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オタクはチートを望まない  作者: 福島 まゆ
第10章・鉄道の前に
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第226話・一通の書状

これからも、頑張っていきます。

感想などがありましたら、どんどんお寄せ下さい!


「2つの良い用件があるのですが、どちらからお聞きになりますか?」


「えっと・・・それは今じゃなきゃダメな感じ?」


カイトです。

最近仕事量が多く、休みが全く取れません。

それはまあ、この際いいのですが・・・

嫁の向けてくる笑顔が、この世の何より怖いです。

俺は今ベアルの屋敷に居ます。

横には毎度おなじみ、ヒカリとダリアさんの計2人。

数日前に決定となったグレーツクの鉄道に関して、報告に向かおうとした途端に、玄関でアリアに呼び止められました。

彼女の言う『良い報告』

今まで俺にとって、良い報告だった試しは無い。


「ちなみに・・どっちが緊急性が高いとか、ある感じ?」


カイトの質問に、かぶりを振るアリア。

どちらも、緊急案件ではないらしい。

珍しい事も、あるものだ。

アリアが俺を呼び止めてまで持ってくる話というのは、総じて緊急性が高いものが多いので。

それならば、話は帰ってからではダメなのだろうか??

こっちも緊急ではないのだが、なるべく急ぎたい感じの用事ではあるので・・・。


「緊急ではないのですが、なるべく早くお耳に入れたと考えまして。 それからでも、グレーツク行きは遅くは無いのでは?(♪)」


「ハイ。」


有無うむを言わさない、アリアの笑顔。

俺にはコレに打ち勝つ、すべはない。

チキンハートでごめんなさい。

俺は、勇者ではないのです。

遅れてはしまうが、グレーツクのひと達への報告は、午後からにしよう。


「まずはこちらの書状が、カイト様宛に届いておりましたので、ご閲覧下さいませ。」


「し・・・書状??」


恐る恐るといった雰囲気で、アリアの差し出す白い封書を受け取るカイト。

よく見ると、これはいつも受け取るものとは、デザインなどが異なる。

差出人は、国王様以外なのだろうか??

いつものごとく表には、何も書かれてはいない。

それがかえって、彼の不安を増長させる。

毎度ながら、心臓に悪い。

恐る恐るといった感じで、封書を裏返すカイト。

そこにはまたいつもどおり、差出人の名だけが、サインされていた。

『ラウゲット=シェラリータ』と。


「・・・ん?」


差出人は、『ラウゲット=シェラリータ』

大事なことなので、二度言った。

・・・っておい!!


「ラウゲットさんから封書!? なんで、どうして??」


中をロクに確認もせず、ただただ驚きの声を上げるカイト。

ここまで彼が驚くとは予想していなかったのか、大きく目を見開かせるアリア。

すっかり場慣れしてしまったのか、見送りに集まっていた屋敷の人たちは無表情だ。


「カイト様、落ち着いて下さいませ。 先日、ラウゲット伯爵宛てにカイト様も封書をお出しになったではありませんか!?」


「それは覚えているけど・・・」


ここで話は、数日前までさかのぼる。

ベアルから王都まで、鉄道を通すにはルート上、どうしてもシェラリータを通過することになってしまった。

シェラリータは、自治領なので、鉄道を通すとなると『許可』が必要になってくる。

その許可を取り付けるべく先日、俺はラウゲットさんに手紙を出したのだ。


「じゃあ、もしかしてこの中に『許可証』が!??」


「さあ・・・中は改めておりませんので。」


そう言いつつ、アリアの顔は満面の笑みに包まれている。

書状を触ると明らかに手紙とは違う、硬い紙が入っているのが確認できた。

重要な通告というモノは、上質で破損しにくい紙を使われるのが、一般的だ。

カイトの王様から渡された『領地任命書』なども、コレである。

つまり、『なにか重要な書状』が中に入っているのは、ほぼ確実といえた。

アリアが笑みを浮かべるのも、このためだ。

カイトは期待に胸を膨らませながら、シェラリータからの書状の封を切る。

期待に胸躍らせる、カイトたち。

そうして中から取り出した、『重要な書状』にはこう書かれていた。


『ハズレ』


「「「・・・・。」」」


書かれた内容が理解できず、フリーズするカイト達。

周りの使用人たちも、一言も発さなくなった彼らが気になり、非礼は承知で書状を覗き込んだ。

・・・そして、同じくフリーズした。

最初にコレから立ち直ったのは、いつものごとくアリアであった。


「・・カイト様、コレは一体、どういうことでしょうか?」


「ど・・どう・・だろう? ハズレ・・・ねぇ・・」


通常、『重要な書類』の内容が書かれている上質紙には、デカデカと『ハズレ』とただ一言、書かれていた。

『ナニを許可する』などとは、どこにも書かれていない。

だが封書の中には、まだもう一枚、手紙らしきものが入っていた。

そう、こちらは『手紙』が。


「これはなんだ・・・?」


食い入るようにして、手紙に目を通すカイトにならうように、同じく手紙に視線を向けるアリアたち。

そこにはおおむね、次のような内容が記されていた。


・カイトが大公でベアル領主!? ビックリ!! 噂はかねがね聞いてるよ。

・久しぶりだね、会いたいな。

・用件の内容は大丈夫だけど、それを書状で送るのはフェアじゃないね。

・せっかくだから、こっち来ない?? 歓迎するよ! 久しぶりに語ろうではないか!!

・ハズレ書状は、シャレだから許して大公様♪


以上、内容のザックリ解説終わり。

ラウゲットさん、茶目っ気が過ぎはしまいか?

こっちは、何が起きたのか本気で悩んだぞ。


「うーん・・・これはつまり『許可証が欲しければシェラリータに来い』という事かなぁ?」


「シェラリータにですか・・・」


手紙の内容の要点をまとめると、『鉄道の許可は出すけど、許可証は取りに来い』とシェラリータの領主様は言っているようだ。

行くこと自体には、なんら問題はない。

グレーツクへ行くように、転移で向かえばいいのだから。


「カイト様、私が出立の準備等を進めておきます。 あなた様はグレーツクでのご用事というのを、済ませてきてくださいませ。」


「え・・でも、もう一つの用事は??」


「後でお話いたします! カイト様はお早く、用事を済ませてきてくださいませ!!」


グイグイと背中を押され、外へと押し出されていくカイト。

今日も今日とて、あわただしい一日となりそうだ・・・・



誰か、俺に休みをください。

カイトたち、また忙しくなりそう・・・

ちなみにアリアが話そうとした、もう一個の案件も、鉄道関連です。

お伝えするのは、もう少し先になりそうですが・・・。

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