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オタクはチートを望まない  作者: 福島 まゆ
第9章 次のステージへ・・・
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第212話・王都観光 リベンジ編?

土曜日は、更新が滞りがちですね・・・

来週もそうなってしまうかもしれません。

ご了承下さい。

「そうして、バルアまでの延伸も国王様に認められて、現在に至るんだ。」


「・・・・あ、話は終わりましたか??」

俺の長話に飽きたらしいダリアさんは、ホッと安堵のため息をつく。

こちとら頑張って分かりやすいように順を追って説明したと言うのに、この態度。

聞きたそうにしていたのはどこのドイツだよ!??

まったくこのヒトは~~~!!!

ってよく見たら、後ろに居るヒカリも立ちながら寝てるし。

ちなみに俺に掛かっている魔法は、解けていないようだ。

イロイロ器用だな、おい!

ま、まあ良い。


「そんなわけで今すぐ、ベアルに帰らないといけない。 ダリアさん、また転移を頼むよ。」


地図などを広げたりして、建設予定などを考案していかなければならない。

そのためにも、なるべく早くベアルへ帰ることが望まれる。

だがここまで言ったところで、当のダリアさんは複雑な表情を浮かべる。

何か、不都合な事でもあるのだろうか??


「あのカイト殿様、今日の『転移の術発動』は、私には不可能でございますが?」


「え゛、なんで!?」


ダリアさんからの思いがけない一言に、度肝を抜かれるカイト。

頭に大量の疑問符を浮かべるカイトに、状況を理解したらしいアリアが、補足説明を行った。


「カイト様、私は前に『転移魔法は、一人での発動は不可能である』と聞き及んだ事がありますわ。 きっと、彼女は『魔力切れ』を起こしたのでしょう。」


「・・・・マジで?」


「さすがは、奥様でございます。」


アリアの説明に、礼をするダリアさん。

そうなのだ。

能力バカなカイトが息をするみたいにホイホイ使ってるので忘れられがちだが、『転移』という魔法は、非常に高度で魔力を多く消費する術なのだ。

しかも転移するのは、発動させるダリアさん本人を含めて4人。

それだけ負担も多く、魔力消費は激しい。

つまるところ、今日の朝一回、ベアルから王都まで転移をしたダリアさんは、今日の転移魔法の行使は不可能らしかった。

『魔力切れ』

この状態で無理に魔法を行使すると、最悪、死に至ることもあるのだ。

いくら、ダリアさんでも。


「明日になれば、治るって事?」


「正確には『回復』でございます。 今日、休めば明日には転移が可能です。」


「マジか~~~・・・!」


ダリアさんの説明は、簡潔だった。

ようするに今日中には、ベアルには帰れないらしい。

だからと言って、馬車を手配するわけには行くまい。

どうせ今日一日、どうにかすれば明日には、ダリアさんの魔力枯渇も治り、転移でベアルへ帰れるのだから。

・・・・・・・それまで、どうしよう?

予想外の展開に、ノープランのカイトは立ち尽くすことしか出来なかった。

他の3人が、そうであるとは限らないのだが。


「お兄ちゃん、外に森があったでしょ!? 私、狩りがしたい!!」


「いいえカイト殿様、この人間の街に私、大変興味を持ちました。 ぜひ30周ほど!!」


「いけませんわカイト様! ここは一度、王宮へと戻り明日に備えた準備をいたしましょう。 するべき事は、山ほどございますわ!!」


「待ってくれ、いっぺんに言われても分からん!!」


そろいもそろって、全く違う事を言ってこないでくれ。

見事なまでに、全員の主張がバラバラだ。

しかもどれにしても、互いの両立は困難なものばかり。

困ったぞ、どうしようか?

今のメンツは、主張の強い者ばかりなので、誰かの主張を採用しても、後々がすごく怖い。

弱ったな~~・・・


そのとき、ある音が彼らの沈黙を破った。


くきゅうぅぅうぅ~~~・・・・


「「「「・・・・・・・。」」」」


・・・今、誰かのお腹が鳴らなかったか?

それもかなり、可愛らしい音であった。

ちなみに俺のではない。

まずはヒカリに視線を向けるが、首を横に振る。

彼女ではない・・・と。

次にダリアさんは・・・・無表情。

お腹の音なんか、どこ吹く風だ。

現在のメンツは4人。

この中から消去法で行くと、つまり今の音の主は・・・・


「・・・・。」


俺たち3人の視線が、一斉にアリアへと向く。

そのアリアは、リンゴのように顔を真っ赤にして、お腹の辺りを押さえている。

顔は下に向き、表情まではうかがい知れない。

いや、うかがい知ってはいけない気がした。

とりあえずのところ、行く場所は決定した感じだ。


「・・・・メシでも食いに行こうか?」


「・・・・左様でございますね。」


「そういえば、お腹すいたー!」


「・・・・。」


満場一致の、意見であった。



◇◇◇



「カイト殿様、どちらへ向かわれるのですか?」


「ふふ~ん、『炎弧亭』っていってさ、うまくて安い料理屋があるんだよ。 そこに向かっているんだ。」


今向かっているのは冒険者時代、王都に着いたときにノゾミと入った、思い出の料理屋だ。

このお店は品数が多く、実のところ心残りがあった。

今回はあのときの、リベンジだ!!

今日は、食うぞ~~!!


カイトは自分がルルアムの体である事など、すっかり忘れていた。

これで太ったら、はっきり言って土下座では済まない。

倫理的に。

まあその時は、ボルタの海にでもダイブしてクザーラのえさにでもなって頂くとしよう。


「しかしこのルートですと、王都の奴隷市を横切る形になってしまいますね・・・」


「・・・・そうなんだ。 まあ、パパッと突っ切っちゃえばいいさ!!」


カイトが歩む方向に対し、そんな事を言ってくるアリア。

『奴隷』と聞いて、彼女もあまり良い感情は浮かばないようだ。

俺も当然。

だが別に通ったからといって、どうにかなるものでもあるまい。

急ぎ足でさっさと通り抜ければいいのさ。

カイト達はそのまま、王都の奴隷市の一角を、横切る事にするのだった・・・・



その頃。

同じく王都の奴隷市の一角。

ここに一つの奴隷を取り扱う商店があった。

表向きは、国から許可をもらった模範的な奴隷商店。

しかし裏では、誘拐や身売りなどで手に入れた、非合法ルートの奴隷をも取り扱う商店であった。

もちろん、この辺り一帯の防犯などを一手に担う王都の警備兵団が、それを知らないわけが無い。

しかしこの商店を検挙すれば、芋づる式に他の多くの商店も検挙しなければならなくなる。

そうなれば、王都の経済はとどこおる。

いわば、暗黙の了解事となっているわけだ。


「ボルタの『バルア商会』? そこから奴隷の大量発注の打診が来ているのか?」


「はい、それも『非正規品』ばかりを大量に寄越すようにと・・・・」


彼らが居るのは、奴隷達を収監している檻のある部屋。

昼でも日当たりは悪く、高温多湿が日常で、居心地の良い場所ではない。

それに加えて部下が持ってきた、あまりに胡散臭うさんくさい話に顔をゆがめる男。


「・・・聞いた事の無い商会だ。 発注品目も、おかしすぎる。」


「はい、しかし不良在庫の一掃に、ちょうど良いかと・・・・」


「ふむ・・・・」


不良在庫とは、全く売れない奴隷達の事である。

人気が無かったり、素行が悪かったり、病気や障害があったりなど・・・

『非正規品』のくくりはあいまいなところも多いので、在庫の一掃には好都合な話ではあった。

だが何分、話が胡散臭すぎる。


「内容や契約要項などをよく読み、吟味ぎんみした上で判断する。 後で私の部屋へ、一連の書類をもってこい。」


「了解しました。」


それだけ言うと、商会頭はこの部屋を退室していった。

それを一礼した体制で見送る男。

商会頭が出て行くのを見計らって、男は横にある一つのおりへと視線を向けた。


「良かったなお前もよ。 ようやく『行き先』が見つかりそうなんだぜ、嬉しいだろう??」


「・・・・・・。」


声をかけられた檻の中の少女は、興味が無いのか、全く反応を示さない。

その体は真っ黒に汚れ、着衣もボロボロだ。

首や手足には、『奴隷』の証であるかせがはめられている。

世界に絶望したかのように、その整った顔からは、生気は感じられない。


「ちっ! 少しはこびぐらい売ってくれりゃ、優良物件だったってのによ。 こっちはお前のせいで大損こくんだぜ、まったく!!」


吐き捨てるように少女へそう言い放つと、彼も部屋をここを退室していった。

それをうつろな目で、見送る少女。

その後ろの腰の辺りからは、ふわふわした灰色の尻尾のようなものが、生えているのが見える。

頭部からは、灰色のピンと立った犬のような耳が見え隠れしていた。

彼女はどうやら、獣人の奴隷のようである。


この少女、初登場ではありません。

第113話の後の『閑話・バルカン転落』で登場しています。

いつの間にか、バルアから王都へと移送されていた様子。

しかもまだ、売れ残っていたようですね。

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