表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オタクはチートを望まない  作者: 福島 まゆ
第10章・鉄道の前に
232/361

第220話・ルルアムの感謝

同時に進めている作品の早期完結のため、一旦、当該作品の更新を休止します。

休止期間は定かではありませんが、遅くとも年明けには再開の見通しです。

皆様には大変、ご迷惑をおかけしますが、何卒よろしくお願いいたします。

現在、俺の周りには様々な問題の壁が立ちはだかっている。

その内の一つが、『ベアル=王都』間の鉄道建設である。

その中でも特に、『魔石の不足』が、目下の問題となっている状態だ。


機関車を動かすのには、多くの魔石が必要となる。

しかし魔石というのは高価で、作ろうにもその量は、限られたものとなる。

どうにかしなければ、もしレールを敷けても走らせる列車が居ない、何て事にもなりかねない。

だがコレに関しては、既にアタリをつけている。

俺は何も考えなしに、鉄道建設予定ルートを考えて、話を進めていたわけではない。


「ルルアム、おっさん達が言っていた『石神様いわがみさま』って言うのは、どういう神様だっけ?」


「は・・はい! 私は土地の神様であると、聞き及んでおりますが・・・」


「そっか、うんうん。」


ルルアムの返答に満足そうにうなづくカイト。

そう、あの仏像はどうやら、土地に関する神様らしいのだ。

住民たちが口をそろえて言っていることなので、まず間違いは無い。

ならばもしかしたら、問題の『魔石』を作ってくれないか・・・

そんな事を、考えているのだ。

ちなみに本当にそれが、出来るかどうかはわからない。

つまりカイトの言う『アタリづけ』は、偶像もいいところのものである。

やはりカイトの行動はおおむね、考えなしのようだ。


そんな事を知る由も無く、ルルアムは彼へ、微笑ほほえみを浮かべた。


「ん、ルルアム、俺の顔に何かついてる?」


顔を覗きこむように視線を向けてくるルルアムに、戸惑うカイト。

不安から、ペタペタと顔を触る。

そんな彼にさらに笑みを浮かべつつ、かぶりを振る彼女。


「いいえカイト様、私はあなた様に感謝しているのです。」


「え、感謝?」


俺は何か、彼女を喜ばせるような事をしただろうか?

う~~ん、

俺ってばそういうのには、本当にうといからな。

他人ひとの考えている事って、そうそう分かるものじゃないしね。


「カイト様、私の体を大切にしてくださり、誠にありがとうございました。 私は幸せ者でございます。」


「ああ、そういう事。」


屈託のない笑顔を向けてくるルルアムに、何となく彼女の言わんとしていることを理解したカイト。

一連の『入れ替わり』に責任を感じていたカイトは、せめてもの償いと、彼女の体を丁重に扱ったのだ。

簡単に言えば、いたんでいた髪や肌などの手入れをした。

彼女はそれを、喜んでいるようだ。

やはり彼女は、一人の女性なんだなーと思う。

もちろん、ルルアムの体の手入れを実際にしたのは、アリアやメイドさん達なのだが。


「この服も・・・アリア様のコーデですか?」


「よく分かったね。」


彼女がクルッと一回転すると、大きな黒いスカートがフワッと広がる。

彼女が着ているのは、動きやすく機能的な、それで居て品の高い黒を基調としたドレス。

なかなかいいチョイスだが、彼女は何を狙ってこれを選んだのだろうか?

こうして傍から見るとルルアムに、実によく似合っていると感じる。

ここへ来る前にアリアに、この服へ着替えさせられたのだ。

彼女からルルアムへの、プレゼントと考えて良いだろう。

ルルアムが嬉しそうにしてくれて、こちらも嬉しい限りだ。


「なあルルアム、頼みがあるんだけど・・・」


「は、はい! カイト様のお頼みとあらばこの私、命をも差し出します!!」


ルルアムはたたずまいを正し、一転して真剣な表情を向けてくる。

だが言う事が、ちょっと大げさ過ぎる。

俺はルルアムに幸せになってもらいたいと考えている、命なんか全然いらない。


「ははは、頼みって言うのは、そんな大した事じゃないよ。 いつかでいいから、ルルアムにはアリアに、会ってもらいたいんだ。」


「あ、アリア様と・・でございますか? しかし私は・・・」


驚きと共に、困惑の表情を浮かべるルルアム。

彼女がかねてから、アリアに会いたいということは話しているのを何度かは聞いた。

しかし彼女には、懸念事項があったのだ。

『暗殺しようとした従妹いとこに、どう顔向けしたものか』と。

怖がったり心を乱さないか、それが心配のようなのだ。

その不安は、的を得ている。

事実、入れ替わった俺がアリアの前に姿を出した途端、剣を向けられたし。


「アリアがさ、会いたいって言っているんだよ。 もちろんルルアムさえよければ、だけど・・・・」


もちろん、強制ではない。

いや、これは強制してはいけない事だ。

これは、アリアとルルアム二人だけの問題であり、俺は第三者でしかないのだから。

他人が指図して二人が会っても、きっと良い結果は生まれないから・・・

だがルルアムは、俺の予想通りの答えを返してきた。


「・・・許されるとは、考えていません。 出来たわだかりも、心の傷も治せないかもしれません。 ですが許されるならば、アリア様にお会いしたいです! 拒絶されるかもしれませんがお会いして一言、謝罪の言葉だけでも・・・!!」


「・・大丈夫。 俺がなんとかするよ。」


アリアは『会いたい』と俺に言った。

面と向かって、間違いなく。

彼女は自分の言った事は、そうそう曲げない。

きっとルルアムの話は、聞いてくれるだろうと思う。


もし万が一、前のように彼女が取り乱せば、俺が止めに入るし。

だからきっと、大丈夫さ。


アリアは、ルルアムをグレーツクの国王だと、思い込んでいます。

国王は、領地の視察などで、頻繁に動き回る事が考えられます。

他にもアリアにはある、思惑があったようで・・・

だから彼女は、『動きやすい、質素なドレス』というものをチョイスしました。

カイトはそんな事、知る由もありませんが。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ