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オタクはチートを望まない  作者: 福島 まゆ
第10章・鉄道の前に
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第239話・アリアの話

これからも、頑張っていきます。

感想などがありましたら、どんどんお寄せ下さい!

「カイト様、この際ご挨拶は抜きにして、早速お話をいたしましょう。」


「えっと・・・ただいまアリア?」


カイトです。

シェラリータから帰って、おおよそ5秒。

屋敷の中へ入ると光の速さで、妻が鬼気迫る勢いに迫ってきました。

まだ、互いの挨拶すら済んではいません。


「結局こうなるのですね、おかえりなさいませカイト様。 お疲れのところ大変恐縮ではございますが、お時間をいただけますか?」


「うそー・・」


あまりの展開の早さに、ほとんど彼女の話に付いていけない。

最近、こんな事が多くないか??

後ろの3人も、急な事態に目を丸くしています。

正直、アリアのこの態度は、恐怖でしかありません。

彼女が取り乱すと、必ず不吉なことが起こるのです。

せめて『話』は、着替えをしてからではダメでしょうか?

そんな俺の胸中を察したのか、アリアは続けざまに口を開いた。


「本来の予定では昨日のうちに、カイト様がご帰宅されて後、今日の朝からこの件は話すつもりでしたが、『なぜか』カイト様たちが今日の昼に帰って来たので、このような形をとらせていただきました。 何か不都合でもございましたか?」


「トンデモナイヨ。」


問題なんかあるもんか。

俺は領主、このさい着替えなんか後でいい。

するべき事はたくさんあるのだ!

はーっははは。

・・アリアは、俺の全ての行動を把握しているのでは無かろうか?

なんか怖い。

シェラリータが懐かしくて、つい、長居をして宿に宿泊したのが、祟ったよう。

もし彼女に知れれば、今度こそは殺されるかもな・・・


「まずは資料を交えて、じっくりとご説明差し上げます。 準備は整っておりますので、私の部屋のほうでお話いたしますわ。」


「へ~~、アリアの部屋か。」


彼女とこの領地に来て早、4年以上の月日が過ぎている。

それだというのに、未だアリアの部屋に訪れたことはなかった。

だって前に用事があって入ろうとしたら、『カイト様は絶対、入室禁止です!』と言われたのだもの。

以来、話があるときは基本的に、俺の部屋で行うようになったのは、周知の事実だ。

でも人の部屋って、純粋に興味があるんだよね。


「それではカイト様、こちらへどうぞ。」


「はいよ。」


『アリアの部屋の興味』という感情を前に、カイトから疲れや恐怖などは吹き飛んだ。

珍しいこともあるものである。

もちろんこのチャンスを逃す手はない。

いやだってさ、身内のプライベートって、何かと気になったりしない??

この領地の領主様は、いつもこの調子である。

これで領内の政治はうまく回っているのだから、世の中不思議なものだ。

大きな不安をよそに、彼らは『領内の』話をするようだ・・・・



◇◇◇



アリアの部屋に入ると、まず目に飛び込んできたのは大きな机と椅子が二脚。

それだけだった。

部屋の中には、ベッドや衣装棚すらない。

殺風景と言うか、何か恐ろしいものを見たようが気がした。


「ここが・・アリアの部屋かい?」


「そうでございますが、何か?」


質問に、質問で返されてしまった。

『どうしてそんな、当たり前のことを聞いてくるの?』といった感じだ。

もっとこう、女性のプライベートって言うものを期待していたのだが、こうして見ると何ちゃーない。

はっきり言って、俺の部屋より何もない。

う~む、個人差なのだろうか?

気にするのは、よした方が良さそうだ。

そもそも今日は、そのために部屋を訪れたわけではない。


「それで、俺が不在の間に何かあったのかい?」


ここ最近よくあるパターンを懸念し、話を切り出す。

その彼に、アリアは静かに首を横に振ってみせた。


「いいえ、話と言うのはカイト様が出立される以前のことでございます。 覚えておられませんか?」


「う~ん・・・」


そう言われてみると、何かあったような・・・・

順繰りに、思い出してみよう。

ギルド誘致、魔石採掘、鉄道延伸、鉄道建設団の今後などなど・・・

うわっぷ。

アレもコレも、いろいろな事がありすぎて、正直なところ頭の整理がついていかない。

アリアの言う事とは、このうちのどれの事だろうか?

頭に疑問符をあげるカイトに、アリアはため息をついた。


「・・・バルアの観光リゾート計画を、覚えておられますか?」


「あ、あれね!」


覚えているも何も、それは俺が主導で始まった話である。

覚えていないわけがない。

鉄道建設がとどのつまりを見せたことで、一時頓挫していたこの計画。

王都経由で、バルアへの鉄道建設の目処が立ったので、詳しい話をしたいとの事だ。

それならそうと、早く言ってほしい。


「早速なのですが、カイト様はどのようにバルアを売り込むおつもりなのですか?」


「はい・・・?」


真剣な表情で、カイトを見据えるアリア。

彼女には、すでに事業計画は説明済みのはずだ。

バルアの美しい海を売り込んで、人を集めて、『ハワイ化』するのである。

この世界には『旅行を楽しむ』という習慣がないので、ワリと受ける気はした。

移動手段も快適なものが出来るので、そう破綻した計画でも無いように見える。


・・・が、この計画には重大な穴が存在した。

もちろん、彼の計画には大抵、『穴』はつきものだが、今回のコレは、特に大きいほうだった。


「前にもご説明したとおり、旅は楽しむものではありません。 それは鉄道ができたからと言ってすぐに、意識が変わるものでもありません。 その上で、どうバルアに『観光客』なる者を、呼ぶおつもりなのですか?」


「あ゛!!」


そうなのだ。

旅を楽しまない。

それと言うことはつまり、当然『旅行会社』なんてものも無い。

客を集めようにも、宣伝する方法が無ければ、どうともしようが無いのだ。

その方法を、一体どうするのか?

それをアリアは聞いたのだ。

ちなみに当のカイトは、今気が付いたので、策などもっていようはずも無い。


「・・・アリア、後でゆっくり考えていいかい?」


「・・・・。」


策が無いので、彼はお持ち帰りすることとした。

今この場で答えを焦っても、いい結果は生まない。

それは暗に、『何も策はない』とアリアに伝えてるものだった。


こんな調子で、本当にバルアは立て直せるのだろうか?

相談したアリアは見えない先行きに、薄ら寒さすら感じるのだった・・・


問題は、いつでも山積みです。

大抵、カイトが増やすことが原因で。(笑)

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