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オタクはチートを望まない  作者: 福島 まゆ
第9章 次のステージへ・・・
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第193話・仏像との戦い

これからも、頑張っていきます!

感想など、ありましたら、どんどんお寄せください!!

先ほど入った坑道内で、仏像が襲ってきました。

初めて聞いた者は、『何をバカな』と思うことでしょう。

だが現実として、私とカイト様は今、こうしてその仏像に、八方をふさがれてしまっています。

狙い澄ましたかのように、坑道の土を崩して。


仏像とカイト様の激しい戦闘により、狭い洞穴内は、立ち込める土ぼこりで視界がとても悪いです。

そんな視界の悪い中、ガガガッと言う音と共に、目の前でカイト様が、無数の石槍にそのお体を貫かれたように見えました。


「カイト様!!!!」


『フハハハハ! バカめ、侵入者は死ぬ運命にあるのだ。 ワシの土地から資源を奪い去ろうとした事、あの世で悔いるが良い!!』


「ぐほっ・・・・! ぐぬぬぬ・・・うおおおおお!!」


「ああ・・・あああ・・・・・・」


血を口から吐きながら、カイト様は必死で壁から抜け出そうとします。

そうする度、彼のまとう白い礼服が、真っ赤に染まっていく。

彼の体に刺さった石槍から、赤い液体が流れ出す。


もどかしい。

カイト様が苦しんでおられるのに。

私はカイト様から先ほど張っていただいた、『障壁魔法』と言う安全圏内にいる。

私の体には、傷一つ無い。

彼は目の前で、血を吐きながら苦しんで、それでもなお、民達のために戦おうとしているというのに!!

無力な自分が、うらめしい。


カイト様には、一生掛かっても返しきれない恩があります。

三年前、愚かだった私のあやまちを教えてくれたのは、彼。

その結果、『奴隷』に落ちた私を救い出してくれたのも彼。

その上、彼は私に『居場所』まで与えてくれました。

そのご恩に少しでもむくいる意味で、私は今まで『鉄道研究所』で、身を粉にして働いてきました。

ただ彼に、喜んでいただきたいがため。

ただ彼に、少しでも感謝の意を示すために。


・・・だが、結果はこうです。

私は無力なままでした。

目の前で苦しむ、命の恩人が負った傷に、手を差し伸べる事すらできない。


カイト様は必死にもがかれておいでですが、刺さった槍は、ビクともしないようです。

そんな彼を、静かに見据みすえる仏像。

するとその像は、向きを変え、私の方を見て、笑みをこぼしてきました。

背筋が凍りつきそうなぐらい、邪悪な笑みを。


「え・・・!?」


その目の前の仏像の目が赤く光ると同時に、私の周りを囲んでいた半透明の『障壁魔法』が、溶けるように消滅していきました。

なぜ・・・・どうしてですか!??

私に張ったとき、カイト様はおっしゃっておりました。

『この障壁魔法は、俺でも貫けない』と。

この世界最強級のカイト様の攻撃にすら耐えるという、障壁がなぜこうも、いとも簡単に・・・


『言ったであろう? そのような脆弱ぜいじゃくな魔法など、ワシの前にはゴミも同然!! まず手始めに、あの小僧の前に貴様を・土に変えてくれよう。』


「!!!」


目を赤く光らせながら、少しずつ私に近づいてくる仏像。

『逃げなければ危険だ!』と、私の何かが、警鐘を鳴らします。

ですが狭い、八方を土の壁に阻まれている現状では、それはかないません。

カイト様、申し訳ございません。

ご恩も返せぬまま死に行く、愚かな私をどうか、お許し下さい・・・・



ドズン!!!!


目を閉じたルルアムと、笑みを浮かべ彼女に近づきつつあった仏像の間に、小さな魔力弾が着弾した。

再び土ぼこりが舞う洞窟内。

放ったのは、カイトだ。

だが狙った、土壁の壁面に穴を開けるには、程遠いものであった。


「くそ・・・っ!!」


『ほお~~う、ワシの命を食らう石槍を受けてまだその力があるとは。 賞賛に値するぞ? だがワシは、聞き分けの悪いやつと、往生際の悪いやつは嫌いでな・・・!』


ルルアムに向かっていた仏像の視線が再び、カイトの方へと向く。

当初の目的は果たせなかったが、それでも、牽制ぐらいにはなったようだ。

ここで少しでも時間を稼いでその隙に・・・


「ルルアム、何をしている!? 今のうちに早く逃げ・・・・!!」


そこまで言って、カイトは現在の状況を、改めて思い出した。

自分の攻撃すら通じない相手。

防御すらも。

脱出しようにも、その手段は今しがた振り絞って撃った最後の魔力弾により、ついえた。

もう自分には、何も残ってはいない。

ルルアム一人を逃がす力すら。


俺は未だ、無力だった。

こんな事ならルルアムもヒカリと共に外に残し、自分ひとりで入ればよかった。

いや、それでは何も変わらない。

状況を打破するには、戦力が必要だ。

もしかしたら、ダリアさんを連れていれば、こんな事には・・・

はは・・・『好きにしていい』とか、突き放さなきゃ良かったな。


「くそ・・・・っ!」


悪態をついて、もがくのを止めるカイト。

もう、力尽きた。

そもそもこの仏像、強すぎ。

何度やり合っても、勝つビジョンが思い浮かばない。

何度やろうが、俺は負けるであろう。

抵抗なんか、無意味だ。

ルルアムも絶望の感情を顔に浮かべ、地面に座り込んでいる。


『ほほう、やっと諦めたか、少しは気に入ったぞ。 その心意気に免じて、一瞬で土の塊としてくれよう。』


すまないルルアム、助けられなくて。

ヒカリも、入り口に取り残す形になってしまうな。

アリアごめん。

こんなところで俺は・・・・


仏像の目が、一際ひときわまばゆく、赤く光る。

それと共に、土の壁にい付けられていたカイトの体は、土となり、それは重力と共に、ぼろぼろと地面へ崩れていった。


「カイト様!!!」


『侵入者は、何人なんぴとたりとも許さぬ!!』


涙を流し、ルルアムは地面にその体を、横たえる。

洞窟内には、仏像の笑い声だけが、大きく響いていた・・・・


諸都合で、投稿が遅れました。

ご迷惑をおかけしました。

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