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オタクはチートを望まない  作者: 福島 まゆ
第9章 次のステージへ・・・
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第198話・決心

これからも、頑張っていきます!

感想など、ありましたら、どんどんお寄せ下さい!!

カイト達が洞窟内で話をしていた頃。

洞窟の外はもう、すっかり日が暮れており、辺りは闇が支配し始めていた。

そんな中、その闇に溶けるように黒い姿をした少女が洞窟の外でウロウロしていた。


ヒカリだ。


カイト達に『待っているように』と言われた手前、日が暮れてなお、彼女はここから動けずにいた。

洞窟内に入ろうにも、『浄化』のような気が洞窟いっぱいに充満しており、ヒカリにはとても入れそうに無かったのだ。

入れば、重症ではすまない。

だから彼女はカイトに、『怖い』と言ったのだ。

これは魔族特有の感覚なので、人間のカイト達には分からない。

言わば生存本能のようなものだ。


「お兄ちゃん、大丈夫かな?」


ヒカリは自分が近づける洞窟の入り口ギリギリまで接近しては、気を失うギリギリまでそこにとどまり、カイトが出てこないかを観察した。

だがカイト達は何時間経っても、一向に出てくる気配がなかった。

さらには何か、崩落するような音なども聞こえてきた。

ヒカリの不安は、増長する一方だ。

もしかしたらこうしている間にも、お兄ちゃんは、ピンチに陥っているかもしれない。

そう考えると、何ともやるせない。

自分は『決して彼から離れない』と、言ったではないか。

それは、こんな事で捨ててしまうような決心だったのか??


自問に、かぶりを振るヒカリ。

いや違う、私の決心は、そんなに軽いものではない!


彼女の決心は、固まったようだ。

暗く奥へと続く洞窟を、さすような視線で見据えるヒカリ。

『この先には間違いなく、お兄ちゃんがいる。』

決心の第一歩を、洞窟内へ踏み出す。


「それでは、カイト殿様のいらっしゃる場所へたどり着く前に、ヒカリ様の体はかすみのように消えてしまいますよ?」


「!??  ・・・・ど、ドラゴンさん・・・・・」


突如、背後から話しかけられ、ひと時の間、警戒をするヒカリ。

しかし居たのは、メイドのダリアさんだった。

港での船修理が終わり、ここへやってきたようだ。

ヒカリは魔族という、気配察知などに優れた種族。

全身から漏れ出す魔力などから、彼女がドラゴンと言う事は、かなり早い段階で見抜いていた。

彼女の前にはダリアさんの変身の魔法も、形無しである。


「ヒカリ様、それは内緒の約束でございます。」


「あ・・・・ごめんなさい。」


ヒカリに対し笑みを作りながら、人差し指を口に当て、『内緒』のポーズをとるダリア。

自分がドラゴンとばれると、『百年メイドをやる』という決意が、実現不可になってしまう。

カイト並みの頭脳を持ち合わながらも、そこだけはダリアさんも、分かっていた。

だから、正体がどうしてもばれてしまうヒカリには、特に念入りに口止めをしているのだ。


「ヒカリ様ご安心下さい、この先からカイト様たちの気配は感じます。 無事である事はまず、間違いないでしょう。 魔族のヒカリ様には、この洞窟は危険極まりない事もまた、事実なのです。」


「じゃあ・・・ダリアさんは入れないの?」


自分は入れない。

それは分かっていた。

でもドラゴンのダリアさんなら、入れるのではと考えたヒカリ。

しかしこの質問に、ダリアさんはかぶりを振った。


「カイト様は『ここで待て』とおっしゃられたのでは? ヒカリ様への命令は、私にも適用されると言えます。 従者として私は、それに従うほかありません。」


「・・・・。」


ダリアさんの返答に、顔をうつむかせるヒカリ。

彼女は、なんとなくダリアさんの立ち位置も分かってはいた。

分かってはいたが、聞かずには居れなかったのだ。

そんな彼女を前に、「でも。」と付け足すダリアさん。


「カイト殿様は、『不死身』のようですので、心配は杞憂きゆうに終わるかと思われますよ?」


「・・・・・そっか。」


人差し指を立て、ヒカリに対して微笑ほほえみを浮かべるダリアさん。

一連のダリアさんの説明に、理解を示すヒカリ。

幾分だが、『不安』もやわらいだ。

二人はしばし、暗がりの洞窟の外で、待機する事とした。



◇◇◇



その頃。

洞窟内のカイトと仏像は、『交渉』をしていた。

その為の大事な、大事な第一歩。

彼は仏像に、交渉材料の『説明』を行っている。

すべては、この仏像さんがこの地で、忘れられぬようにするため。

それが引き金で、『たたり』などを引き起こさぬため。

すべては、この仏像と街の住民達のためだ!


決して、鉄鉱石を掘るための鉄道を敷くためとかではない。

完膚無かんぷなきまでに、無い。


重要な事なので、二度言った。


「『神社』ていうのはですね、つまりほこらを大きくしたような感じと言いますか・・・仏像さんをあがめ、たてまつる場所なのです。」


『つまり「教会」か? ワシはアレは好かんのだ!』


カイトの『神社』」の説明に、否定的な感情をあらわにする仏像。

彼のとぼしい説明に、仏像はカイトが『教会』を作ろうとしていると受け取ったようだ。

しかもどうやら、仏像さんは『教会』を毛嫌いしているようす。

本質的なものを見れば、教会とカイトの話す神社は、酷似したものである。

(もちろん相違点は、多々あるのだが。)

教会が駄目であれば、神社が駄目だといわれる可能性は、極めて高いと言えた。

これは、だめだろうか?

先ほどから『暖簾のれんに腕押し』のような状態で、遅々として話が進まない。

でもその割りに、ほこらはあるんだよな。

仏像にとって、教会の何が気に食わないのだろうか?

そこが交渉のかなめとなるだろう。

疑問に思ったことがあったら、まずは聞くのが一番だ。


「仏像さんは『教会』の何がイヤなんですか? トラウマがあるとか??」


『あほう!! ワシはあの、キラキラした感覚が好かぬと言っておるのだ! あのような場所は、ワシが住むにふさわしくは無い!!』


そう言って、背後にあるほこらへ一度、視線を向ける仏像。

何百年も住んでいたためなのか、かなりお気に入りなようだ。


この世界の教会は、ベアルにあるものを例に挙げると、大きなステンドグラスありの。

建物の天井などが尖っている、ゴシック様式で建てられたものである。

一般的にイメージするような『ザ・教会』って感じの建物だ。


無宗教なカイトは、教会には大した感情は持ち合わせていない。

彼としては教会より、うまい食堂でも街にできる方が、ずっと嬉しい。

その食堂が街に多く出来たのも、教会(聖堂)ができて、街に旅行者などが増えたおかげと言うのが、なんとも皮肉なものである。

その点、仏像さんお気に入りの祠は、カイトも親近感が湧いた。

祠の形は、日本にいた頃に自分の家にあった神棚の、やしろっぽく見える。

つまり、『神社』に形状が、そこそこ似ていた。

ようするに、仏像さんには『神社』がウケル可能性はかなり高い!

ゴリ押しで行こう。

『論より証拠』である。


「仏像さん、まずはこの画像を見て下さい!!」


『がぞう?  なんだ、それは。』


仏像に対しズイッと、空に浮かんだ静止画を見せるカイト。

カイトの記憶の中にある、近所の神社の画像である。

木造で結構ボロくて、一年に一度のご当地祭り以外には、一年を通して訪れる人もまばらなさびれた神社。

小学生ぐらいの頃、日暮れの後に内緒で友達と肝試しをして、親に怒られた思い出深い神社。

隣にある杉が周りを暗い印象にしており、良く言えばおごそかな雰囲気をかもし出している。

仏像はこの画像に、かなり良い印象を抱いた。


『ほほう、これが「神社」か。 なかなかの素晴らしきモノであるな。』


カイトの見せる画像に、石の体を近づける仏像。

仏像は、これまでで一番の興味を示した。 

これを逃す手は無い。


「でしょう!?? これをこの街の高原に立てようと考えています!!」


『しかし・・・この洞窟内では駄目なのか?』


「駄目です、ここではこの、大きな建物は建てられません。」


仏像の要望に、かぶりを振るカイト。

このような場所に作られては、鉄鉱石が掘り出せない。

そこのところ、カイトも必死だった。


「何よりこの場所では、植物は育ちません。」


『ふ~~む。 確かにこの針葉樹は捨てがたいのぅ・・・』


画像の中の杉を指差すカイト。

いわゆる『ゴリ押し』である。

雰囲気的の良さからか、ここに仏像も着目していたようで、案外話はすんなりといった。

あと、もう一歩と言ったところかな?


「私が建立こんりゅうを一手に引き受けましょう。 死ぬ気で作りますので、その点はご心配なく!!」


カタカタと石の体を振るわせる仏像。

これは、肯定と見てよいのかな?

なかなか好感触でよかったと、満足げにするカイト。

だが仏像から発せられた言葉は、否定のモノであった。


『いや、その「神社」とやらはグレーツクの民達に作らせよ。 いいか、反故にすればワシはこの街を・・・・』


「わ、分かってるよ! きっと作るから!!」


赤く目を光らせる仏像に、臆するカイト。

ともあれコイツには、自分は勝てないのだ。

自分の攻撃は、仏像には通じない。

守りも、ジリ貧状態であった。

俺は、この仏像に手も足も出ずに負けたのだ。

そう、これは半ば、『命令』である。

そもそも約束を破る気なんて、毛頭ないし。


「じゃあ俺は、おっさん達に話をつけてくるよ。 進展があったらまた、来るから。」


話はついた。

グレーツクの人たちに迷惑が掛かってしまう形になるが、そこは俺が大きく手助けすることで、カバーしよう。

俺も『グレーツクの住民』の一人なわけだし。

カイトは自らの魔法で、神社を造る気でいた。

いつものように。

仏像へ別れの挨拶あいさつをすると彼は、未だ気を失っているルルアムを抱え、洞窟を後にする。

・・・ことは、出来なかった。


『いや・・・・・待て、小僧!!』


「なんですか?」


カイトを呼び止める仏像。

カイトが振り向くと、仏像の目は赤く、光り輝いていた。

仏像の両手にあたる部分が、紫色に光っている。

まさか・・・魔法攻撃!?


「待て、ヤメロ!!!!」


ウカツだった。

仏像がもう、何もしてこないだろうと考えたのは、浅はかだった。

背後は見せるべきではなかったと、今さらながら思う。

だがカイトは、ルルアムを抱えた状態にあり、この攻撃をかわす時間は、無かった。


「うわああああああああああああ!!!!!!」


カイトとルルアムは、仏像の魔法攻撃を、真正面から受ける形となってしまった・・・・

書こうと考えている作品が、なぜか寝ている間に3つも増えてしまいました。

いつ、投稿できるかは全く見通しは立っておりません。

死ぬまでに書けるとよいのですが・・・

もちろんその時になっても、間違いなく当作品は続いております。

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