第210話・ダリアさんの受難?
これからも、頑張っていきます。
感想などがありましたら、どんどんお寄せ下さい!
今、俺達はアーバン法国の王都、アルレーナの中心にある王宮に居る。
国王様に、どういうわけか突然に、お呼び出しを賜ったのだ。
俺は今、魔法が使えないので、ここまではダリアさんに転移で送ってもらった。
ちなみに彼女は、王宮内には居ない。
『街の方が楽しそう』とかで、付いて来なかったのだ。
ダリアさん、いつも通りのマイペース。
そういう訳で今は、王宮の『玉座の間』で国王様と王妃様に謁見中だ。
さて、早速だが『呼ばれた理由』を聞かねば。
・・・グレーツクの話でありませんように。
「スズキ公よ、領内に何やら面白きものを作ったと聞いたのだが・・・・ミカナよ、あれはなんと言ったかの?」
「そう、あれは確か、『てつどう』と言いましたね?」
ん、鉄道?
鉄道がベアル=ボルタ間に開通したのが、今から約四ヶ月前。
国王様たちの耳に入っていても、なんら不思議ではなかった。
でもなぜ、ここでその話が上がるのか。
ちょっと不思議ではある。
「実はなスズキ公よ、その『てつどう』なるものをここ、王都へも是非、作っていただきたいのだ。 むろん土地の使用許可は下ろすし、費用も国で出そう。 どうかの?」
「「・・・え・・・・・・」」
予想だにしない国王様からの言葉に、カイトとアリアはしばし、茫然自失となってしまうのだった・・・・・
◇◇◇
王宮でひと悶着あっていた頃、ダリアさんは街で見聞を広げていた。
端的に言えば、ウインドウショッピングしていた。
ベアルとはまた違い、ここにはダリアさんの探究心をくすぐるようなモノが、あふれていたのだ。
カイト殿様に付き従って、王宮へ行っている場合では無かった。
「嬢ちゃん、どこかのお屋敷のお使いかい? ならウチに寄っていきなよ、品揃えは王都一番だし、品質だって他よりは高い自信があるぜ?」
「・・・・ふうん?」
先ほどからわずらわしいのが、たびたび私を呼び止めてくるこの客引き。
これで声をかけてくるのは、何人目だろうか?
メイド服を着ているので、彼らには私が、どのかの屋敷の使いの者に見えているようだ。
正直、面倒くさい。
この手の奴らは、しつこいのだ。
そして割と、大した店でない事も多い。
今回のこの店もそうだ。
看板には『王都一青果店』と書かれている。
他の客の出入りなどは、まずまずのようだ。
品揃えもまあまあ多いほうか、だが品質は最悪。
はっきり言ってベアル近郊の農家が作っているものの方がずっと、いいものがあると言える。
せめて私を引き止めるなら、うまい物で引いて欲しい。
見るだけ時間の無駄だ、客引きはよそでやってくれ。
「おいおい嬢ちゃん、何も無視しなくても良いだろう!?? ここの野菜は天下一品だよ!? 買って行けばご主人様も、大喜びだぜ!?」
はあ、ご主人様? カイト殿様が??
ブフッ!
笑わせないで欲しい。
彼は私と同等の存在とは考えているが、それ以上でもそれ以下でもない。
カイト殿様の口を借りるとすれば、彼と私の関係は『トモダチ』。
彼と一緒に居ると、退屈しないので、彼が死ぬまで傍を離れないだけだ。
今『メイド』をやっているのも、その一環である。
あとそんな低ランクの野菜を見せたら、厨房のシェフに叱られる。
責任を取らされて食わされるのは、私のほうなのだ。
勘弁して欲しい。
「これはこれは、お勤めご苦労様です。 私は急いでいるので、客引きならば他を当たってください。」
クレア様直伝の『オブラートな撃退法』を実践。
ここでは相手にきちんと向き直り、笑顔を作ってナナメ45度に腰から上を曲げるのがポイントです。
背筋をピンと伸ばすと、よりキレイに見えるのだとか。
クレア様からは屋敷人のプライドとして、平和的解決が、最も難しく、そして尊いのだと教わりました。
私はまだまだですね。
こんな人間を見ると、ブレスを吐いてキレイサッパリにしたくなる衝動に駆られてしまうので。
「このヤロウ、なんだその、ナメた口の利き方は!? こんな子供の躾すらなっちゃいねえようだな、お前のところの屋敷は!!」
あなたこそ、なんですか。
こちらが下手に出ていれば、その手のひら返したように激昂して。
ちょっとイラッとしました。
平和的解決は、この男は望んでいないようです。
ならば応えてあげましょう。
こんな奴のために本性を現すまでもなさそうなので、魔法で炭にでもなってもらいますか。
早く片付けて、見聞を広げなくては。
まだ王都の半分しか、見て回っていませんからね。
「な、なんだよ嬢ちゃん・・・いきなりそんな怖い顔して・・・」
フフ・・・にらんでいた通り、いえそれ以上の小者ですね。
私がちょっと殺意を向けただけでこの慌てよう・・・・
相手をするのすら、馬鹿馬鹿しい。
せいぜい一瞬で、消してしまうとしましょう。
そして地獄で自分の愚かさを、呪えばいい。
「『立てよ焔の・・』!!」
「はいダリアさん、ストップ!」
「へ?」
とつじょ背後から肩を叩かれたダリアさんは、動揺し、魔法詠唱を途中で止めた。
これにより練りあがり、集積していた膨大な量の魔素が、行き場を失う形となる。
つまり。
ボカーーーーーーーーーーーーンンンン!!!!!
「ぎゃああああああ!!!!! 俺の店がーーーーーーー!!?????」
近くにあった『王都一青果店』は、突如発生した焔の柱により、一瞬にして焼滅した。
中に客が誰も居なかったのが、不幸中の幸い。
だが客引きをやっていただけの、青果店の店主は、悪夢を見ているようだった。
なにせある日突然、自分の店が無くなってしまったのだから。
「これはカイト殿様がた・・・・もう『国王謁見』は、終了したのですか?」
「まあね、それより何があったの?」
後ろで起こる火災に目もくれず、ダリアさんは背後の肩を叩いてきた張本人、
カイトに向き直り、たたずまいを正した。
後ろの惨状など、ガン無視だ。
さすがはダリアさん、ド級のマイペースだった。
笑顔を取り繕いながらも内心、彼女は残念で仕方なかった。
これほどまで、彼らが早く戻ってくるとは思わなかった。
これにて、私の『見聞を広める旅』は終了のよう。
残念。
客引きに捕まらなければ今頃は・・・・・・
正直、もう少しイロイロ見て回りたかったです。
でも楽しい事もあったので、良しとしますか。
歩く災害・・
それがダリアさん。
でも前とは違い、こちらから手出ししなければ、彼女は何もしてはきません。




