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オタクはチートを望まない  作者: 福島 まゆ
第9章 次のステージへ・・・
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第204話・召喚命令

これからも、頑張っていきます。

感想などがありましたら、どんどんお寄せ下さい!

「遅いですわカイト様!! 一体今まで、どちらで何をしていらっしゃったのですか!?」


「ご・・・ごめん! 用事がちょっと長引いたんだ!?」


玄関のドアを開けて早々、嫁のアリアがお怒り気味で迎えてくれた。

『お帰りなさい』のただの一言もなく。

こっちも『ただいま』を言うヒマすらなかった。

この彼女の剣幕にヒカリも驚いてしまい、一瞬、幻惑の魔法が解けかけてしまう。

カイトの体が、零コンマ一秒レベルでバグる。

さすがに、誰も気がつく事は無かったようだが。

序盤から既に、綱渡り状態である。

いや本当に、危機一髪だったぜ・・・

あとに求められるのは、『平常』をよそおう事だけだ。

気を引き締めねばならない。


「それはお忙しい中のお呼び出し、申し訳ございませんでした。 こちらも急なしらせでございまして・・・」


「王宮から何か来たんだって? こっちの用事はどうとでもなるから、心配はらないよ。」


気にした様子のアリアに、問題ないと伝えるカイト。

王宮から手紙が来た事は聞いていたが、何があったのかは聞いていない。

まずはそれが、気になる。

・・・入れ替わっているので、その事が問題となってしまうような用件でない事を、切なに願う。


「届きました勅状は、あとでお部屋へお持ちいたしますわ。 カイト様は私室のほうで一度、お休みになられて下さいませ。 ・・・・少し、込み入った話になりそうですので。」


「そ・・・・っか。 うん、分かった。 着替えでもしているよ。」


今、彼女の目が光った気がしたような・・・?

・・・気のせいかな??

事件以降、ちょっと過敏になりすぎかもしれない。

アリアの言うとおり、ここは部屋で少しでも休養を取っておいたほうがよさそうだ。

変に挙動不審になると、それこそボロが出てしまう。

ここは『平常』に、そして『普通』に・・・・


「ヒカリ、グレーツクはどうでしたか? 何も起きたりはしませんでしたか??」


「え!?? な、何もないよ!!」


目を細め、中腰になって質問をするアリア。

挙動不審に両手をワタワタさせ、アリアの質問に受け答えるヒカリ。

彼女の全身から、『平常』でも、『普通』でもないことが手にとるように分かる気がする。

彼女の一挙手一投足、すべてがヒヤヒヤする。

分かってはいたが、腹芸やポーカーフェイスは、彼女には不可能な事のようだ。


「そうですか・・・ならばいいのですが?」


「!?」


目をより一層細め、こちらに氷のような冷気を放ってきた(気がする)アリア。

背筋に悪寒が走り、体を震わせるカイト。

彼も、腹芸やポーカーフェイスは、苦手なようだ。


アリアに何も感づかれていない事を、神にでも願っておこう。

いや、もちろんあの、うっかり駄女神様ではなく・・・・ね?



◇◇◇



「カイト様、こちらが王宮から届きました勅状でございます。 詳しくは中をご覧くださいませ。」


「うん、ありがとう。」


ここは、ベアルの屋敷にある俺の私室。

俺はいつものごとく、木製の簡素な椅子に腰掛けている。

もちろんその後ろには、ヒカリが控えており、幻惑魔法を掛け続けてくれている。

傍からは、ただ立っている風にしか見えないが。

俺の机を挟んだ向こうにはアリアが立っており、俺に封書のようなものを差し出してくる。

まだ、封は切っていないようだった。

封のところに手を掛け、開けようとするカイト。

すると彼女が、ズイッと顔を寄せてきた。


「カイト様、勅状には一体なんと?」


「え、アリアは内容を知らないの?」


カイトの質問に、かぶりを振るアリア。

どうやら届いたのは俺宛の一通のみであったらしい。

てっきり、封書はもう一通ぐらいあって、アリアはすでにそれを読んでいるものと思っていた。

それだけ、重要な内容の代物らしい。

でもそれなら別に、俺のを開けて読んでくれても良かったのに。

いや・・・立場とか的にそういうのはできないとか、前に言っていたっけ??


「え~っと、なになに・・・『召喚命令書』?」


封筒から出てきたのは、ペラペラの紙一枚。

それに書かれている内容は、『用事があるので、すぐに王宮へ参上するように』と言う事だけ。

なんて事は無い。

いつものごとく転移で王都まで行って、サクッと用事を終わらせようではないか!

らくしょう、楽勝。

あーははっは、


あは・・・・

うそだろーーーーーーーーー!!????

No------------!!


カイトは心の中で絶叫した。

本当にタイミングが悪すぎる。

いや、なんとなく想像はついていたよ?

王様から『用事』があるらしいと聞いた時点で。

アリアが『すぐに帰れ』と言ってきた時点で。

でもそれは、ありえてほしくは無かった。

俺ってば本当に、運が悪い。

ヒカリを王宮内へ入れるなど、絶対に不可能であろう。

だが現状のルルアム姿で、王様に会うなど、まずい事しかない。

しかしこれは、王様からの『命令』。

『都合が悪いから今は無理です』などとはねつける事はできない。

対策など、ほとんど立てようも無いわけだ。


「カイト様、お顔の色が優れないようですが?」


「だ・・・大丈夫。 モンダイナイヨ?」


ルルアムごめん。

今、背中の汗がすごいかもしれない。

後で『クリーン』でキレイにしておくから、許しておくれ。


「『召喚命令』ですか・・・・カイト様、他に書状は無いのですか?」


「い・・・・いや、無いな・・・・」


『召喚命令書』が入っていた封筒を逆さにして、縦方向に大きく振ってみせるカイト。

ちなみに届いたのは、国王直々の『勅状』

これは国王そのものと言っても良い程、扱いは丁重ていちょうにしなければならない。

カイト、知らないとはいえ、扱いがぞんざい過ぎるぞ。

愚考を日常的に繰り返す、カイトのストッパー役を務めるアリアは、感覚をマヒさせえているので、彼に物申す事はしない。

しかしそれとは別件で、顔をうつむかせるアリア。


「そうですか・・・国王陛下らしいですわね。」


普通、こういった命令書と同封で、『議論される内容』などを知らせる書状が存在するのが一般的だ。

これによって召喚された者たちは、国王様からの『質問の答え』などをあらかじめ用意しておくのである。

その点、この国の国王はそれをしばしば、すっぽかす事があった。

他の貴族からは、よく苦情が出ている。

カイトは非常識な貴族なので、思うことなどは何もないが。


「分かりましたわ。 カイト様、すぐに王都へ向かうご支度を! もう一日が過ぎてしまっております!!」


「あ、ああ、そうだな・・・・」


どうしようか?

移動はダリアさんに連れて行ってもらうとして、ヒカリをどうするか・・・・

魔法は掛け続けてもらわないと困るし、でもそれまでダリアさんに頼むと、周りに不自然に思われてしまうし・・・

う~ん、う~ん・・・・


「カイト様、ご心配には及びませんわ。 私も付いていきます。」


そう言って、俺の肩に手を置いてくるアリア。

いつもなら、この上ないほど安心だ。

彼女は、俺が悩んでいる理由を、勘違いしたのだろうな。

しかし今は、それはそれで問題しかなかった。

俺が実はグレーツク国王という事と、ルルアムの姿だという、二重の意味で。

アリアが王宮へ付いて来れば、イロイロと確実にばれるような気がした。


「アリガトウ、ココロヅヨイヨ。」


「カイト様、なんだか言葉に、心がこもっておりませんわ。」


ここで、彼女に変に反対などをしては、怪しまれるだけである。

こういうのは、あらかじめ国王様などに言い含めておけば、問題は無い。

そう、バレさえしなければいいのだ。

バレなければ。


「・・・・・。」


「アリア、どうかした??」


アリアが先ほどまでとは打って変わり、腕を組んで仁王立ちする。

目つきも鋭くなり、まとうオーラも、一挙に黒くなった気がした。

急に一体、どうしたというのだろうか??

数回、頭を縦に振ると、重々しく彼女の口が開かれた。


「・・・カイト様、カイト様ではありませんね?」


「ええ!?」


ガタンと、座っていた椅子から勢いよく立ち上がる。

心が凍り付いていくような感覚が、俺の全身を襲う。

アリアから発せられた言葉の意味が分からず、俺はしばしの間、硬直してしまうのだった・・・


来年ぐらいから、更新頻度がガターッと落ちてしまうかもしれません。

悪しからず、ご了承ください。

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