第195話・カイトの正体について
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度重なる戦闘により崩落した、グレーツクにある元、鉄鉱石の坑道内。
カイトと仏像による激しい戦闘は先ほどから鳴りを潜め、代わりに中からは話し声が聞こえてくる。
その声色から、先ほどまでの緊張感は感じられない。
『貴様は一体、何者なのだ?』
「何者だ、って言われても・・・・」
仏像から質問を投げかけられたカイトは、答えを出しあぐねていた。
先ほどこの仏像のど真ん中に、爆発魔法を命中させたカイト。
これはやったかと、そう思った。
だがその魔法は、一瞬の間に張られた障壁の魔法によって、防がれてしまっていた。
再度、攻撃態勢に入るカイトに『休戦』を申し入れた仏像。
気になる事があったようで、それについて話を聞きたいとの事であった。
もともとカイトは、戦闘は好きではない。
話し合いで解決する糸口になるのではと、彼はこの仏像の話に、乗る事にしたのだ。
そして開口一番、仏像が聞いてきたのが『お前は何者だ?』と言う質問。
そういえば、会ってすぐに戦闘になってしまったので、自己紹介とかがまだだったな。
「俺はカイト・スズキと言いまして、この街の・・・」
『名前なぞ聞いてはおらぬ! ワシが聞きたいのは、なぜ貴様のようなヤツから『神の気』が垣間見えるのか、という事じゃ!!」
「!!?」
仏像から発せられた言葉に、驚愕するカイト。
仏像の口から発せられた、『神』という単語。
コイツは、あの駄女神に会った事があるのではないか?
まさかこの仏像は、自分が異界人ということを知っているのではないか?
そもそも『神の気』って何!?
と、カイトの頭の中はすぐさま、パニック状態になった。
いやいやこの仏像、何者だよ!?
カイトは一気に、目の前の仏像の存在が、怖くなってきた。
とはいえ、『俺は一度死んだ後にこの世界に来た』などとウカツに話すわけにはいかない。
ちなみのその話をこの世界ですれば、『悪魔に憑かれている!!』と言われ、口が裂けるまで拷問される。
たとえそれが、『大公』であっても。
本当のことをどんなに言っても、誰にも信じてはもらえぬだろう。
最終的に、処刑となるのが、関の山と言うものだ。
そんなアブない橋は、渡らない。
「神の気って、何ですか? 俺はただの人間ですよ??」
『ウソをつくでない!! ワシと戦いのできる存在が、人間であってたまるか!!』
む・・・失敬な!!
俺は別に、ウソなんかついていないぞ!
『神の気』なんて知らないし、人間である事だって本当・・・・
まさかいつの間にか、『魔族』とかにジョブチェンジとかしてないよな、駄女神様よ?
・・・後で今一度、自分のステータスでも確認しておこう。
「そ、そういうあなたこそ、何者なんですか!? 人にモノを聞くときは、自分からするものですよ!」
イロイロ聞かれると危険なので、カイトは逆にこちらから質問をぶつけた。
彼が言っている事は的を得てはいるが、及び腰で言っているので、迫力などは微塵も感じなかった。
こういうのは、相手が誰であれ、堂々と言うべきものだ。
カイトには、無理か。
『ふふ・・・貴様なぞに名乗る名など無いわ。 貴様はただ、ワシの質問に答えるだけでいいのだ。』
カイトの質問は、まったく聞き入れられなかった。
さっきからコイツ、偉ぶってはいるが、する事なす事、すべて上からな感じだ。
この独特な雰囲気といい・・・
この国のクズ大帝を思い出す。
アイツは魔の森に捨てた後、行方知れずとなっている。
きっと、死んだのだろうな。
アイツほどムカついたヤツは、以後一人もいない。
この仏像も実は小者なのではないかと、考えてしまう。
見た目、本当にただの安っぽい仏像だし。
コイツに一瞬でも、『恐怖』を感じた自分が、バカみたいだ。
「俺はただの、人間ですってば。」
もうコイツに何かを話す気は、まったく無くなった。
俺あの大帝、嫌いだし。
カイトは目の前の相手と、バカ大帝を同じカテゴリーに分類し、テキトーに相手をする事に決めた。
この彼の態度に、仏像は笑みをこぼした。
『あくまでシラをきるつもりか、ならば貴様を壊して記憶でも覗くとしよう。 素直に話せば死にはせなんだモノを・・・!!』
「な・・・や、ヤメロ!!」
顔を青ざめさせ、止めるよう言うカイト。
カイトの制止の声は届かず、再び先ほどのように赤く光る仏像の目。
それと共にカイトの体は、土の塊になってしまった。
『ふははは、素直にワシの質問に答えていれば、死なずに済んだかも知れぬものを・・・』
土くれになってしまったカイトの姿に、笑みをこぼす仏像。
この仏像は、土からその記憶を、さかのぼる事ができる。
それをするために、カイトを土にしたのだ。
今度は間違いなく、土塊になった。
これでヤツの正体は分かるし、危険な存在は死にもした。
一石二鳥だ。
『よしよし、では早速あの愚か者の素性でも・・・』
「おまえ、土系が好きなのか?」
生き返ったカイトは早々に、この得体の知れない仏像に、悪態をついた。
コイツさっきから攻撃方法が全部、土に関係するものばかりだ。
マニアとかだろうか?
『ば、バカな!? 貴様は確かに土になったはず!!? ぬうううう!!! また影武者か!!????』
とうとう頭に血が上った仏像。
この男は間違いなく、ワシをバカにしている!
カイトの一連の動きを、この仏像はそう捉えた。
もうこの男の詮索など、どうでも良くなった。
ワシをバカにするものは、大地の一部に返してくれる!!
『土となれ、小僧!!』
「うわっ!! 待てって、うわあぁぁぁ・・・・!!!!」
そしてカイトは、怒らせてはならぬ相手を怒らせた。
バカである。
仏像の怒りの炎は、幾度と無く、カイトの身を焦がすのだった。
そしてこちらでも・・・
「ま・・・またですか!? も~~~~~~!!! こっちの身にもなって下さいよ!?」
真っ白な空間で白い少女が、顔を赤くさせて抗議の声を上げていた。
その表情からは、『焦り』のようなものが垣間見える。
長い・・・・
予定の話が遠くなりました。
なかなか思い通りには行かないものです。
他作品も同時進行なので、そのせいもあるかもしれません。




