第232話・カイト思い出に浸る
これからも頑張っていきます。
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「お2人は、どのような関係なのですか?」
「いや・・関係っていうか、ただの宿泊していた宿の人だよ。」
ダリアさんの単刀直入な質問に、きっぱりと答えるカイト。
彼女はこの宿の看板娘で、俺はただの宿泊者。
エリカさんとそれ以上の関係なぞ、持ってはいない。
よく彼女のほうから絡んでくる事はあったので、その時に話したぐらいだ。
「・・本当にそれだけですか?」
「・・・・・ウソじゃないってば。」
「はああ~~~・・・」
心底残念そうに、俺に疑いを掛けるのをやめる彼女。
もうちょっと、感情を隠してほしい。
残念そうにしながらも彼女は、食事の手は少したりとも緩めることはしない。
さっきもあんなに食べていたのに、ここの料理がよっぽど気に入ったようだ。
俺たちの前には、『シチュー』が出されている。
先ほど宿に着くなり、女将さんが出してくれたのだ。
これが、ダリアさんには大変に好評のよう。
カイトとダリアさんの一連のやり取りを、ずっと横で静観していた問題のエリカさんは、ニヤニヤと笑みを浮かべながら、こちらに視線を向けてくる。
うるさいのは勘弁だが、こう静かなのは逆に、悪い予感がする・・・
「つれないねぇ~カイト。 前に2人で将来を誓い合ったじゃないか!」
「「「はあああああ!!????」」」
ヒカリ始め、宿のお客たちが、一斉に驚愕して俺に、刺すような視線を向ける。
静かにしているかと思っていたら・・・
なんて爆弾を落としてくるんだ、この人は!
冗談にもホドがある。
俺がいつ、あんたに告白なんかした!??
まったくの、濡れ衣である!!
カイトの予感は、こういった時だけよく当たるのだ。
ゴミを見るような視線を向けてくるヒカリやノゾミ相手に、冷や汗をドバドバ流しながら大慌てするカイト。
エリカさんは、『してやったり』といった満足げな表情を浮かべる。
「あっはっはっは!! 冗談だよ、初めて会った時と全然、変わってないねあんた。」
「・・・・・。」
捕まっただけでも十分な不幸だったのにタマにこうして、彼女は俺をからかってくる。
こっちは寿命が100年は縮んだぞ。
ヤバイ、笑顔がちょー腹立つ!!
グレーツクのおっさん達のとはまた、イジり方が全然違う。
おっさん達の冗談は、軽く流せると言うのに・・・
一体彼らのソレと、何が違うと言うのか。
「で、エリカさんが俺を呼び止めたのは、俺をからかうためか?」
「ま、そんなとこさね。」
「・・・・・・・・。」
この国には確か、『貴族優越制度』があったよな?
それを行使して、この人を張り倒してはダメだろうか??
いや、制度乱用はダメだよな。
足りない理性で静かに、矛を収めるカイト。
カイトの中では今や、鉄道は忘れ去られた存在だ。
そんな彼の心中なぞいざ知らず、メイド姿のダリアさんが料理をおかわりする。
よっぽど、おいしかったらしい。
「ところでカイトは、食わないのかい?」
「・・・今、食うところだ。」
彼女と話している間に、すっかり俺の分のシチューは冷めてしまった。
電子レンジをイメージして、魔法で再び暖める。
すると先ほどのように、シチューから湯気が立ち上る。
それをスプーンですくい、口元へと運ぶ。
「か~~! ウメぇーー!!」
じじ臭い口調で、料理のうまさをかみしめるカイト。
感想はともかく、何年経とうともこの宿の料理はうまかった!
これですよ、これ。
この世界に来た俺が、絶望していた時に心にしみた懐かしい地球に似た味。
今は時間が朝と昼の中間ぐらいとビミョーな事もあり、客を多くなく、まったりとできる。
料理がうまいこともあり、実に心地いい。
エリカさんが絡んでこなければ、更にいいのに!!
「あんたをイジるのはこの位にして・・・さっきはあんたに聞きたいことがあって、呼び止めたのさ。」
「なんだ用事か? 俺に答えられる範囲でなら、別に良いけど。」
それならそうと、早く言って欲しい。
危うく、このまま帰りかけたぞ。
食事の手を一時とめ、『聞きたいこと』とやらに耳を傾けるカイト。
「カイトとそれにそっちはノゾミだろう? どうして領主様みたいな格好しているんだい??」
「「・・・・。」」
これからラウゲットさんに会うこともあり、俺とノゾミの2人は貴族用の礼服を着ている。
本当は冒険者用の軽服でも良かったのだが、そういうわけにもいかないようだった。
さて、それをどう説明したものか。
そのまま説明すると、わけが分からない上に長い話になるし・・・
王都みたいにコスプレと思われると、この後に領主様宅に行きにくくなるし。
ノゾミも俺にあわせて、挙動不審になっている。
俺のやり方しだいで・・・と言う事らしい。
ヒカリも空気を読んで、口を挟んでは来ない。
ダリアさんは、すっかり料理にご執心だ。
彼女になんと説明するのが、得策だろうか。
カイトが答えを出しあぐねていると、ポンと肩を叩かれる。
「いいよカイト、言いにくい事情でもあるんだろう? 何も宿屋の娘の好奇心なんかに、思い悩む必要は無いさ。」
「・・・スマン。」
俺の心中でも察したのか、彼女は疑問を取り下げてくれた。
長年、宿屋で働いているので、こういった事は日常茶飯事なのだ。
他人の過去にズケズケと、入りこむのは良くないというのが、彼女の考えだ。
それがたとえ、よく見知った人間であっても。
なんやかんやで、彼女を始め、周りはいい人だらけだ。
「ところでカイト、今日は涙を流さないのかい?」
「うるせーやい。」
台無しである。
やっぱりこの人は苦手だ。
どうしてこのタイミングで、出会った頃の話を蒸し返すのか。
確かに今食べているのは、『シチュー』だけどさ・・・
思い出させるなよな。
「ほほぅ、カイト殿様が泣くですか・・・それはまた興味深い。」
「だろぅ? ここだけの話なんだけどさ、カイトは・・・」
「こらーーーーーーーーーー!!!」
本人の前で内緒話をするな!!
まったくなんてヒトたちだ。
ヒカリもその輪に加わってはいけません!
カイトの受難は続く・・・・・
シェラリータ編は、もう少し続きます・・・




