第201話・こじれる一方で・・・
これからも、頑張っていきます。
感想などがありましたら、どんどんお寄せください!!
これからの行く末に絶望し、意気消沈しているカイト。
その彼(?)に、ダリアさんは続けざまに補足説明を行った。
「カイト様、ご心配には及びません。 この術は、徐々に自然の中へ霧散していく性質があるようです。」
「霧散?」
ダリアさんの彼らに掛けられた術の補足説明によると、この術は、自然消滅していくモノらしかった。
術が自然消滅すれば当然、この『入れ替わり』も解消される。
つまり放っておけば、その内なおるらしい。
今回掛けられた術式は高度で強力な反面、長続きするようなものではないようだった。
それを聞いてホッと、肩の荷が軽くなった気がする。
「ですがそれでも、この調子では治るまで、一月は掛かるでしょう。」
「一ヶ月も・・・・」
ダリアさんの『鑑定』による診断に、頭を抱えるカイト。
『自然消滅するなら、それまでこの街で身を隠していればいい』と言う考えは、見事に打ち砕かれた。
一応、どれだけの時間が掛かるか分からないので、カイトはアリアに『しばらく家を空ける』と言付けはしておいている。
だがそれでも、さすがに一ヶ月も屋敷を空けることはできないであろう。
もし空けたら、それはそれで後が怖い。
『何があったのか』と問い詰めれるのは、火を見るよりも明らかだ。
もう一度ダメ押しで、彼女に聞いてみることにする。
「ダリアさん、マジでどうにかならないかな? 俺は魔法が使えないんだ・・・」
地面に手をついて懇願するカイト。
ドラゴンの彼女なら、『ムリ』とは言ったものの、何か手段ぐらいなら知っているような気がしたのだ。
可能性があるのならば、それにかけたい気持ちはあった。
だが『そうではない』と、再び首を横に振るルルアム。
「カイト殿様、実はこの術は、今の私でも解くことは可能なのでございます。」
「そうなの!? なら・・・・」
期待に満ちた表情を浮かべるカイトに、またも首を横に振るダリアさん。
現状で、解くことができる。
では何が、ダメだというのだろうか??
「カイト殿様、お二方に掛けられた術は、魂までに作用する強力なものでございます。 これを私の魔法で無理やり引き剥がせば、最悪カイト殿様たちの魂は破壊されてしまうのです。 この意味は、お分かりですね?」
「・・・・・。」
魂が破壊される。
それはつまり、死ぬと言う事。
『存在する可能性』というのは、あまりにもハイリスクなモノだった。
いくら最強のカイトでも、魂が壊れては死んでしまうと、ダリアさんも判断したのだろう。
そもそも何もしなくても『一ヶ月たてば治るのだから』ダリアさんはカイトに、否定の言葉を述べたのだ。
どうせ短期間で治ると分かっているのに、命がけで無理に行使しても危険なだけである。
だがそれでは、問題が残る。
今のカイトの姿は、紛れもなくルルアムのものだ。
このまま屋敷へ帰ることは、当然出来ない。
アリアの心には、傷がある。
このままの姿で出会ってしまえば、それを抉ってしまう事につながるだろう。
それだけは、なんとしてでも、避けたい。
だが『入れ替わり』が治るのは、一ヵ月後・・・・
弱ったな~~~・・・・
「んうぐ・・・・・けほ! ・・・・カイト様、ご無事ですか!?」
「あ・・・起きた? おはよう。」
「あ・・・え!? 私がもう一人!?? ど、どうしてですか!?」
目を覚ましたルルアムに、苦笑混じりに挨拶するカイト。
やっと意識を取り戻したルルアムは、周りを見回し、目の前にいる『自分の姿』の存在に驚きおののく。
彼女にも、この訳の分からない状況を説明しなければならない。
どうオブラートに包んで、なるべくショックを与えないように伝えるか。
弱ったな~~~。
(既に大きなショックを受けてはいるのだが。)
◇◇◇
「そ、そうだったのですか・・・・それは、弱りましたね。」
「ああ・・・」
これまでに起きた事態を、手短に説明したカイト。
かくかくしかじかと。
仏像に掛けられた術が、誤作動した事。
魔法が一切使えない事。
もちろん、放っておけば一ヵ月後には治ると言う事も。
もう少しとり乱すかと思っていたが、特にそんな事は無かった。
おかげでとても、説明の進行が早かったのだ。
おまけにルルアムはその場にいたので、一から説明をしたダリアさんたちに比べて、かなり状況の説明はしやすかった。
とはいえ、本当にわけの分からない事態。
状況を理解したものの、彼女も困惑は隠しきれないようすだ。
「カイト殿様は明日には、ベアルへと戻らねばなりません。 事態は、非常に切迫しているのです。」
「あ・・・明日にですか!?」
ダリアさんの補足の説明に、目をむくルルアム。
こんな事態の上での、このありえない(夢であってほしい)現実。
しかもダリアさんから詳しい話を聞くと、王様から何やら、『封書』が届いたよう。
何この、アリエナイ位、手際のいい不幸。
イロイロな事が起きすぎて、彼女の頭の処理能力を著しく超えてしまったようだ。
頭を抱え、どうにかこの事態を飲み込もうと努力をしている様子。
「お兄ちゃんがそのままで、帰るのはダメなの?」
目を腫らして赤くなっているヒカリが、『その状態で帰ったら?』と進言してくる。
もちろん、状況を屋敷などの皆に説明した上で。
だがそれは、アリアの(以下略)
「ありがとうヒカリ。 でもイロイロと問題があって、それは出来ないんだ。」
「ふーん?」
首を横に傾げるヒカリ。
半信半疑と言ったところだろうか?
彼女にはアリアの詳しい身の上とかは、話していなかったからな。
ともかくヒカリには、『この姿では、帰れないのだ』と言う事だけを説明する。
するとこの一連のやり取りに呼応するように、頭を抱えていたルルアムが立ち上がった。
何かを決意したのか、浮かべるその表情には先ほどまでの『困惑』の色は見えない。
彼女(俺の体)は、凛々しい表情を浮かべていた。
俺ってこんなに、かっこよかったっけ?
思わず自分に惚れてしまいそうだ。
こんな状況にもかかわらず、ド級にアホなカイトだった。
そんなアホに気にした様子も無く、ルルアムは自分の『決意』をカイト達へ向けて述べる。
「カイト様、こうなった一端には私の責任も大いにあります。 元に戻るまでの一ヶ月間、責任を持って私がカイト殿様になりますわ! 何でも、言いつけてくださいませ!!」
「「「えええーーーーーーー!!???」」」
ルルアムの決意。
彼女(?)は胸に手を当て、力強く宣言をした。
中身と素材はどうあれ、イケメンに見える。
この宣言に、驚きの声を上げる事しか出来ない、三人だった・・・・
ルルアム、漢らしいです。
まだまだ問題は、山積みなのですが。




