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オタクはチートを望まない  作者: 福島 まゆ
第10章・鉄道の前に
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第237話・カイト、勇者の剣を手に入れる?

これからも、頑張っていきます。

感想などがありましたら、どんどんお寄せ下さい!


「コレが魔剣かぁ~~」


天に剣をかざすカイト

見た目は、数年前となんら変わらない俺専用の剣。

・・・見た目は。


「・・・・カイト殿様、安易に振り回すとその剣は、この世のありとあらゆる物を切ってしまう恐れがあるのですが。」


「あ、ごめん・・。」


不安げな表情を浮かべるダリアさんたちに配慮して、剣をボックス内へとしまうカイト。

昔、俺がこの街の武器屋で作ってもらったこの剣。

魔力が神様のせいでことさら強い俺が、日常的に持っていたせいで魔力を剣が吸収。

供給過多になり、今やダリアさん並の魔力を保有する『魔剣』となってしまったようだ。

たかが剣が、ドラゴン並みの魔力を有するなど、尋常な事ではない事は、異世界人の俺でも分かる。

おかげでこの剣は『手に持つことすら』危険な代物になってしまったとは、製作者のおっちゃんの弁。

どーすんだよ、コレ・・・・


「ダリアさん、この剣使う? よく切れる包丁の代わりになら、なりそうじゃない??」


「いえ・・・自信をくしてしまいそうなので、いりません。」


武器として使えないなら、違う用途を。

カイトは魔剣を、包丁代わりに使う提案をした。

『魔剣』と言うだけあって切れ味は良いみたいだし、うってつけだと思ったのだが・・・

ダリアさん、表情が暗いぞ。

体調でも悪いのだろうか?

しょうがない、この剣は使い道もなさそうだし、とりあえずしまって置こう。

捨てたり譲ったりするのは、何だかもったいないし。


「お兄ちゃん、まだどこかに行くの? ちょっと疲れてきちゃった。」


「あ~ゴメン、もうあらかた挨拶は済んだんだ。 後はゆっくり休もうか。」


ヒカリたちが、疲れを訴えだした。

さっきから歩き通しだからな・・

今日の用事は、シェラリータの知り合いへの、ご挨拶。

武器屋にギルド、『水の精霊亭』とラウゲットさんにそれから・・・・

うん、大方おおかたの挨拶は済んでいるようだな。

何人か街から、居なくなっていたのは非常に残念としか言いようが無い。

ギルドも、前に来た時より小規模になっていたように見受けられた。

ソレらは間違いなく、俺のせいであろう。

それを考えると、非常に気持ちが落ち込んでしまう。


「あれカイト、こっちは門の方角じゃないよ?」


「いや、こっちで良いんだ。」


一行の先頭を仕切るカイトが、あらぬ方向へと向かうのを指摘するノゾミ。

屋敷へ帰るならば、確かに門を出なければいけないのだが、今日はそういうわけではないので、この方向で間違いは無い。


「カイト殿様、ベアルへ帰らないのですか?」


「いや、今日は宿に泊まる事にしたんだ。 屋敷に帰るのは、また明日にしよう。」


今の時刻は、おおよそ午後4時くらい。

別にこのままベアルまで転移で帰っても、一向に差し支えない時間だ。

だが今日は、久しぶりにこの街に泊まる事に決めたのである。

『蒼き炎竜亭』に。


数時間前に宿へ、忘れ物を取りに行ったときのこと。

宿へ駆け込むと、事態を知っていた宿の女将おかみさんは、すぐにカイトにこれを返してくれた。

エリカさんは買い物の途中だったようで、出かけていて留守だった。

特に資料が足りないなどと言う事も無く、二重の意味で安堵のため息を漏らしていた彼。

そこに間髪入れずに、女将おかみさんが俺へ話を持ち掛けてきた。


『エリカの奴、あんな元気なのを見るのは久しぶりだよ。 この頃は疲れていたのか、めっぽう元気をなくしていてね。 あんたが来て、あの子の元気が戻ったようなんだ。 なあ、良かったら今日はウチで泊まって行ってくれないかい? お代は結構だよ』


『・・・。』


ね?

状況的に言えないでしょ??

『今日は家に帰る予定なんで、また今度』なんてさ。

次はいつ、この街を訪れるのか、見当もつかないのだし。

急ぎの用事はあるのだが、この話を無視できるほど、俺の神経は図太くない。

アリアには『話が長引いた』とか説明しておけばよいだろう。

今日一日は、エリカさんの話に付き合っても良いかもしれない。

なんやかんやで、彼女にはかなりお世話になっているのだから、そういう頼みは、聞くべきだ。

正直、そうまでイヤでもないし。

・・ニガテではあるが。


「ではもう、お休みになると・・? カイト殿様、、どうせこの街に残ると言うなら、出かけませんと、時間がもったいなくありませんか?」


「・・・・。」


いや、そんな殺気のようなものを、こちらへ向けられても困る。

彼女は基本的に、この街は初めてであるらしい。

探究心がくすぶって、うずうずしている様子。

今日はもう『休む』と言われ、残念な気持ちが裏返って、このような態度になるのだ。

最近になってなのだが、このようなダリアさんの態度が微笑ましく映るようになって来た。

なんだか、(見た目)歳相応で。

別に彼女の希望は『破壊』などではないので、こちらとしても極力かなえてはやりたい。

だが今のメンバーは出自、種族共にバラバラの4人。

ザッと説明すると、マトモに人間が1人も居ないパーティーだ。

ヒカリの言う『疲れた』も、身体的なモノと言うよりは、精神的なモノに起因するモノであろう。

安全のためにも、1人が疲れなどを訴えれば、それに合わせるのが最も良い手段と言える。

気疲れは、回復魔法などで治るようなものではないし。


「ダリアさん、今日は我慢してあげて? 休息は大事だよ??」


カイトの言い分を聞き分けたのか・・

ダリアさんが、急に大人しくなる。

彼女は、こんなに聞き分けが良かったろうか。

数年に及ぶ使用人生活で、彼女の性格も丸くなったのかもしれない。

そんな彼の妄想は、すぐさまはじける事となった。


「・・・カイト殿様、『遊び』期待いたしておりますよ?」


「ああ、期待・・・頑張るよ。 だから、良いね?」


今さら、コレを覆すすべなど、存在しないだろう。

要求を呑むことで、カイトはその場しのぎの解決の糸口をつかむ事に成功した。

避けられない事態なのであればと、カイトはこれに便乗する事としたのだ。

火のついた火薬庫に爆弾を、余計に1個放り込んでも、結果は同じだと言う考えだ。

ちなみに彼はその爆弾が、核弾頭である事に、気がついてすらいない。

世界が破滅しない事を、切に願う。


「それじゃ、部屋のカギも預かっている事だし、早速、宿に・・・」


「おおおおおおおおおおおお!!???????」


カイトの提案は、後ろから上がった男の叫び声で、かき消されてしまった。

彼らが居るここは、シェラリータの街の中心地近く。

喧騒けんそうは珍しい事ではない。

だがその声はどうも、俺たちに向けられたもののような気がする。


「あ、クマさん!!」


振り向くと、そこには服屋のマッチョさんがいた。

通称、『クマさん』

ギルドに居たレンさんの呼び名を、そのまま使った次第だ。

両手に米俵のようなモノ・・・服飾用なのか大量の糸のロールを担いでいる。

彼も買い物帰りなのだろうか?

あとで挨拶に向かおうとしていたので、正直手間が省けて助かった。


・・・と1秒ほどは、考えておりました。


「カイちゃんじゃないのーーーーーー!!!」


ギュッ、バキバキメキメキ・・・・!!


「ぎゃアアああああああ~~~~~!!!!!」


再会が嬉しいのか、それともそれ以外の感情によるモノなのか・・・

カイトは目いっぱいクマさんに抱きしめられ、その意識を手放した。


残りの3人は、その光景をただ、遠巻きに見つめる事しかできなかった。

ダリアさんにも匹敵する剣・・・・

今後、何も起きなければ良いのですが。

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