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オタクはチートを望まない  作者: 福島 まゆ
第10章・鉄道の前に
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第230話・気配りしようぜ・・

これからも、頑張っていきます。

感想などがありましたら、どんどんお寄せ下さい!

法国の西側に位置する、シェラリータ領。

ここは魔族領にほど近く、昔は冒険者達がつどう街として多くの者が各地から集まっていたモノだ。

今ではすっかり、それも様変わりしており『冒険者』の数自体は、非常にまばらとなっている。

だが街は、昔のそれより一層、活気に満ちあふれているようだった。


「ん、ん~~!!」


街の南側にある城門。

シェラリータの街へ入るには、城壁に設けられた4つの門のいずれかを通らねばならない。

このは門は、その一つだ。

門の外側に位置する入り口では、一人の門番が大きく体を伸ばしていた。

彼の仕事は街へつながる城門で、街へ入ろうとする者の身分を確認し、入街税を徴収する事。

・・・というのが一般的な、門番の業務。

しかし南側と言うのは、すべからく誰も訪れない事で有名な通用門だ。

自分はあくまで、『門の警備』のために置かれているに過ぎない。

毎日がヒマであり、しばしば欠伸あくびが漏れてしまう。


「『ベアル領のスズキ公』が訪問する、無礼無きように・・・か。」


2日前に突如、上司から言い渡された指令を、反芻はんすうする兵士。

最近、この貴族の名はよく耳にする。

なんでも頭のキレる、伝説の勇者並の力を持った、民思いの慈愛に満ちた領主様と聞く。

なんだかスゴい方なんだろうなとしか、想像がつかない。

一人のうわさ話ならば聞き流すほど胡散臭うさんくさい話なのだが、皆がそれを口々にうわさしているのを聞くと、どうもウソでもないような気がしてならない。

・・・まあ所詮、自分には雲上の人間の話だ。


「西の門から来るとか息巻いていたっけな?」


シェラリータ西の門では、『大公様』を歓待するための装飾などの準備が、着々と進められている。

西の門は王都へつながる街道が伸びている。

ベアル領は、シェラリータの南側に位置するのだが、ここから来る事は無いであろう。


まずは道が無い。

ベアル領とシェラリータ領の間にはビルバス山脈という高峰が連なっており、道は総じて険しい。

貴族様がわざわざ、このような道なき道を通るなど、とても考えられない。


そしてここは危険地帯だ。

近くには、魔族が跋扈ばっこする黒き森が存在している。

東門も、同様。

北門は、ヒドイ遠回りなので論外。

この南門も今言ったとおり・・


そこから考えて、訪れると言う大公様が西の門からやって来ると予想するのは、当然の流れであった。

何より話が来たのは、たったの2日前。

それからすぐ出立したと考えても、最速でもここへの到着は、一ヶ月ほど先になる。

それまでは、特に何が起こるということもないであろう。

もしやって来ても、西の門のことは、こちらでは関係がない。

自分はただひたむきに、ここを守っていれば良いのだ。


「・・・・・・・・!??」


そのときだった。

彼の目の前の地面と空が、青い閃光を放ち始めた。

先ほども説明したとおり、ここは魔族の住む森の近く。

こういったおかしな事象が発生しても、なんら不思議は無い。

例えば魔族が、襲撃にやって来るとか。

腰を深く沈め、右手に持っていた槍を、前方に突き出して臨戦態勢に入る兵士。

今、ここには自分ひとりしか居ないが、ここは決して通すわけにはいかない!

だが一人で、事態を収拾できるかどうか・・・

救援を呼んでいるヒマは、当然無い。

冷たい汗が、彼の頬を伝う。

・・しばらくもしない内に、光は収束していき中からは、4人の男女が姿を現した。


この兵士は、魔族を見たことが幾度かある。

赤目に黒い髪を持ち、ところどころに赤い毛が混じっているのが、主たる特徴だ。

そして目の前に居る女の子の一人は、まさにそんな見た目だった。

他の者についても、赤目赤髪である。

魔族の特徴が、無くはなかった。

彼らの服装など、目には入らない。

たちどころに兵士の警戒は、最上級まで跳ね上がる。


「なんだ貴様ら!? 名を名乗れ、さもなくば即刻立ち去れ!!」


「わわわ、待ってください! 俺たちは・・・」


槍を向けられたその一行は、戦うでもなく、ただただうろたえ続けるのだった。



◇◇◇



「いやーまいった、まいった! まさか到着早々に門番の人に、槍を向けられるとはねー!!」


苦笑しきりと言った感じで、後頭部をかくカイト。

・・が、その後ろの女性3人はまったく、顔が笑っていない。


「カイト殿様、今からでも遅くありません、あの無礼者を消滅させませんか?」

「お兄ちゃん、どうして笑って許しちゃったの!?」

「カイト、私は武器を向けられて、哀しいよ・・・」


「まあ待てよ3人とも、あの人も悪気があって警戒したわけじゃないんだしさ・・・」

 

先ほど俺たちは、シェラリータの街へと転移してきた。

とはいえ転移してきたのは、街中ではなく、城壁の外。

最低限の礼儀として、城門を通過しなければならないというのは、カイトの弁だ。

自分の領地ならともかく、ここで俺は、あくまで『他人の領地』だ。

きちんと検閲などは、受けなければならないと考えるのは、ごく自然の事だった。

・・・その際、イロイロと気配りをし損ねて、冒頭の状況に至る。


「俺たちも悪かったよ、突然転移でやって来たんだから。」


門番の兵士は、俺たちを魔族と、勘違いしたらしい。

俺たちの事が分かると、顔面蒼白だったな。

なんだか俺たちの方が、とても悪い事をしてしまったように思う。

ヒカリが魔族なので、あながち警戒の内容は間違いでもなかったし。


「しかしカイト殿様・・・」


「まあ、まあ・・・それよりさ、お腹すかない?」


このままにしていても、彼女らの怒りは収まらない。

そう踏んだカイトは、ご飯でも食べに行って怒りを納めてもらう事にした。

今日は朝からバタバタで、ほとんど食べる事ができなかったので、お腹がペコペコだ。

ヒカリやノゾミも同様、ダリアさんもメイドと言う立場なので、きっと食べていないだろう。


「どう・・・かな??」


3人が、ポカンとしている。

提案の仕方が、悪かっただろうか??

たしかに食べ物で女性を釣るとか、考えものかも知れないけど、この3人は特殊だし・・・

カイトの不安に呼応するように、彼女たちは口を開く。


「カイト、私はサラダ大盛り!!」

「お兄ちゃんが行くとこなら、どこでもいいよ。」

「カイト殿様、私は美味なものが食べたいです!!」


思い思いに、彼女たちは自らの願望を言い始めた。

ほらね。

先ほどの世紀末な雰囲気など、どこかへ消し飛んでしまった。

作戦は成功である。


だがカイトはまた、『気配り』をし損ねていた。

今のカイトとノゾミは立場上、『領主』の白服を着ている。

ダリアさんとヒカリは使用人・・つまりはメイド姿だ。

このメンバーで街の定食屋などに入っては、どうなるか、想像にかたくはないだろう。


そんな事は気にも留めず、彼らは街中へと繰り出すのだった・・・・・

カイトよ、今の自分に気付けよ。

常識人のアリアが居れば、防げたんでしょうね~~・・・

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