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オタクはチートを望まない  作者: 福島 まゆ
第10章・鉄道の前に
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第232話・カイト思い出に浸る

これからも頑張っていきます。

感想などがありましたら、どんどんお寄せ下さい!

「お2人は、どのような関係なのですか?」


「いや・・関係っていうか、ただの宿泊していた宿の人だよ。」


ダリアさんの単刀直入な質問に、きっぱりと答えるカイト。

彼女はこの宿の看板娘で、俺はただの宿泊者。

エリカさんとそれ以上の関係なぞ、持ってはいない。

よく彼女のほうから絡んでくる事はあったので、その時に話したぐらいだ。


「・・本当にそれだけですか?」


「・・・・・ウソじゃないってば。」


「はああ~~~・・・」


心底残念そうに、俺に疑いを掛けるのをやめる彼女。

もうちょっと、感情を隠してほしい。

残念そうにしながらも彼女は、食事の手は少したりとも緩めることはしない。

さっきもあんなに食べていたのに、ここの料理がよっぽど気に入ったようだ。

俺たちの前には、『シチュー』が出されている。

先ほど宿に着くなり、女将おかみさんが出してくれたのだ。

これが、ダリアさんには大変に好評のよう。


カイトとダリアさんの一連のやり取りを、ずっと横で静観していた問題のエリカさんは、ニヤニヤと笑みを浮かべながら、こちらに視線を向けてくる。

うるさいのは勘弁だが、こう静かなのは逆に、悪い予感がする・・・


「つれないねぇ~カイト。 前に2人で将来を誓い合ったじゃないか!」


「「「はあああああ!!????」」」


ヒカリ始め、宿のお客たちが、一斉に驚愕して俺に、刺すような視線を向ける。

静かにしているかと思っていたら・・・

なんて爆弾を落としてくるんだ、この人は!

冗談にもホドがある。

俺がいつ、あんたに告白なんかした!??

まったくの、濡れ衣である!!

カイトの予感は、こういった時だけよく当たるのだ。

ゴミを見るような視線を向けてくるヒカリやノゾミ相手に、冷や汗をドバドバ流しながら大慌てするカイト。

エリカさんは、『してやったり』といった満足げな表情を浮かべる。


「あっはっはっは!! 冗談だよ、初めて会った時と全然、変わってないねあんた。」


「・・・・・。」


捕まっただけでも十分な不幸だったのにタマにこうして、彼女は俺をからかってくる。

こっちは寿命が100年は縮んだぞ。

ヤバイ、笑顔がちょー腹立つ!!

グレーツクのおっさん達のとはまた、イジり方が全然違う。

おっさん達の冗談は、軽く流せると言うのに・・・

一体彼らのソレと、何が違うと言うのか。


「で、エリカさんが俺を呼び止めたのは、俺をからかうためか?」


「ま、そんなとこさね。」


「・・・・・・・・。」


この国には確か、『貴族優越制度』があったよな?

それを行使して、この人を張り倒してはダメだろうか??

いや、制度乱用はダメだよな。

足りない理性で静かに、矛を収めるカイト。

カイトの中では今や、鉄道は忘れ去られた存在だ。

そんな彼の心中なぞいざ知らず、メイド姿のダリアさんが料理をおかわりする。

よっぽど、おいしかったらしい。


「ところでカイトは、食わないのかい?」


「・・・今、食うところだ。」


彼女と話している間に、すっかり俺の分のシチューは冷めてしまった。

電子レンジをイメージして、魔法で再び暖める。

すると先ほどのように、シチューから湯気が立ち上る。

それをスプーンですくい、口元へと運ぶ。


「か~~! ウメぇーー!!」


じじ臭い口調で、料理のうまさをかみしめるカイト。

感想はともかく、何年経とうともこの宿の料理はうまかった!

これですよ、これ。

この世界に来た俺が、絶望していた時に心にしみた懐かしい地球に似た味。

今は時間が朝と昼の中間ぐらいとビミョーな事もあり、客を多くなく、まったりとできる。

料理がうまいこともあり、実に心地いい。

エリカさんが絡んでこなければ、更にいいのに!!


「あんたをイジるのはこの位にして・・・さっきはあんたに聞きたいことがあって、呼び止めたのさ。」


「なんだ用事か? 俺に答えられる範囲でなら、別に良いけど。」


それならそうと、早く言って欲しい。

危うく、このまま帰りかけたぞ。

食事の手を一時とめ、『聞きたいこと』とやらに耳を傾けるカイト。


「カイトとそれにそっちはノゾミだろう? どうして領主様みたいな格好しているんだい??」


「「・・・・。」」


これからラウゲットさんに会うこともあり、俺とノゾミの2人は貴族用の礼服を着ている。

本当は冒険者用の軽服でも良かったのだが、そういうわけにもいかないようだった。

さて、それをどう説明したものか。

そのまま説明すると、わけが分からない上に長い話になるし・・・

王都みたいにコスプレと思われると、この後に領主様宅に行きにくくなるし。

ノゾミも俺にあわせて、挙動不審になっている。

俺のやり方しだいで・・・と言う事らしい。

ヒカリも空気を読んで、口を挟んでは来ない。

ダリアさんは、すっかり料理にご執心しゅうしんだ。

彼女になんと説明するのが、得策だろうか。

カイトが答えを出しあぐねていると、ポンと肩を叩かれる。


「いいよカイト、言いにくい事情でもあるんだろう? 何も宿屋の娘の好奇心なんかに、思い悩む必要は無いさ。」


「・・・スマン。」


俺の心中でも察したのか、彼女は疑問を取り下げてくれた。

長年、宿屋で働いているので、こういった事は日常茶飯事なのだ。

他人の過去にズケズケと、入りこむのは良くないというのが、彼女の考えだ。

それがたとえ、よく見知った人間であっても。

なんやかんやで、彼女を始め、周りはいい人だらけだ。


「ところでカイト、今日は涙を流さないのかい?」


「うるせーやい。」


台無しである。

やっぱりこの人は苦手だ。

どうしてこのタイミングで、出会った頃の話を蒸し返すのか。

確かに今食べているのは、『シチュー』だけどさ・・・

思い出させるなよな。


「ほほぅ、カイト殿様が泣くですか・・・それはまた興味深い。」


「だろぅ? ここだけの話なんだけどさ、カイトは・・・」


「こらーーーーーーーーーー!!!」


本人の前で内緒話をするな!!

まったくなんてヒトたちだ。

ヒカリもその輪に加わってはいけません!


カイトの受難は続く・・・・・

シェラリータ編は、もう少し続きます・・・

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