第199話・起きた『何か』
これからも、がんばっていきます。
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先ほど、紫色の光と共にカイト殿様の、悲鳴のような声が、洞窟の中から聞こえてきました。
カイト殿様たちの身に、なにかあったのでしょうか?
ワクワク!
・・・いけません。
心の奥底から湧き上がる胸の高鳴りが、どうにも抑えられません。
ああ、今すぐ洞窟内へ入って何が起きたのか、この目で確かめたい。
出来れば、加勢したい!!
隣のヒカリ様は、今まさに洞窟内へ突入しようとしています。
彼女の場合は私と違い、彼の悲鳴を聞いた事で居ても立ってもいられなくいなったのでしょう。
ですがそれでは先ほども申し上げたように、ヒカリ様の体が消滅してしまいます。
ここはメイドとして、彼女の行動は止めさせていただくことに。
「中からお兄ちゃんの声が! ダリアさん離して!!」
「ヒカリ様、ご心配には及びません。 カイト殿様の魔力の波動が感じられます。 死んではおりません。」
「うぅぅ・・・」
危険を承知でカイト殿様の下へ赴こうとするその心意気は評価できますが、それでヒカリ様が死んでしまっては元も子もありません。
二度と、カイト殿様に会えなくなるのですから。
きっと、カイト殿様も悲しまれます。
そこは分かっている様で、ヒカリ様も私の腕の中でもがくのを止めます。
やはり子供とはいえ、ヒカリ様は魔族。
とても力が強かったです。
押さえつけるのも、今のこの体では一苦労でした。
これも『人間を知るための』修行の一つです。
「ダリアさんは、見て来れないの? 私ここで待ってるからさ・・・」
「・・・・・。」
涙を流して嗚咽混じりにヒカリ様が、私にカイト様の元へ行くよう、言ってきます。
確かに私ならば、カイト殿様がたの様子は見てこれるでしょう。
ですがそれはカイト殿様の望むところでは・・・
おや?
そういえばヒカリ様は、一度ダメだと言われたことは、蒸し返さない者です。
今までもそうでした。
まさか。
「ヒカリ様、もしや『異変』に気づかれておいでなのですか?」
「お兄ちゃんが・・・・」
地面にペタンと座り込み、嗚咽を漏らすヒカリ様。
カイト殿様たちを襲ったであろう『異変』
これに不安を覚え、ヒカリ様は泣いておられるようです。
この『異変』はドラゴンである私ですら、よく分からない状況です。
カイト殿様の魔力と、もう一人の女性の魔力がリンクしてしまっているのです。
分かりやすく言うと、双方の魔力が封印されて使用不能になり、魔力同士が何かしらの作用で強引に、連結させられたような状況。
・・・一時的なものではありますが。
これにより、『魔力の質』によるカイト殿様方の判別が、非常に困難なものとなってしまっております。
今カイト殿様の魔力は、他の人間と混ざってしまっているのです。
言っている事が、自分でもまったく分かりません。
一体、カイト殿様の身に何が起きたのか、気になって仕方がありませんね。
ですが、その不安も少しは、払拭されるようです。
「ヒカリ様、カイト殿様がこちらへ向かっているようです。 どうやら無事ではあるようですよ?」
「あ・・本当だ・・・・・」
ここ、洞窟の入り口へ向かってくる二人分の魔力波動。
『異変』のせいで一部が混ざり、よく分からない事になってはいますが、間違いなく一人は、カイト殿様のようです。
ひとまずは安心。
ヒカリ様も察知したようで、表情を明るくさせています。
洞窟の最奥部には、何か大きな存在が残されているよう。
彼には、聞きたい事が山ほどあります。
フフフ・・・・・
実に面白い。
メイドをやっていて良かった。
今さらながら彼に付いて行った事は、かなり良い選択だったようですね。
◇◇◇
グレーツクでよく分からない事態が起こっていた頃。
ベアルでは、これまたよく分からない事態が起きようとしていた。
「奥様、大変でございます! 先ほど国王陛下の使者を名乗るものから、勅状が届きましてございます!!」
「ええ!?? 国王陛下からですか??」
屋敷の護衛の者が、使者から受け取ったと言う勅状をもって、部屋へ駆け込んできました。
彼も慌てているようですが、私も大慌てです。
国王陛下から『勅状』
つまり、『命令書』が届くなど、それだけでもこの上ないほどの緊急事態なのです。
「そ、それで国王陛下は、何と・・・・?」
「は、使者より伝言を預かってまいりました! 三日後に王宮へ姿を見せるようにとの事でございます!!」
「・・・・・。」
思わず、失神しかけました。
でもそれは、仕方の無い事です。
『三日後に王宮へ来るように』
使者様は、そう言われたようです。
ここはベアルと言う街。
馬車で行けば、国王陛下の住む王都へは早くても二週間は掛かります。
それを三日で・・・・
たぶんですが、カイト様の『転移魔法』が王様の目に付いてしまったのでしょう。
ですから、このようなムチャな要求を突きつけて来たに、相違ありません。
『自分で自分の首を絞める』とは言ったものですわ。
今回の場合、首を絞められているのはカイト様というより我々のほうですが・・・
「いけませんわ、あなたはすぐにカイト様へ連絡を!! 至急ベアルへ戻っていただくようにお伝えして下さい!!」
「御意!!」
私の指示を聞き、大急ぎで部屋を退室していく護衛の者。
それにしても運が悪すぎです。
カイト様は現在、グレーツクという海向こうの街へ行かれております。
何やらそこの国王に、相談を持ちかけられたようですね。
カイト様、『国王』におモテですわ。
もはや乾いた笑いしか出てきません。
ですが今回のこれは、何かの前触れです。
きっとカイト様の身に、何かが起きるのでしょう。
あくまで私の勘ですが、この無茶振りから、そんな気しかしません。
そして前提として、カイト様が何か、やったのでしょう。
私のあずかり知らぬところで。
「はあぁぁ~~~~・・・」
ため息が出ます。
ここ3年、毎日のように私の口からは、ため息が漏れ出ていきます。
彼は問題を片付けていく端から、問題を呼んでいる気さえします。
ド級の不幸体質なのでしょうか?
カイト様、私には難しいかもしれません。
あなたをお支えするのは。
とりあえずのところ私が出来るのは、三日後の王都への出立に備えて仕事を片付けること。
そして、彼に同伴するための支度をする事だけです。
これ以上、『何か』を呼ばぬために・・・・・・
もう12月間近です。
関東圏では雪が降り、一気に寒さが増した気がします。
みなさんも体調には、くれぐれもお気をつけください。




