第196話・白い方が来訪しました
手直しなどで思ったより時間が掛かってしまい、投稿が遅れました。
今後もこのような事があるかもしれません。
あしからず、ご了承下さい。
くそう、なぜコヤツは死なぬのだ!?
先ほどから目の前の無礼な小僧に、天罰を与えるべくその体を、幾度と無く土へと変えてやった。
ワシの使っているのは、『魔法』などというゴミではない。
人間がこれを防ぐなど、絶対不可能なはずなのだ。
それほどに高貴で、高度な技なのだ。
なのに目の前の男は、何度その体を土に変えてやっても、すぐ復活する。
『奴には影武者がいるに違いない。』そう考えた。
どれ位の影武者がいるのかと、洞窟内の『土』に聞いたが、居るのはこの男と、女の二人だけのようだった。
つまり、コヤツは死んでも『生き返る』と言う事に他ならない。
これは、神の領域だ。
なぜだ、なぜ人間ごときがそのような事を簡単に・・・・!!
「もう俺が死なないって分かったでしょ!? そう何度も土にしないでくださいよ!!」
『うるさい、ワシをコケにする者は大地の一部となるがいい!!』
「うわあぁぁぁああ・・・・・・・・!!!」
カイトのセリフに、一層怒りの感情を増長させる仏像。
そこには、焦りや疑問の感情なども入り混じっていた。
当然ながら、仏像にこの攻撃の手を緩める気は無かった。
そうだ、コヤツが死ぬまで何度でも・・・
一方カイトも、多少なりとその表情には、『焦り』の感情が、見て取れた。
仏像との、このやり取りの回数も、ついに二桁を超えた。
ルルアムが気絶しているのが、ある意味『救い』である。
彼女への説明が、かなり面倒なので。
しかし殺されても殺されても、仏像のとる行動に、変化は無かった。
生き返るカイトを、すぐさま『術』で土へ変える仏像。
そんな仏像をあざ笑うかのように、またもや生き返るカイト。
より一層に、頭に血がのぼる仏像。
だが今回は少し、違った。
カイトが生き返ると同時に、洞窟内に眩いばかりの閃光が走ったのだ。
その突然の光景に、驚きを隠しきれない二人。
『な・・・なんじゃ!??』
「ゲ・・・・・・」
現れたのは、白いロリ美少女。
目の前に現れた少女に、カイトは驚きと共に後ろめたい気持ちになった。
そう、それは親に0点をとったテストの答案を、隠そうとするような・・・・
来た時点で、カイトが隠したい事は恐らく、バレているのは確実だったが。
やばい人が、来てしまった。
カイトは、この少女を知っている。
そう、彼女こそカイトをこの世界につれてきた(?)張本人。
いわゆる、『イタイ人、駄女神様』である。
彼女はどうやら、大変にご立腹のようだ。
「カイトさん、そう何度もほいほい死なないでください!! 命の手配とか諸々(もろもろ)の手続きが、大変なんですからね!?」
「ご、ごめんごめん! 怒らないで!?」
カイトの姿を見つけると駄女神は、つかつかとカイトに寄って来て、抗議の声を上げる。
見た目のせいで、子供が怒っている風にしか見えず、かなり可愛い姿だ。
会うのは実に、三年ぶり。
分かっちゃいたが、見た目は変わらないんだな。
神様だから・・・なんだろうな。
仏像との戦闘の事も忘れ、ただひたすら彼女に平謝りを繰り返すカイト。
「いーえ、今度と言う今度は言わせていただきます! たかが三十分の間に二十回以上死ぬってなんなんですか!? 安易に『実験』とかで死なれては困るんです!! そもそも『命』の調達にはですね・・・」
「違う違う、ちょっとそこのヤツに殺され続けているって言うか・・・・」
説明を始めようとする駄女神様に、弁解をするカイト。
「はあ?」と、カイトの言葉に理解不能といった態度を示す駄女神様。
彼の指差す先を、怪訝な表情を浮かべて見る。
彼にはヤバい位の力を授けている。
そんな彼を何度も殺すとか、どこの規格外・・・
「なんですか、この仏像は。 カイトさん、そのような言い訳は見苦しいです!! 男なら正々堂々『死にたくなって死んでみた』と言って下さい!! 私は神様ですよ、カイトさんのお考えの事なんか、すべてお見通しなんですからね!?」
「いやいや、全然分かってないじゃん!?」
目の前の仏像から視線を外し、再びカイトへ視線を向ける神。
何だよ、『死にたくなって死んだ』って。
俺はそんな、自殺志望者ではないぞ!?
これは、神様特有の、感覚とかなのだろうか?
それだったら俺は、今後、神様を完全に見下してしまいそうだ。
この駄女神様が特殊な人物である事を、ここに切に願う。
「私も忙しいんです! 今度死んだら、魂の川に流しっぱなしにしてしまいますからね!?」
忙しい(自称)と言う駄女神様は捨て台詞を吐くと、そのまま登場したときのように閃光を放って、その姿を消していった。
言うだけ言って、消えやがった。
やはり『駄女神』だな。
しかも今度死んだら、俺は終わりらしい。
「・・・・・・・・・あ、あのさ~、もう殺さないでほしいって言うか・・・」
カイトはもみ手を作って、目の前の仏像に、懇願した。
なかなかのアホ行動である。
自己都合で『殺さないで』と言って、聞いてもらえるとでも思っているのか。
数分前まで、死ぬ死なないの工房を続けていたと言うのに。
だが仏像のほうも一連の出来事に、完全に毒気が抜かれていたようだった。
つまり、『戦意』が完全に削ぎ落とされてしまっていた。
『ああ・・・時間の無駄だと言う事が分かったからな。』
この男の知りたい事も、知れた事だし。
ため息をつく仏像。
カイト、何気に強運である。
だがそもそもの、この仏像と戦闘になった原因の話が、まだ始まってすらいない。
いまから、その話を進めなければならないであろう。
しかし仏像には、彼に対する新たな疑問が湧いていた。
『小僧よ、貴様はあの女とは知り合いなのか??』
「あ・・・・・・・・えっと、イロイロあってさ・・・うん。」
『異世界転移』とかは話せないので、かなりはしょって仏像に説明をするカイト。
女神とは昔、生死の境をさまよったときに会ったと、仏像に話した。
ウソは、ついていない。
マジで一回死んで、文字通り『生死の境』(?)はさまよったし。
仏像はカイトの言葉に「ふむ」と一考する。
特にこれについては、言及する気は無いようだ。
だが仏像のカイトに対する、疑いの眼差しは変わらない。
事実関係というより、『なぜコイツが、神と知り合っているのか?』という疑惑に近い。
もういろいろとバレてしまった事だし、俺のステータスを見せるぐらいは良いかもしれない。
なんやかんやで『仏像』なので、話が漏れてしまう危険とかもなさそうだし。
カイトは、ルルアムが意識を取り戻していない事を確認し、意を決した。
「俺のステータス、見せるんでそれで良いですか?」
『・・・貴様はワシに、それを読めとでも言うのか??』
意を決して、面倒なので丸投げしようとするカイトに、不満をもらす仏像。
だが何分、勉強不足なカイトでは、この仏像にステータスの説明なぞ、できない。
そもそも彼は未だ『人間を数字で表すステータスって、イヤだな』と考えていた。
三年も経つのに、カイトはあまり、成長していなかったようだ。
カイトの考えに一考した仏像。
不満をもらしはしたが「では」と、ステータスオープンを催促する。
不満はあるが、現状もっとも現実味があって信頼に値する情報の仕入れ方法は、それしか手が無かったのだ。
彼を土にできなければ、記憶はたどれない。
だがヤツは死んでも死なない。
口からの説明では、でまかせを言われる危険がある。
その点ステータス表示は、書いてある事がすべてだ。
自分の今、一番知りたい情報もきっと、手に入るだろう。
もし、ステータスを、偽造されていなければ。
『相分かった。 だが小僧、もしステータスを偽造すれば、今一度、土に変えるぞ?』
目をきらりと赤くともらせる仏像に、肩をすくませるカイト。
そうなればカイトは、『魂の川』に流しっぱにされてしまう。
駄女神様は大変にご立腹なようだったので、本当にそうされる危険は、極めて高かった。
そうなれば、カイトは文字通り、本当に『死んでしまう』。
それだけは、御免こうむる。
「ステータス、オープン!!」
カイトの声と共に、空中にパソコンの画面のような表示が現れる。
これを開くのは、実に二年以上ぶりだ。
今まで必要が無かったので、わざわざ開いて見るようなことが無かったのだ。
名前: カイト・スズキ
年齢: 20歳
種族: 人族
レベル: 15
HP(体力): ∞
MP(魔力): ∞
STR(筋力): ∞
DEX(機敏): ∞
スキル: 好きなものを好きなだけ♪(※取得したものの表示は省く。)
うん、良かった。
俺はまだ人間のようだ。。
でも年齢以外、何か変わった事はあるのだろうか?
自分の『成長』に、一抹の不安を覚えるカイト。
彼が自分のステータス表示を見なかったのも、この辺りが怖かったからである。
人間やっぱり、年月が経てば少しなりと『成長』がほしい。
ちなみにレベル15とは、この世界においてのフツウの成人男性レベルの高さだ。
その他がヤバ過ぎて、レベルなぞ関係なくなっているが。
カイトはそんな世界の常識なぞ、知っているわけも無かった。
意気消沈するカイトを横目に、仏像はこの異常なステータス値を前に、固まっていた。
これはもう、人間のステータスではない。
だが先ほどのヤツが、関わっているのであれば・・・
と考えると、一応は納得もできた。
問題は『スキル』
カイトに要望し、この中の詳細表示を見せてもらった仏像は、愕然とした。
彼のスキル表示には、『女神の加護』『死神の加護』などを始め、数え切れないほどの『神』を冠した加護が見て取れたのである。
この人間は、本当に一体、何なのだ!?
ますます分からない事が増えた。
しかし仏像にとってさらに驚愕な言葉が、カイトから発せられる。
「なあ、俺からも聞いて良いか? あんた一体、何の仏像なんだ?」
『何?? 貴様はワシを知らないのか!??』
スキルを見たとき以上に、カイトからの質問に驚きの声を上げる仏像。
知っているも何も、今日初めて会ったので、知るわけが無い。
しかし仏像的には、これは『彼が神の加護を持っている』以上に衝撃的なことであった。
ルルアムは、相変わらず気を失ったままだ。
このまま、この仏像と話しても問題はなさそうだが・・・・
当分はここから、出られそうには無い。
この仏像の正体ですが・・・・・
そのうち、書きたいと思います。
結構、スゴイ人(?)です。




