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オタクはチートを望まない  作者: 福島 まゆ
第10章・鉄道の前に
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第227話・秘めたる思い

これからも、頑張っていきます。

感想などがありましたら、どんどんお寄せ下さい!

「なんだ小僧か? そいつらは誰だ。」


転移でグレーツクの、鉄道研究所へとやって来たカイトたち一行。

メンバーはお馴染み、カイト、ヒカリ、ダリアさんトリオ。

それにベアルから連れて来た、『鉄道建設団』の皆様をひき連れている。

あの後、メンバーが少々増えた事もあり、現在は総勢40名弱。


「この人たちは、グレーツクの鉄道建設をするための、助っ人です。 よろしくお願いいたします。」


「は~~ん、大丈夫かね?」


「ひよっこばっかじゃねぇか?? 任せて大丈夫かよ、小僧!??」


カイトの紹介に、品定めするように建設団の人たちを見やるおっさんズ。

その鋭い眼光に、数歩後ろへと下がる、建設団の皆様。

元々、鉄道はおっさん達が自分たちで工事をする気、マンマンだったよう。

だがおっさん達に、ポイント設備など、レールを敷く技術は無い。

性格的に難しいかもしれないが、手を取り合って頑張ってほしいところだ。

ふいところから出すように、大きな紙の筒を空間魔法でとり出す彼。


「予定ルートは、この地図にあるとおりです。 住民の皆さんで話し合って、ルートは適宜てきぎイジッてください。」


「なんだこりゃ雑だな、ガキの落書きか?? ルルアムだったらもっと、正確に書くぞ。」


カイトが出したのは近辺の地図とソレに書かれた鉄道予定ルート。

それを見て、顔をしかめながら一言、その感想を述べるおっさん。

相変わらずの、辛口コメントだ。

シレッと比較対象にルルアムが引き出される辺り、彼女ともだいぶ、打ち解けてきたようで嬉しい。


「それじゃあ皆さん、先ほど案内した建物が当分の宿舎となります。 基本的にグレーツクの皆さんは良いヒトたちなので、何か困った事がありましたら、いつでも相談して下さい。」


カイトの言葉に呼応し、頭をうなずかせる建設団の皆さん。

この時ばかりは、おっさん達の辛口は炸裂さくれつしなかった。

彼らなりに一応、空気を読んでくれたようだ。

さて後は・・


「あ、あのぅ・・・」


「ん、君は・・・?」


建設団のメンバーの一人、小柄な少女が、カイトに声をかけてきた。

この子の事は、知っている。

たしか王都からいた、奴隷の一人だったはずだ。

今は女性にもかかわらず、その細腕で鉄道建設を頑張ってくれている。

ようは頑張り屋さんだ。

みんなと一緒だなんて、よっぽど仲間が好きなんだろうな・・・


「何か、用かな?」


中腰になって、少女の目の高さをあわせるカイト。

顔は赤く、何かを伝えようとしているものの、どもってしまっている。

それを建設団の人たちは、優しい表情で見つめる。

言いにくい事を、伝えようとしているのか?

一体、なんだろう・・・??


「カイト殿様、この娘の体温が、非常に高くなっております。 そこから察するに・・・」


「あ、あー~~、そういうことか!」


少女の意図がつかめずに困っていたカイトに、耳打ちするダリアさん。

そのおかげでようやくカイトも、事態を理解する事ができた。

少女の言いたいこと。

きっとそれは、『体調不良』だ。

間違いない。

先ほど説明したように、彼女は元、奴隷だ。

ルルアムのように、立場を気にしてしまい、どうとも伝えにくいのだろう。

だが、『カゼ』は万病の元とも言うように、体調不良を放っておいたら、もっと大変な事になる。

しかし体調不良というモノは、自分以外にはなかなか教えてくれなければ、伝わりにくいものだ。

知らせに来てくれて、本当によかった。


「大丈夫、君は奴隷じゃない。 今日は宿舎で、ゆっくり休むといいよ。」


「は、はい・・・・」


カイトが少女の手に頭を乗せ、優しく話しかける。

その際、赤かった顔が、さらに紅潮こうちょうする。

手から伝わってくる少女の体温は、かなり温かい。

ダリアさんの見立てどおり、彼女は『カゼ』をひいているようだ。

そもそも鉄道の建設開始は、もう少し先になるので、それまでゆっくり休むと良い。


「いらっしゃいませカイト様、飲み物をお持ちしました。 皆さんの分もありますので、よろしければどうぞ。」


「お、ありがとうルルアム。」


ここでただ一人の正規研究員のルルアムが、いつものごとくお茶を入れて持ってきてくれた。

人数分と言うと、建設団の分も含めて優に、50人分はあるだろう。

今まで姿を見せなかったのは、そのせいか。

こちらも相変わらずと言うか・・・もっと腰を高くしても良いように思う。

ルルアムから、お茶の入ったカップを受け取るカイトたち。

彼女を、おっさん達も手伝う。

見ていて、なんだか微笑ほほえましい光景だ。


「うん、おいしい。 ルルアムの入れるお茶はうまいね。」


「たしかに、このお茶は美味でございますね。 ルルアム様、後で教えてくださいませ。」


ほぼ無表情で、直立不動のままお茶をたしなむダリアさん。

『後で教えろ』というのは、俺たちのためでは無く、きっと自分が屋敷で楽しむためであろう。

実に、彼女らしい。

それでも彼女の舌をうならせるとは、さすがはルルアムのお茶だ。

貴族時代に、つちかったのだろうか?


「さて・・すいません、それじゃ俺はこれで、帰ります。」


「ああ、もう来なくていいぞ?」


「大公様、何から何まで、本当にありがとうございます。」


おっさん、鉄建の皆さん、俺への切り返しが三者三様なのが、また面白い。

ダリアさんは『お茶の入れ方を教えろ』と言っていたので、このまま残るかと思われたが、予想に反して彼女も俺たちと一緒に、帰るらしい。

口には出さないが、クレアさんの指導が、こたえているらしい。

本当に、なにをされたのだろうか??


疑問を胸に、カイトたちは再び転移で、ベアルへと帰っていった・・・・




◇◇◇



私が抱える、王子様カイトさまへのこの、熱い思い。

最初は、なんだか分からなかった。

ときどき締め付けられる胸が、怖いと感じる事もあった。

・・・だが、それを仲間のおばさんが、教えてくれた。

それが何と言うものなのか。

自分に、一体どういう影響を及ぼすモノなのか・・


『恋』


私は彼のためになら、どこまででも頑張れる。

今日は勇気を振り絞り、この思いを彼にどうにか、打ち明けようとした。

・・だが、それを赤とっくりに、邪魔されてしまった。

あんなお茶を出すしか能が無い、八方美人の女なんかに、私は負けない。


こんな私に彼は、今日も優しくしてくれた。

『奴隷ではない』と言われ、頭をなでてもらった。

だから私は、これからも彼に振り向いてもらえる女性になれるよう、頑張る。


私の名は、フォウ。

大公様は、誰にも渡さない・・・・!!


鉄道建設描写は、少々、駆け足気味となります。

・・・たぶん。

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