第221話・まさかの気遣い?
大変お待たせ致しました。
更新再開となります。
これからも、よろしくお願いいたします。
『おそい! 小僧、いつまでワシを待たせる気だ!?』
「すみません、いろいろあったんです! お許し下さい!!」
怒気をはらんだうなり声を洞窟中に響かせる仏像に、平謝りするカイト。
洞窟内にいる仏像の下へやって来たカイトとルルアム。
そうして久しぶりの再会や否や、コレである。
本当に、ごめんなさい。
神社造りに右往左往したり、鉄道建設で右往左往したり、短期間の間にありえないほど、イロイロあったのです。
決して、あなたを忘れていたわけではありません。
ええ、まったく。
だからそう、赤く光る目をこちらに向けないでください。
「石神様、『神社』は完成いたしました。 本日はそのことで参ったのでございます。」
『ほほう娘よ、我が名を知っていたのか? 感心である。』
頭を下げるルルアムに、よい感情を抱いたらしい仏像。
先ほどまでの怒気など、見る影も無い。
スゴイ手のひらの返しようだ。
「石神様、ルルアムが言ったとおり、神社は完成しました、今日はそのお迎えに上がりました。」
『ふむ、そうか。 ちゃんと住民達に作らせたであろうな?』
もちろんである。
仏像様がこだわるので、それについてはバッチリだ。
そのせいで、俺とルルアムが入れ替わってしまったようなものだし。
ちゃんと間違いなく、住民達の手だけで作ったのだ。
多くの人手のおかげで、かなりの短期間で完成にこぎつける事ができたし。
後は、仏像様に、場所を移ってもらうだけになる。
「例の見た目どおりに、建物を作ってくれました。 石神様も気に入ると思いますよ?」
『ならば良い。』
淡々と切り替えしているが、内心喜んでいるのか、小刻みに像がカタカタと揺れている。
なんだか、見ていて微笑ましい。
住民達は総出で、頑張って神社を建立したのだ。
喜んでくれて、こちらの嬉しさもひとしおである。
何より話がスムーズに進んでよかった。
これで事件は事後処理まで終る形になるだろう。
「では石神様、祠ごとご移動いたします。 少し揺れてしまうと考えられますがご辛抱ください。」
祠の中に佇む仏像に、手を伸ばすルルアム。
これまで毒を吐き続けた像は、ここに来て口を閉ざす。
何か、考え事だろうか?
『・・・貴様らは、その後、変わりはないか?』
「「え!??」」
予想外の仏像からの言葉に、度肝を抜かれる二人。
まさか体調を気遣ってくれているのか!?
あんな尊大な態度をとり続けていたのに・・・
もしかして石神様って、わりといいヒト?
『ワシの掛けた術が誤作動を起こして、貴様らには迷惑を掛けてしまったからな・・・ワシもまさか、あんな事になるとは考えてはおらなかったのだ。 すまぬ。』
「あ、ああ。」
この仏像さんは俺とルルアムが入れ替わってしまった事を、かなり気にしていたようだ。
意外な一面。
驚きの表情を浮かべるカイトに対し、ルルアムは柔らかな笑みを浮かべる。
彼女はこの仏像に意外と言うより、尊敬の念のようなものを抱いたようだ。
「石神様、私は大丈夫でございます。 お気遣いありがとうございます。」
「俺もイロイロありましたが、何とか何事も無く済みました。」
『そうか、ならば良い。』
アリアにバレたり、王様に呼び出しを食らったり、とても一ヶ月ほどで起きたような事とは思えないほど濃密な内容だったが、それも何とか乗り越える事はできた。
これでアリアとルルアムが、仲直りしてくれたら万々歳なのだが・・・
それはもう、本人達の問題であるから、俺がどうこう言える事ではない。
せめて『いつか会う』という進展があっただけでも、大きな進歩といえる。
・・・そう考えると、あながち『入れ替わり』もそうそう悪い事だらけという事でもなかったのだな。
大変な事が多かった反面、良い事もたくさんあったわけだし。
もちろん、二度目は御免こうむるが。
「では石神様、お運びいたしますね?」
『うむ娘よ、よろしく頼むぞ。 それと小僧、今回ばかりはワシは貴様たちに迷惑を掛けた。 何かあれば、一度だけ力添えしてやろう。』
「ま・・・マジですか!??」
仏像さんの思いがけない一言に、目を輝かせるカイト。
こんな事って、あるだろうか?
実はこの仏像さんに頼みたい事があって、それに関しては後で頃合を見計らって・・・と考えていた。
これぞまさに、棚からぼた餅。
まさに天佑神助。
今がきっとその、話す頃合だ!!
「石神様、実は今、魔石が多量に必要なんです。 どうにかなりませんか!??」
『「魔石」? 貴様はあんなゴミが欲しいのか? 別にワシは構わんが・・・』
住民達の話によれば、この仏像さんは、土に関する神様らしい。
ならば今、枯渇している『魔石』が彼の力でどうにかならないか・・・とカイトは考えた。
ワリと真面目に。
もし出来なければ、王都まで鉄道を敷いても、列車が走らせられなくなる。
現状のベアル=ボルタ間でさえ、魔石が足りないのだから。
そして思いがけず、言質ゲットである。
実際、本当に出来るかは疑わしいが、それでは話が進まない。
少しでも可能性があるのなら、それにかけたいと言うのが、正直なところだ。
だがまさか、こんなにスンナリ話がいくとは思わなかった。
彼は心の中で、大きくガッツポーズをとる。
『娘よ、あの小僧はいつもああなのか?』
「えっとその・・・・ごくごくタマになら。」
彼の胸中は、完全に外へとさらけ出されていた。
傍目には、トチ狂った変人のようにしか見えない。
その光景を前に半ば呆れ調の仏像と、ルルアム。
当の本人は、それに気づく様子は全く無い。
これで良いのか、否か。
それは、誰にも分からなかった・・・
まだ、問題は山積みです。
道のりは、遠い・・・(イロイロ)




