第193話・仏像との戦い
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先ほど入った坑道内で、仏像が襲ってきました。
初めて聞いた者は、『何をバカな』と思うことでしょう。
だが現実として、私とカイト様は今、こうしてその仏像に、八方をふさがれてしまっています。
狙い澄ましたかのように、坑道の土を崩して。
仏像とカイト様の激しい戦闘により、狭い洞穴内は、立ち込める土ぼこりで視界がとても悪いです。
そんな視界の悪い中、ガガガッと言う音と共に、目の前でカイト様が、無数の石槍にそのお体を貫かれたように見えました。
「カイト様!!!!」
『フハハハハ! バカめ、侵入者は死ぬ運命にあるのだ。 ワシの土地から資源を奪い去ろうとした事、あの世で悔いるが良い!!』
「ぐほっ・・・・! ぐぬぬぬ・・・うおおおおお!!」
「ああ・・・あああ・・・・・・」
血を口から吐きながら、カイト様は必死で壁から抜け出そうとします。
そうする度、彼の纏う白い礼服が、真っ赤に染まっていく。
彼の体に刺さった石槍から、赤い液体が流れ出す。
もどかしい。
カイト様が苦しんでおられるのに。
私はカイト様から先ほど張っていただいた、『障壁魔法』と言う安全圏内にいる。
私の体には、傷一つ無い。
彼は目の前で、血を吐きながら苦しんで、それでもなお、民達のために戦おうとしているというのに!!
無力な自分が、恨めしい。
カイト様には、一生掛かっても返しきれない恩があります。
三年前、愚かだった私の過ちを教えてくれたのは、彼。
その結果、『奴隷』に落ちた私を救い出してくれたのも彼。
その上、彼は私に『居場所』まで与えてくれました。
そのご恩に少しでも報いる意味で、私は今まで『鉄道研究所』で、身を粉にして働いてきました。
ただ彼に、喜んでいただきたいがため。
ただ彼に、少しでも感謝の意を示すために。
・・・だが、結果はこうです。
私は無力なままでした。
目の前で苦しむ、命の恩人が負った傷に、手を差し伸べる事すらできない。
カイト様は必死にもがかれておいでですが、刺さった槍は、ビクともしないようです。
そんな彼を、静かに見据える仏像。
するとその像は、向きを変え、私の方を見て、笑みをこぼしてきました。
背筋が凍りつきそうなぐらい、邪悪な笑みを。
「え・・・!?」
その目の前の仏像の目が赤く光ると同時に、私の周りを囲んでいた半透明の『障壁魔法』が、溶けるように消滅していきました。
なぜ・・・・どうしてですか!??
私に張ったとき、カイト様は仰っておりました。
『この障壁魔法は、俺でも貫けない』と。
この世界最強級のカイト様の攻撃にすら耐えるという、障壁がなぜこうも、いとも簡単に・・・
『言ったであろう? そのような脆弱な魔法など、ワシの前にはゴミも同然!! まず手始めに、あの小僧の前に貴様を・土に変えてくれよう。』
「!!!」
目を赤く光らせながら、少しずつ私に近づいてくる仏像。
『逃げなければ危険だ!』と、私の何かが、警鐘を鳴らします。
ですが狭い、八方を土の壁に阻まれている現状では、それはかないません。
カイト様、申し訳ございません。
ご恩も返せぬまま死に行く、愚かな私をどうか、お許し下さい・・・・
ドズン!!!!
目を閉じたルルアムと、笑みを浮かべ彼女に近づきつつあった仏像の間に、小さな魔力弾が着弾した。
再び土ぼこりが舞う洞窟内。
放ったのは、カイトだ。
だが狙った、土壁の壁面に穴を開けるには、程遠いものであった。
「くそ・・・っ!!」
『ほお~~う、ワシの命を食らう石槍を受けてまだその力があるとは。 賞賛に値するぞ? だがワシは、聞き分けの悪いやつと、往生際の悪いやつは嫌いでな・・・!』
ルルアムに向かっていた仏像の視線が再び、カイトの方へと向く。
当初の目的は果たせなかったが、それでも、牽制ぐらいにはなったようだ。
ここで少しでも時間を稼いでその隙に・・・
「ルルアム、何をしている!? 今のうちに早く逃げ・・・・!!」
そこまで言って、カイトは現在の状況を、改めて思い出した。
自分の攻撃すら通じない相手。
防御すらも。
脱出しようにも、その手段は今しがた振り絞って撃った最後の魔力弾により、潰えた。
もう自分には、何も残ってはいない。
ルルアム一人を逃がす力すら。
俺は未だ、無力だった。
こんな事ならルルアムもヒカリと共に外に残し、自分ひとりで入ればよかった。
いや、それでは何も変わらない。
状況を打破するには、戦力が必要だ。
もしかしたら、ダリアさんを連れていれば、こんな事には・・・
はは・・・『好きにしていい』とか、突き放さなきゃ良かったな。
「くそ・・・・っ!」
悪態をついて、もがくのを止めるカイト。
もう、力尽きた。
そもそもこの仏像、強すぎ。
何度やり合っても、勝つビジョンが思い浮かばない。
何度やろうが、俺は負けるであろう。
抵抗なんか、無意味だ。
ルルアムも絶望の感情を顔に浮かべ、地面に座り込んでいる。
『ほほう、やっと諦めたか、少しは気に入ったぞ。 その心意気に免じて、一瞬で土の塊としてくれよう。』
すまないルルアム、助けられなくて。
ヒカリも、入り口に取り残す形になってしまうな。
アリアごめん。
こんなところで俺は・・・・
仏像の目が、一際眩く、赤く光る。
それと共に、土の壁に縫い付けられていたカイトの体は、土となり、それは重力と共に、ぼろぼろと地面へ崩れていった。
「カイト様!!!」
『侵入者は、何人たりとも許さぬ!!』
涙を流し、ルルアムは地面にその体を、横たえる。
洞窟内には、仏像の笑い声だけが、大きく響いていた・・・・
諸都合で、投稿が遅れました。
ご迷惑をおかけしました。




