばあるようですが、一応、何かと考えてはいただけるので、良しとしています。

・・・なんだかこれでは、私がここの領主のようですわ。


「もう一つ話がございます、これもバルアにまつわる話なのですが・・お聞きになった上で、カイト様のご指示を仰ぎとうございます。」


「し、指示??」


そう言うとアリアは、バルア周辺の地図を広げて見せた。

ところどころに赤丸で印が付けられているのが、見て取れる。


「何コレ?」


「バルアにおける我々の保有地・・つまりは空き地を記したのが、この地図でございます。」


頭に疑問符を浮かべて、地図を覗き込むカイト。

『皆目、見当もつかないのですね。』

うーん、時間がかかる。

彼に領主として大成していただくため、今まで遠まわしの、このような手法をとっていたのだが・・・

この先は、もったいぶらずに最初から説明を加えた上で話を進めた方が、いいのかもしれない。


「カイト様、こちらはですね・・・」


「あ、魔石採掘!!」


アリアが説明を始めるようとする瞬間、テツの亡人カイトの頭はひらめきを見せた。

さすがはカイト。

鉄道の事となると、別人のように頭の回転が良かった。

むろん『カイトなりに』という言葉が前につくが。

アリアも、驚きを隠せない。


「この丸印の場所は我々の保有地であり、かつ近くに住んでいる者も居ないので、魔石の採掘が始まっても影響はございません。 無論、あまり魔力量が高くなってしまうと困ってしまいますが・・・」


「ありがとうアリア、これで鉄道の燃料問題、一挙解決だ!!」


「そ、そうなのですか? 喜んでいただけて何よりでございます。」


魔石が無くては、鉄道は動かない。

それはベアルから王都まで鉄道を敷いたら、より懸念される事態であった。

魔石は希少な上、モノが高価なのだ。

それが簡単に手に入るようになれば、あとの問題は、何とでもなるものばかり。

一番心配していたことであっただけに、喜びもひとしおである。

が、アリアの表情は、なぜか浮かないモノだった。


「カイト様、ついては魔石採掘に関連して、お話があるのですが。」


「ん、何??」


一転して真剣な眼差しで、彼を見据えるアリア。

それにあわせ、彼もたたずまいを正す。

彼女のコレは、最も重要なことを話す前兆だ。


「知っての通り、魔石は希少鉱物でございます。 これが多く産出するようになれば、この地に戦乱が起こるでしょう。 お聞きしますが、カイト様はこれで産業をおこすおつもりではないのですね??」


「ああ、違う。」


魔石は希少鉱物。

それをそのまま産業として輸出などすれば、奪い合うようになるだろう。

『発展』ではなく、きっと『奪取』という形で。

それだけは何としても、避けねばならない。

あくまで魔石は、鉄道の燃料として使うのだ。


彼のこの返答に満足したのか、何度か頭を縦に振ると、話を続けた。


「分かりました、ならば話を続けさせていただきます。 調査したところバルアの西側、つまり山脈側に住んでいる者はおりません。 またカイト様ご要望の『交通の便』に関してましても、先ほど申し上げましたとおり鉄道を通せば、運び出しは容易と存じますが、いかがでしょうか?」


バルアの地図の、丸印の一つ一つを指でなぞっていく彼女。

スゴイ。

内容の半分ぐらいしかアタマに入ってこなかったが、とても現実的な提案をされているのは、理解できた。

だんだん鉄道の延伸計画も、形を帯びてきたようだ。

あとでグレーツクへ行って、早速あのカミサマに魔石を頼もう!!





彼はまだ、気づいていない。

自らが抱えた『爆弾』の大きさと『懸念される事態』の詳細を。

カイトの『領主教育』がこの先、急がれる事となるだろう・・・



魔絵とは、念写にちかい製造方法で作られる、現代でいうところの写真のようなモノです。

専用の魔力を練りこんだ紙に、記憶を頼りに写したいモノをイメージして投影させます。

弱点もあります。

イメージが肝となるので、実物と若干、相違が発生しやすいのです。

カイトの魔絵も総合的に見ると、ビミョーに実物より目が細くなるなどして凛々しくなり、カッコ良くなってます。

あまり、あからさまではないですが。

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