第194話・驚愕?
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「う・・・う・・うぅぅ・・・・・」
カイト様が、死んでしまった。
目の前にいる仏像の背後にある土くれが、カイト様だったモノ。
彼の体は、一瞬で仏像の手によって、土の塊に変えられてしまった。
私のせいで、大変な事になってしまった。
こんな事になるなら、この周辺へ、案内しなければ良かったと思う。
ここは、永遠に放棄する案だってあったのだ。
それを止めた筆頭は、他でもない私である。
少しでもカイト様の言う、『もったいない』を払拭するがために・・
その結果が、コレだ。
これは私一人の問題ではない。
カイト様が死んでしまえば、グレーツクも、ベアルも、優秀な領主様を失う事になる。
それは何にも代えられない、とてつもない損害だ。
一番あってはならない、恐ろしい事になってしまった。
もう彼に、恩を返す事もできない。
彼女の目から涙が、とめどなく流れ落ちる。
それはしずくとなり、土の地面へと吸い込まれていく。
その光景を前にして仏像は、さらに顔を大きくゆがませる。
・・・・笑っているようだ。
『ふはははは、悲しみに暮れる事はない。 汝もすぐに、今の男のようになる。』
「!!」
仏像が、ルルアムに向かってくる。
今度は彼女に、矛先を向けるようだ。
恐怖に、体を硬直させるルルアム。
彼女には、逃げる場所も、抵抗する力さえも、無かった。
再び、眩く光る、仏像の目。
終わった・・・・。
私は誰かにこの惨事を、伝える事すらできない。
軽く目を閉じ、時間の流れに身を任せる体勢をとるルルアム。
ぼかーーーーーーーんんんん!!!!
その時だった。
塞がれていた洞窟の土壁が爆発と共に吹き飛び、外の涼しい風が通り抜ける。
洞窟内には再び土ぼこりが舞い、ルルアムの長い髪が、大きく揺れる。
けほっけほっと、咳き込むルルアム。
洞窟の入り口に目を向けるとそこには、一人の男性が仁王立ちしていた。
その人間の存在に、驚愕の声を上げる仏像。
『バカな!? 貴様は今、確かに土くれに・・・!!』
男は仏像の言葉に答えることなく、五体満足のルルアムの姿を見つけると、安堵の言葉を漏らした。
「良かった、無事だったんだね!?」
「カイト・・・・様・・・・・?」
声のする方向へ顔を向けるルルアム。
彼女はその姿をその瞳に映すと、安堵とも喜びとも取れる表情を浮かべた。
彼女の前に現れたのは、よく知った人。
彼女が一番慕っている、人間。
他でもない、白い礼服姿のカイトであった。
◇◇◇
「ぐあーーーーーーー!! 死んだーーーーーーー!!!」
先ほどルルアムと共に入った洞窟内。
ガバッと起き上がったカイトは、開口一番バカっぽい言葉を叫んだ。
トンネルの中なので、カイトの大きな声はガンガン反響する。
ここで彼は、自分の異変に気がつく。
「あ、あれ? 死んでない?? どゆ事!?」
カイトは自分の体を触り、五体満足なことを確認する。
負っていたはずの怪我も、無くなっているようだ。
俺は確か、土くれになって死んだはずである。
その瞬間の、仏像が目を赤く光らせるところまで、しっかりと覚えている。
そうだ、あの状況から見て俺は、間違いなく死んだ。
だとすると、今のこの状況は・・・
ん? 何かが頭の中に浮かんでいるな。
この感覚、なんだか懐かしい。
なんだろう、確認してみるか。
そうして彼の頭に浮かんだのは・・・・
【添付メッセージが届いています。:
カイトさん、ほいほい何度も死なないでください PS:美少女女神】
「・・・・・・。」
なんか駄女神様からの、添付メッセージが届いた。
そうだ、俺、寿命まで死なないんだっけ?
ここ最近、こんな状況に陥る事がなかったので、すっかり忘れていた。
一度死んだ事で、安全圏まで転移もさせられたよう。
先ほどの俺の決意(?)は、何だったのか。
洞窟内で、赤面するカイト。
恥ずかしすぎるので、これが終わったら即効で、この記憶は封印だ。
「そうだ、ルルアム!」
そうだ、俺は仏像と戦っていたのだ。
ルルアムは障壁が破壊され、おれが死に行く瞬間、絶望の表情を浮かべていた。
俺を殺した仏像はきっと、今度はルルアムを殺そうとするであろう。
彼女の身が、危険だ!!
「ここで、間違いないな?」
カイトは目の前に立ちふさがる土の壁を、なでまわす。
先ほど入った際、枝分かれする道はなかったはずだ。
何よりこのやわらかい、真新しい土壁は、先ほどあの仏像が崩したものに、ほぼ間違いは無かった。
そうと決まればまずは、この壁を壊すところから始めねばならない。
「お~~~~し!!!」
ゾンビのように生き返ったカイトは、身構えて爆発魔法を放つ準備をする。
これで、土壁を吹き飛ばすのだ。
おれが死んでから、そこそこ時間が経ってしまった。
ルルアム、無事でいてくれよ・・・・・?
「うりゃっ!!」
ぼかーーーーーーーんんんん!!!!
爆発魔法は思いのほか強力で、土壁は跡形も無く吹き飛んだ。
崩れた壁の先には、床に倒れ付すルルアムとそれに近づく仏像がいた。
間一髪で、間に合ったようだ。
カイトは、安堵のため息を漏らした・・・・
◇◇◇
『バカな!? 貴様は土になったはずだ! なぜ生きている??』
「んふ~~~、生きてちゃ悪い??」
『ぐぬぬぬぬ・・・・!!!』
カイトは、生き返って早々、仏像の怒りを焚きつけた。
ちなみに未だ、この仏像への対処法は見出せていない。
カイト、浅はかである。
対してルルアムは、気絶中だ。
現れたカイトを見て、幽霊とでも思ったのか卒倒してしまったのだ。
後で彼女にどう説明したものか、それが問題である。
それはさておき。
「ピンポイントでぶっ飛ばしてやる! 覚悟しろ、仏像め!!」
『調子に乗るな!! そうか、先ほどのは影武者だな?? ならば今度こそ仕留めてくれる、土となるがいい!!!』
双方、魔法攻撃の準備をする。
この一撃で、どうにかしなければならない。
涼しい顔はしているが、双方とも冷や汗を流している。
コイツは、一筋縄ではいかないと。
『む?』
ここで仏像は、何かを見つけたのか、カイトを見据えたまま、硬直した。
なぜ、この人間から・・・
おかしい!!
これは、確かめねばならない。
土にするのは、後回しだ。
「行くぞ仏像! こわれ・・・」
『ま・・・待て!!』
ずどーーーーーーーーーーーーんんんんん!!!!!!!!
仏像の制止はかなわず、カイトの爆発魔法は繰り出された。
しっかり狙ったので、仏像のど真ん中に命中する。
洞窟内に、大きな崩落音が響いた・・・・
カイト、生き返りました?
一応この仏像、すごいヤツなんですが・・・・
彼は中ではもう、『敵』認定です。




