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オタクはチートを望まない  作者: 福島 まゆ
第10章・鉄道の前に
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第235話・あいさつ回り

これからも、頑張っていきます。

感想などがありましたら、どんどんお寄せ下さい!

ある晴れた日の昼下がり。

教会の鐘と共に、魔石採掘を行っている工夫たちは一斉に昼休みに入る。

これから各々(おのおの)、宿や定職屋などで昼食をることになる。

そんな1日の間で最も、街が騒がしくなる時間帯。

シェラリータのメインストリートでは、異彩を放つ4人組が街を練り歩いていた。


「お兄ちゃん、どこに向かっているの??」


「せっかくここまで来たから、いくつか寄りたいところがあるんだ。 時間は掛けないつもり。」


領主様邸での所用が済んだカイトは、せっかくここまで来たのだからと、再び道草をくいはじめる。

今度こそはくしたりしないよう、書状はカバンごとアイテム・ボックスの中だ。

これでノビノビ、行動ができる。

彼は今までに、街でお世話になった人たちに、あいさつ回りをするらしい。

卒業した高校生ヤンキーがする教諭への『あいさつ回り』とは違うので、ご安心下さい。


「私が覚えているのと、だいぶ街の様子が変わったねカイト。」


「ああ、びっくりだよ。」


目的地に転移を使わずに徒歩で向かっているのは、街を観察するため。

カイトが昔に事件を起こしたおかげで街の様子は、彼らが知っているものとは大きく変わっていた。

それをこの目に焼き付たいと思ったのだ。

結果はご覧の通り。

建物は大きく変わっていないのものの、出している看板などから、知っている店はかなり少なくなっているように見受けられる。

今向かってる場所も、もしかしたら無くなっているかも知れない。


「カイト殿様、目的地はまだ遠いのですか?」


「・・・転移は使わないよ?」


道の周りからは、好奇にも似た視線が、こちらへ注がれているのが分かる。

貴族が2人に、使用人2人のメンバーが徒歩移動なんかしていたら、そうなりますよね・・・

見世物みたいなのが嫌なのか、先ほどからこうしてダリアさんが俺へ『魔法を使え』と提案してくる。

さっきも説明したとおり、俺が徒歩移動をわざわざ選択しているのには理由があるのだ。

ここでそれを曲げるつもりは、毛頭ない。

そんなあからさまに、肩を落とされても困る。

ノゾミたちが嫌がったら考えるが、2人は特段、気にしていない様子だ。


「そうだ、服を買いにいくか? いい店を知ってるよ。」


3人のご機嫌取りのためカイトは、そんな提案をした。

この際、あいさつ回りの順序を、少しイジる事にしよう。

女性は総じて、服飾に興味があるのだとアリアに教えられた。

今の位置からだといささか、遠回りにはなるが、それも致し方なかろう。

それで気を引いておき、後の行動をスムーズにしようと言うわけだ。

カイト、わりと打算的である。


「私、今のこの服でいいよ?」

「新しい服なんていらな~い。」

「服飾ですか・・それよりも私としましては、この街の『すいーつ』を食べあさりたい気分なのですが。」


「あ、そ。」


カイトの打算は、1秒で破裂した。

そうでしたね、この3人はそういうモノからは、かなり縁遠い方々でしたっけ・・

彼女たちには服飾より、うまい物を食わせた方が、ずっと機嫌が良くなる。

かといってまた、何かを食いにいくのは俺の胃的に敬遠したいところだ。

期待に応えられなくて、ごめんね。

そうとなれば、『マッチョさん』(仮名)への挨拶は、また後でいいだろう。


「じゃあ予定通りにいくよ? そう時間もかからないし。」


興味がないのか、カイトの提案にけだるそうにうなづく3人。

表情はビミョーだが、否定されるよりはマシだろう。

カイトに連れられるまま、一行は街の中心へと突き進んで行く・・・



◇◇◇



「カイト、そのうち良い事あるよ。」


「うぅ・・・」


先ほどから街を練り歩く、珍妙な一行のうちの男が、見るからに沈んだ表情を浮かべていた。

周りの女性組3人が、それを慰める。


「カイト殿様、大丈夫ですか? 運が悪いのも、あなた様の取り柄ですよ??」


「・・・。」


いや、違った。

メンバー中、ただ1人の使用人は省く。

運が悪いのが取り柄とか、俺は一体何なのだと聞きたい。


俺たちがまず、最初に向かったのは、この街のギルドだった。

知っているギルドの人などに、ご挨拶を・・と思ったのだ。

ギルドマスターが居ないのは、仕方ない。

そう思って敷居をまたいだら・・・


「まさか職員が、ほとんど全員代わっているなんてな・・・」


端的にいうと、知っている顔ぶれは、ほとんど居なかった。

代理のギルドマスター(副ギルドマスターと言うらしい)も知らない人。

ギルド職員も、そのほとんどが知らない顔ぶれであった。

何人か見覚えのある人も見かけはしたが、なんだか寂しい思いをさせられた。

受付嬢のレンさんに、一言お礼を言いたかったな・・・・

しかし『転勤』してしまったのでは、仕方がない。

元気にやっている事を、切に願います。


「カイト殿様、用事は済みましたか? 先ほど香ばしい香りを漂わせる、興味湧かせられる料理屋が・・・」


「待って、まだ一件済んだだけだから。」


俺が感慨にふける時間すら、与えてはくれないらしい。

むむ・・・そんなに食っていたらじきに、太るぞ!?

いや、ドラゴンは太ったりはしないのか・・・?

どちらにせよ、彼女には『食う』と『蹂躙』以外にももっと、興味をお持ちいただきたい。

(※使用人を除く)


「お兄ちゃん、次はどこに行くの?」


「なに、遠くはないさ。 そこの角を曲がった突き当たりが目的の店。」


俺が向かっているのは、とてもお世話になった人のもとだ。

彼にはとてもお世話になったので、これだけは外せない。

ギルドで聞いたので、所在確認もバッチリだ。


カイトの視線の先。

そこには石造りのこぢんまりとした小さな建物があった。

盾と剣と杖が交差する大きな看板が、存在感を放つ。 

それはこの街では名の知れた、武器屋。

その中からは、コーンコーンと、金属を叩くような音が鳴り響いていた・・・・・


シェラリータ編が、予定より長くなってしまいました・・

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