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オタクはチートを望まない  作者: 福島 まゆ
第9章 次のステージへ・・・
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第200話・起きた事態

第200話です。

早いものですね。

先はまだまだ長いですが。

先ほど、数時間ぶりに洞窟からその姿を現した、カイトとルルアム。

戦闘などで全身泥だらけではあったが、大きな外傷などは、見受けられなかった。

しかし見た目ではない、

それ以外で生じている『異変』に、目を疑うヒカリとダリアさん。

まずはその状況。

泥だらけのルルアムが、カイトの体を支えながら洞窟から出てきたのだ。

しかもカイトは、いつもの変身の魔法が解けて、黒目黒髪である。

一体、何があったのか。

非力な彼女の力では、気を失った状態のカイトを支えるのは大変なようで、表情は実に辛そうだ。


「お兄ちゃん!? 何があったの、しっかりして!!」


ルルアムに抱えられたカイトに歩み寄って、彼女から奪うようにして彼の体を地面へ横たえ、揺さぶるヒカリ。

ここまで彼を運んできたルルアムは、その光景をフクザツな面持ちで見つめている。

その表情には、困惑の色が浮かんでいる。

そんな彼女の様子にダリアさんは、探るような目つきでルルアムをじっと、見据えた。

何回か会ったこともあるダリアさんは、ルルアムの人となりも理解したつもりだ。

彼女はカイトを、心の底から慕っている。

だがそれを考えるとどうも、現在彼女がとっている態度は、おかしなモノに映った。


「ルルアムさん・・・でよろしかったですか? 洞窟の中で一体何があったのかをお聞かせ願ってもよろしいでしょうか??」


彼女に、『探り』を入れるダリアさん。

洞窟から出て来て再認識した。

やはりこの女性の中からは、カイト殿様の魔力が混ざって見える。

封印されているせか、ごく微量ではあるが。

同様にいま、ヒカリ様の腕の中にいる彼の中からは、この女性の・・・・

この異常事態は、説明してもらわなければ、ドラゴンの自分であっても何も分からない。


ダリアからの質問に、かぶりを振ったルルアム。

『何も話せない』と言う事だろうか?

ダリアさんは、彼女へ向けて『威圧』を放つ。

だが彼女は、慣れているのか特におくしたような様子は無かった。

この『威圧』を前に、普通の者が涼しい表情を浮かべていられるはずが無い。

まさか・・・・

いや、やはりと言うべきか。

ダリアさんが彼女へ『威圧』を放つのを止める。

それと同時に、ルルアムの口が開かれた。


「まずは一つ言わせてくれ・・・。 俺はカイトなんだ。」


「え、どういうこと!?」


突然のカミングアウトに、ヒカリは困惑した。

質問した当のダリアさんはというと、ニンマリと、笑みを浮かべる。

どうやら、波乱の始まりのようだ。



◇◇◇




これまでに洞窟内であった一連の出来事を話して聞かせたルルアム。

・・・の姿をしたカイト。

その話を静かに聞く、ヒカリとダリアさん。


カイトの話は、かなり理解には難しいものであった。

だがなんとか、仏像と戦い、交渉の末で、この洞窟から移ってもらうまでの話は順調に進んだらしい事を、理解する。

しかしこの後、仏像との話もまとまり、カイトたちがその場を離れようとしたとき、背後から像が『攻撃』を放ってきたようだ。

『魔力封印』の術と言うらしい。


カイトの『思惑』に感づいた仏像が、昔覚えた古代魔術を放ってきたようだ。

神社を魔法で、造るような事をさせないために。

突然の事でカイトはこれを防げず、抱えられていたルルアム共々、真正面からこれを受けてしまった。

問題なのはここから。

『魔力封印の術』は、かなり強力な力で、その対象の者の魔力を封じる術。

同時に二人以上の者に掛かってしまうと『そろって魔力を封じる』と言う事になり、術式への負荷が増大する。

自然、術式はその『負担』を軽減しようとするようだ。

『術式への負担軽減』

その過程で、二種類(以上)の魔力が、混ざってしまう事があるらしい。

今回のこれが、まさにそれだった。

仏像がカイトに掛けた術が、彼が抱えていたルルアムにも掛かってしまい、封印の最中に双方の魔力が負荷により混ざってしまった。

魔力すなわちこの世界では、『命をつなぎとめるヒモ』のようなものである。

それが、なかば強引に混ざる。

それは、命をもおびやかしかねない事態である。

この突然の魔力変動に、カイトたちの体が自己防衛をした結果、二人は入れ替わるような形となってしまったのだ。 (免疫のようなもの)

死ななくて、運が良かったと言える。

だがこの結果は、仏像も予想外だったらしく、術を解いてはもらえなかった。

カイト、やっぱり運が悪い。


「じゃあ・・・こっちがルルアムちゃんなの?」


「・・・・恐らくだが・・そうなる。」


地面に横たわるカイトの体を、困惑の表情を浮かべて指差すヒカリ。

それを肯定するルルアムなカイト。

彼自身、事態がよく飲み込めていなかったので、彼女へはあいまいな返事しか返す事ができない。


「お兄ちゃん・・・・・・なの?」


「・・・・・・。」


恐る恐ると言った感じで、ひとさし指をこちらへ向けてくるヒカリ。

信じられないのだろう。

俺自身とても信じられるような事では無いのから、だが・・・・・

一度だけ、首を縦に振るカイト。

俺は、俺なのだ。

それだけは、間違いなかった。


「う、うわああああああああああぁぁぁーーーーーーーー!!!」


目にたくさんの涙をため、ルルアムなカイトの胸元へ飛び込み、泣きじゃくるヒカリ。

突然の事態に、どうしたらよいのか分からなくなってしまったようだ。

泣くヒカリに、俺は頭をなでてやる事しかできない。

魔力を封印され、今の俺では、術の解除が出来ないのだから・・・

いや、待てよ?

確かに俺は出来ないが・・・・


「ダリアさん、俺とルルアムに掛けられた術を解くことって、出来ない?」


「いいえ、不可能です。」


即答されてしまった。

首を横に振り、残念そうに顔を下へ向けるダリアさん。

ダリアさんにも解けないとなると・・・・

もしかしたら俺とルルアムは、一生このまま・・・・・?

うーそーだーろー!??


「それとカイト様、先ほどアリア様から通信が入りまして、『すぐに帰還するように』との事でございます。」


「・・・・・・え・・・?」


うそ??

このタイミングでそれを言う!?


あはは・・・ここまで笑える事って他に、あるだろうか?

最悪もいいところだ。

カイトは、これからの行く末に絶望した。

特に、アリアにどう説明したものか、と・・・・・

何やら大変な事が起こったようです。

カイト、相変わらずの不幸です。

今回は、モロに巻き込まれた被害者がいるようです。

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