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オタクはチートを望まない  作者: 福島 まゆ
第10章・鉄道の前に
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第216話・ありがとう

これからも、頑張っていきます。

感想などがありましたら、どんどんお寄せ下さい!

「お兄ちゃん、あーん。」


「あ、あーん・・・」


地球に居た頃、妄想好きの友達が夢見ていたシチュエーション。

カイトは今、まさにそれをされていた。

美女に食事を「あーん」である。

まあ、してくれているのは見た目幼女の、ヒカリだけどね。

あと何十年かすれば、彼女も大きくなるのだろうか?


「お兄ちゃん、おいしい?」


「ああ、うまい。」


ぜいたくカイトは、口をもごもごさせながら笑顔を作る。

それに満足したように、同じく彼へ笑顔を返すヒカリ。

彼が倒れて、約数時間。

魔力不安定で体の制御が利かないという事態に陥ったカイトは、ベッドにルルアムのその体を横たえていた。

体をうまく動かせない彼は、食事を取ることも難しかった。

そこで、冒頭の『あーん』である。

ここまで来るとカイトが、誰かに刺されはしまいか、心配なレベルだ。


「あぅぐ・・・!」


「飲み物が欲しいの? 私が取るよ、はい。」


「ああ、ありがとうヒカリ。」


コップに入った水を、ヒカリに飲ませてもらう。

俺は今、コップ一杯の水を飲むのすら難儀する。

体を動かそうとすると、ビリッと体に電撃が走ったような感じになり、それ以上動かせなくなる。

一連の『入れ替わり』により、こうなってしまったと言うのはダリアさんの弁だ。

そのダリアさんには、今はグレーツクへ行ってもらっている。

俺がこれなら、同じ境遇のルルアムも・・・との懸念から、様子を見に行ってもらったのだ。

・・・杞憂きゆうに終ればいいのだが。


「お兄ちゃん気分が悪いの? 気絶させてあげようか??」


「・・・いや、大丈夫だ。 特に気分は悪くないよ。」


心配してくれるのはありがたいが、『気絶』はよろしくない。

ヒカリの言う『気絶をさせるための行為』は、今の体で受けると即死必須である。

ここではやんわり断ることが、大事である。

彼女の優しい心を踏みにじらぬために、何よりこの境遇で、間違えて死なないために。

その時、外から大きな音が聞こえはじめた。


ドッドドドド!!!!


「じ、地震か!??」


突如として揺れ出した屋敷。

地響きのような音は徐々に近づき、揺れも大きくなる。

不安そうな表情を浮かべるヒカリ。


「お兄ちゃん・・・!」


「ヒカリ、危険だこっちに来い!!」


とっさにベッドの中へ、彼女を引きずりいれるカイト。

そうして、やってくるであろう『本震』に、身構えていると・・・・


ドカーーーーーーーーーーーン!!!


「「!!????」」


廊下へとつながる木製の大きな扉が吹き飛び、粉々になる。

それと共に、先ほどまでの地響きや地面の揺れは、鳴りを潜める。

地震では、無かったらしい。

粉々になったドアの向こうは廊下の石材が削れたのだろうか、土煙が舞う。

その向こう側には、はっきりと人影が見えた。

そこに姿を現したのは・・・


「カイトが死んじゃったって本当!? うそでしょ、ねえ???」


「の、ノゾミ!?」

「ノゾミおねえちゃん・・・」


嗚咽混おえつまじりに、部屋へ突入してきたのは他でもない、ノゾミだった。

俺が倒れたと誰かに聞いたのを曲解して、俺が死んだとでも思ったのだろう。

いつになく真剣な表情と、大粒の涙を流すその姿が、なんとも切羽詰っている。

・・ま、俺はこうして、生きているわけだが。

彼女もすぐにそれは分かったようで、呆けた表情をこちらへ向けてくる。


「あれ・・・カイトが・・・生きてた・・・・うわああああああああああああああ!!!」


「ま、待てノゾミ! その勢いで来られたら・・ぎゃああああああああああ!!!!」

「おにいちゃ・・」

ドガーーーーーーーーーーーン!!!!!


うれし涙を流しながら目一杯の笑顔混じりに、全力で突っ込んできたノゾミの勢いそのままに、カイトはベッドごと壁へと吹き飛ばされた。

それをかばおうとしたヒカリもしかり・・・

彼らがどうなったかは、予想に難くは無いだろう。



◇◇◇



「ノゾミ、カイト様は今、お疲れなのです。 騒がしくしてはなりません。」


「うん・・カイト、ごめんね? ヒカリちゃんも。」


「・・・・・・いや、大事にならなくて何よりだよ。」

「私も大丈夫だよ?」


突如響いた屋敷を揺らした大きな音に、現場であるカイトの私室へと向かったアリア。

最初に彼女の目に飛び込んできたのは、派手に破壊された部屋の姿だった。

その後すぐ、犯人であるノゾミは、叱責を受けた。

ちなみに当のカイトは、気絶はしたものの、体のほうは無傷だった。

ヒカリがとっさにかばってくれたおかげで、だいぶ衝撃が緩和されたらしい。

もしあのまま、ノゾミの突撃を受けていたら今頃、俺は駄女神さまの下にあっただろう。

カイト、相変わらず悪運は強かった。


「カイトが死んだって聞いて、飛んできたの。 良かった、死んでなくて。」


危なく、死に掛けたけどね。

アリアはため息混じりに、ノゾミへ質問をする。


「・・・それは誰からの情報なんですの?」


「ん、ダリアさん。」


アリアの質問に、あっけからんと答えるノゾミ。

それを聞き、額に手をのせ、大きくため息をつくアリア。

きっと彼女の事だ。

『カイト殿様が、ぶっ倒れました』とだけ、ノゾミに言ったのだろう。

たぶんわざと。

理由は、面白い事になりそうだから。

こういうジョークは、命に関わるので本当に、止めてほしい。

・・言ってどうにかなるとは、到底思えないけど。


「お兄ちゃん、かばえきれなくてゴメンね? 怪我はない??」


「ああ、大丈夫だよ。 それにヒカリは、十分俺をかばってくれてたさ。」


「カイト、私も傍に居ていい!? 体が動かせないんでしょ??」


「お、おう。」


俺の心配をしてくれるヒカリ。

ヒカリだって、そこそこ痛かったろうに。

そんな彼女に張り合うようにノゾミが、ズイッと体をこちらへ寄せてきた。

なんだか微笑ほほえましい光景だ。


「カイト様、あなたをお一人にしてはならないと、よく分かりましたわ。 私もお傍におります。 よろしいですね?」


「お、おう?」


あれ、もしかしてアリアも張り合っている?

いやさすがに、それはないか。

俺が変なことをしないか、監視につくという事だろう。

それでもいい。

なんだか最近、悪い事ばかりだったけど、こうして優しくされると、とても幸せな気持ちになる。


この場を借りて、『ありがとう』と言いたい。

なんだか恥ずかしいので、ここだけの話にはなるけど。




その後、ダリアさんもグレーツクから帰ってきたので、彼女もこの列に加わった。

こちらは探究心で、だけどね。

報告ではルルアムはまだ、大丈夫なようだった。

だが大事をとって、休ませる事になったらしい。

おっさん達の取り計らいだろうな。

心配が杞憂に終ったようで、よかった、よかった。


話の進みが、ヤバイほど遅いです。

溜まってる分を書くだけで、一体どれだけの期間が掛かる事やら・・・

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