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オタクはチートを望まない  作者: 福島 まゆ
第10章・鉄道の前に
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第228話・ご挨拶へ

これからも、頑張っていきます。

感想などがありましたら、どんどんお寄せ下さい!

屋敷へ帰って来た、カイトたち一行。

はようやく、西へ傾きだしたと言うところか?

ダリアさんは、仲間の使用人たちの(もとへ。

ヒカリは俺に付いて、一緒に私室へ。

それぞれ向かった。


そうしてひと通り着替えなどが終ったころ、俺の私室の扉がノックされた。

最近、ノックの仕方で誰が来たのかが分かるようになった。

今のはきっと・・・


「カイト様、お帰りになるのが早すぎですわ!!?」


「ご、ごめんなさい!???」


嫁のアリアが、部屋の中へと怒りの形相ぎょうそうで入ってきた。

条件反射で、謝罪をするカイト。

今日彼がやった事は、『早く帰宅したこと。』

それは怒られてとうぜ・・・・

待て。

なぜ早く帰ってきて、怒られるのだ?


「アリア、どうして怒るの? 俺はなるべくグレーツクでの用事を早めに終らせて、必死で帰って来たんだけど・・・」


誉めてほしいとまでは言わないが、少なくとも怒られるような事は、何もしていないというのが、本音だ。

ヒカリも目を大きく見開き、頭の上に疑問符を浮かべている。

『なんでお兄ちゃんが怒られているの?』って感じだ。

そうだよな、俺は怒られる様な事はしていないよな!?


「カイト様、それがいけないのです! 『用事を早めに終わらせた』という事は、それだけお仕事に、穴が出来た可能性が高いという事につながるのです。 お分かりですね!?」


「は、はい!!」


アリアに気圧けおされ、相槌あいづちを打つカイト。

なるほど、怒られている理由が判明した。

『仕事を早く終らせた』ということは、『仕事を雑に仕上げた』という結果を生みかねない。

それがアリアならまだしも、カイトだ。

そのあたり彼にはまだ、『信用』がとぼしい。


「大丈夫だよアリア。 今日の予定はね・・なんでもない!」


今日早く帰って来た内容を話そうと、うっかり、口を滑らせるところだった。

アリアにだけは、俺が『グレーツク国王』だという事を、知られたくない。

・・いや、知られてはならない!

なぜなら、いっそ死ぬ方が楽なほど、怒られるから。

見捨てられる恐れすらある。

それだけは、どうしても避けたいのだ。

つい数年前までは、『アリアに見捨てられないかな』とか言っていたのに・・・

最近になり、彼の心構えも変わったようだ。


「うう゛ん! ともかく、用事は完璧に仕上げてきた。 問題は起きません!」


「・・・・本当ですか? それならば良いのですが・・・・」


一度大きく咳払せきばらいをして、急いだが仕事に穴は無いと、アピールするカイト。

ここまで自信に満ちあふれた彼の姿を見るのは、初めてのことだ。

・・・不安要素は残ったままだが、一応、彼を信じる事とした。


「実はカイト様、まだシェラリータへ出立するための準備が、整っていない状態でございまして・・・」


一転してカイトに対し、申し訳なさそうな表情を送るアリア。

カイトがグレーツクへ出立したのが、ほんの三時間ほど前。

それから書類整理などの準備をしていたら、あっという間に時間が過ぎてしまった。

まあ、まさかカイト様がここまで早く、帰ってくると思っていなかったのも一端にあるが・・

先ほど取り乱して、思わず怒ってしまったのも、この辺りが関係している。


「準備って何が、必要なの??」


「そうですわね・・・まず手ぶらで参るわけにはいきませんので、伯爵様へのご挨拶あいさつの品、あちらでの手続き上必要になるであろう書類、それに鉄道のデモ資料、これらはすぐに手配が可能ですね。」


「他には?」


「シェラリータへの道は険しく、片道を行くだけでも、多大な困難を伴います。 そのための馬車と、野営も必要になってくるのでその準備と、それから・・・・」


「ちょっと待ってアリア!! 俺はシェラリータに行った事があるから、旅の支度はいらないよ。」


「・・・へ?」


指折り必要なものを上げていくアリアに、制止をするカイト。

グレーツクへ行った時のように、彼にはシェラリータまで転移を使う事ができる。

旅の支度というのは、必要ないのだ。

アリアは俺が『シェラリータに行った事がある』というのを、知らないんだったな。

特に話した事もないし。


「旅の支度以外に、必要なものは?」


「・・・・あ、そうですね・・先ほど申し上げた品や書類の他には、特には・・・」


アリアの説明に、満面の笑みを浮かべるカイト。

これでシェラリータに行く準備は、整った事に・・・

待てよ、そういえば準備はまだ、終っていないんだっけか??


「俺も手伝うよ、なるべく早いうちに、出立が出来るようにしようか?」


「それは非常にありがたいのですが・・・カイト様、旅の支度は、やはり必要ですわよ?」


「え゛・・どうして??」


書類の準備、お土産の手配、資料作成。

彼女は必要なのは、コレだけといった。

転移するのだから、旅支度など不必要なはずだ。

「わからない」と言った表情を浮かべる彼に対し、アリアはビシッと人差し指を向けた。


「カイト様、あなた様はアーバン法国における『大公』という立場の人間です! 権威を保つためにも、多くの護衛の者や馬車を連れなければならないのですよ!!?」


きりっとした顔を見せる彼女に、苦々しい顔を向けるカイト。

今まで、彼女はそんな事を一度も言ったことはない。

正直なところ『なぜこのに及んで?』ってかんじだ。


「お分かりになっていないようなので、説明させていただきますわ。 国王様に対しては、貴族は権威を示す必要は無いのです。 これは、ご理解いただけますか?」


もちろん分かる。

会社の社長にデカイ態度をとる、新入のヒラ社員みたいな事にあたるのだろう。

やっている者も少なくは無いが、それはわば貴族たちによる『けん制』のようなものらしい。

俺にはそんな事をする、度胸は無い。

ちなみにフツウの貴族は、馬車などはどこかに隠すようなど、王都ではひっそりとした行動をとるようだ。

ちなみに俺は転移をするので、一人として連れてすら居ないぞ!

はっはっは!!


「グレーツクに関しましても海を隔てた向こう側ですし、今さらとやかく申す事はしません。」


それを聞いて、ホッと安堵あんどのため息をもらすカイト。

外国に関しても『挑発行為』となりかねないので、『大名行列』は不要らしい。

それまでどうかと言われたら、どうしようかと思った。

そこに「ですが。」と続けるアリア。


「今回カイト様が向かうのは、国内の別の領主が居る地になります。 彼らにカイト様は、その『権威』を示す必要があるのです! こう申し上げては失礼ですが、これは『常識』です!!」


「えー・・。」


要約すると『仲間内同士は、けん制しあえ』と言う事か?

そんな面倒な上に、いらぬ反発などが出来そうな事、俺は避けたいのだが・・・

仲間内同士、仲良く協力し合うと言う考えは、無いのだろうか??

はあ・・とため息をつくアリア。


「今まで何度も申し上げてきましたが、あなた様は『スズキ公』という法国における上流貴族です。 内外にそのお力を示すのは貴族同士のけん制だけでなく、民にその確固たる権威を指し示すためでも、あるのですよ?」


確固たる権威・・・ねぇ・・・

この数年、俺はイロイロとこの街を引っき回してきた。

それもあってこの街には、そこそこに愛着がある。

前みたいに『アリアがクーデターを起こしてくれないかな?』とは思わなくなったが、自分が貴族とか、何の冗談かと、未だに思っている節がある。

つまり言いたいのは、俺は自分を『本当の貴族』とは思っていない。

政治などにうとい事もあり、いつかすべてを取り上げられるのでは?と考えている。

このどこに、『確固たる権威』があるというのか。

・・・・まして。


「その連れて行く使用人さん達とかの手配が、大変だって言うんでしょ? 俺はそんな負担を、みんなに掛けたくない。」


これは、本心だ。

俺なんかのために、使用人さん達の仕事が増えるとか、マジでやめて欲しい。

彼らには彼らの、日々の業務が存在するのだから。

まして連れて行くとなれば、休日出勤する者もでるであろうし・・・

本当に、それだけはマジ勘弁して。

休日は大事よ。


「で・・・ですが伯爵様に対しての権威が・・・・」


「ラウゲットさんなら心配ない。 知り合いだから。」


ぞろぞろと使用人さん達を引き連れて凱旋がいせんするとか、恥ずかしすぎる。

前に会ったときからの、落差が激しすぎるのだ。

俺はそんな事ができるほど、心臓は強くない。

だからアリア、俺を身一つで行かせてはくれまいか?


「・・・分かりました、時間もありませんので仕方ございません。」


はあぁ・・と、先ほどより大きくため息をつくアリア。

牙城は陥落した。

カイト、初勝利である!

けっこう地味だが、勝利に大きさは関係ない。


「ですがカイト様、やはり使用人を5~6名は連れていただきませんと。」


「う~~ん・・・・」


身辺警護とか、イロイロな事情があるのだろう。

これだけは譲れないと、きりっとした顔を向けてくる彼女。

実を言えばあまり人が居ると、イロイロとバレてしまいかねないので、連れて行きたくないというのもあるのだが・・・・


彼女とは今しばしの、交渉が必要のようだ。

次回、彼らはシェラリータに!

・・とは、ならない模様です。

いましばし、お待ち下さい。

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