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オタクはチートを望まない  作者: 福島 まゆ
第10章・鉄道の前に
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第217話・摩訶不思議

これからも、頑張っていきます。

感想などがありましたら、どんどんお寄せ下さい!

仏像との戦いで、半月ほど前にルルアムと入れ替わったカイト。

その弊害で彼は今、体内魔力が不安定となっており、体を思うように動かせなくなっている。

その介護(?)のため、カイトの周りにはノゾミ、ヒカリ、アリアに緊急時のため控えているメイドさんなど、多くの女性に囲まれていた。

それもかなり、キレイどころの。

この先彼に、暗殺の手が及ばぬかが、実に心配である。


「カイト様、お仕事の時間でございます。」


「え・・・今?」


アリアの突然の言葉に、驚きを隠せないカイト。

俺は今、前述のとおり体をうまく動かせない。

仕事と言われても、出来る事は無いに等しいのだが。

そんな事を考えていると、ベッドから腰を上げただけの状態の彼の前に、アリアは一枚の地図を広げた。

この近辺の地図のようだ。


「今は一刻の猶予ゆうよもございません。 そのままで結構ですので、ご一緒に考えてはもらえないでしょうか?」


「ああ、そういう事。」


「ん、お兄ちゃん何コレ?」

「面白そう、私も混ぜて!!」


俺達二人の会話に、物珍しそうにノゾミとヒカリが食らいついてくる。

一気にベッドが狭くなり、転げ落ちそうになるのを必死で、踏みとどまるカイト。

アリアはどうやら『王都への鉄道建設』に関する事を、話したいようだった。

これならば、カイトが体を動かせなくても、問題は無い。

敏腕な彼女も、鉄道は専門外だったので、よくカイトにこうして、相談に来るのだ。

立場がどうも、逆なような気がしてならない箇所が多く見受けられるが、今さら気にする事でもなかろう。


「ベアル領と王都の間に鉄道か・・・嬉しいけど難しそうだよね。」


「申し訳ございませんカイト様、あの時、私がもう少し知識を有していれば・・・」


「俺が悪いんだから、アリアは気にする事ないよ。」


アリアが気にしているのは、国王様からの『鉄道を作ってほしい』という言葉に、俺に乗るよう強くした事。

彼女は事情を何も知らない自分のせいで、このような事態になってしまったのだと、とても気にしているようだった。

たぶん、彼女が推していなくても俺は、独断で二つ返事をしていたろうから、この件はアリアにはそもそもの話、まったく関係が無い。

・・・・と、彼女に言っても何も変わらないのだろうな。


「これはこの領地、全体の問題だよ。 王様たっての願いでもあるんだし、頑張らなくちゃ。」


「・・・そうですわね。」


え・・いま、アリアが笑わなかった?

俺は今、なにかヤバい地雷でも踏んだだろうか?

アリアが笑う場合、それは良い事よりも悪い事によるものがはるかに多い。

主に俺がバカをやったり、ポカをしたり、何度か死んだり。

彼女は怒ると、顔が引きつって微笑ほほえみを浮かべたように見えるのだ。

それはまさに、『修羅の微笑』

冷や汗が、全身を流れるカイト。


「お兄ちゃん、顔色悪いよ?」

「大丈夫!? 死なない!??」


「だいじょうぶ大丈夫! ほら元気!!」


ノゾミとヒカリが、俺の顔を覗き込んで来る。

心境に乗じて、顔色が悪くなってしまっていたようだ。

あとで、汗も拭いておこう。

ベッドの上でガッツポーズを取り、おのれの健康をアピールするド級に失礼なカイト。

当然アリアは、そんなつもりで彼に笑顔を向けたわけではない。

彼の心中を知ったら、彼女は怒るか落ち込むか、する事だろう。

アリアが感づかず、命拾いしたようだ。

お互いに。


「さてアリア、話を続けようか?」


「・・・大丈夫でございますか? お体の調子が優れないのであれば、明日でも・・・」


「大丈夫だよ、ちょっと悪寒が・・ゲフンゲフン! 何でもない。」


「?」


危うく、自爆するところだった。

まさに、危機一髪である。

それとヒカリ、俺は別に風邪をひいたわけでは無いから、タオルを額にのせようとしてくれなくて平気だよ。

ノゾミも悲壮な表情を浮かべないで、俺は死なないから。


「鉄道は山を登れないのでしたね? それですと谷を通すより他に手は・・・」


「ああ、うん。 それなんだけど考えてはみたんだけどさ、どうしてもカーブがきつくなったりして、鉄道が曲がれそうに無いんだ。」


川沿いにのみ鉄道を通そうとすると、どうしてもカーブがきつくなる傾向になりがちだ。

カーブがきついと、鉄道は速度が出せなくなる。

ひどい場合だと、曲がる事すらできない。

そもそも山脈の川沿いは崖のような場所が多く、レールを敷けるようなルートを見出みいだすのは、容易な事ではないだろう。

そもそも大雨などで川が増水した際、そんなところに鉄道を敷いていては、その都度、修復しなければならなくなる恐れがある。

それでは、キリが無い。

そこで俺は考えた。

『何も、バルアを通るルートでなくても良いんじゃなかろうか』と。


「ここ、ベアル領の北の山脈は、比較的だけど傾斜も緩やかそうな場所があるよね。 ここを通したらと思って。」


俺が指差したのは、ビルバス山脈の中ほど。 

この地から見て、北に位置する場所だ。

地図を見ると、どうも傾斜が緩やかな部分があるように、見受けられるのだ。

ここならそのまま通しても、たぶん鉄道が登れる。

カイトは、そう踏んだのだった。

だが根本的な問題が、そこにはあった。


「ここは・・・カイト様、この近辺は魔王が支配する、魔族領ですわ。 もし少しでもおかせば・・・」


現在、この世界には魔族とそれ以外が、いがみあって存在している。

少し前の天災で魔族領で甚大な被害があったらしく、今は一方的な『休戦協定』でにわか平和が続いている状態だ。

その中に、『不可侵』の文言もんごんもある。

もし鉄道敷設の最中に、少しでも領地を侵せば、この平和の均衡きんこうは、すぐにでも崩れ去るだろう。

もしそうなれば、魔族領にほど近いベアル領も、タダではすまない。

アリアは、それを大いに懸念材料とした。


「大丈夫だよアリア。 1ミリだって侵したりはしないよ! 俺とダリアさんの測量技術を、信じなさい!!」


「・・・・・。」


胸を張るカイトに、何も言い返せなくなるアリア。

正直、不安でしかないのだが、ここで代案などを持ち合わせていない自分には、何を言っても説得力が無い。

彼に反論など、出来ようはずが無かった。


こうしてアリアの懸念は、この世界の常識をまるで知らないバカイトによって、払拭ふっしょくされてしまった。

世界の運命は、一人の領主様にゆだねられる形となる。

なぜ、鉄道を建設するだけだと言うのに、こんな身の毛もよだつような事になるのか。

実に不思議でならない。

問題だらけです。

なかなか話も進みません・・・

イロイロ起こり過ぎて。

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