第191話・新たな坑道
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うす暗いトンネル。
ピチョンピチョンと、上から垂れてくる水音だけが、トンネル内に反響する。、
その中を、カイトとルルアムの二人組みが、奥へと進んでいっていた。
先ほど入ってからそこそこの時間が経ち、入り口はだいぶ遠くなっている。
それにつれ坑内も、どんどん暗くなっていった。
トンネル内には明かりがなく、頼りはカイトの魔法で出現している、光魔法で灯る明かりだけだ。
「カイト様、まだトンネルは、続くようですね・・・・」
「うん、わりと長いな・・・」
むろん、男たるカイトが先頭。
二人しかいないので、殿は、ルルアムが努める。
彼女は先ほどから何かを探しているのか、キョロキョロと、辺りを見回している。
彼女は、元気なようだ。
しかしそれとは対称的に、坑道内をは何とも言い表せない、異様な空気で包まれていく。
歩き始めてもう、十分は経つ。
『地震で崩落して閉じられた』と言う割には、トンネルが長すぎはしないだろうか??
確かにあちこち崩れていて、通りにくいところもあるにはあるが・・・
それに、先ほどと比べて、空気が明らかに冷たい。
『坑道内に入ったから』では、説明がつかないぐらいには。
ヒカリが付いて来たがらなかったのは、この為だろうか??
カイトの疑問は、奥に進むにつれ、増して行く。
「カイト様、ここは思ったより、多くの鉄鉱石が埋まっているようです。」
「そうか、おっさん達に教えたら、喜びそうだな。」
カイトの返事に、この日一番の笑顔を見せてくるルルアム。
彼女が嬉しそうにしてくれて、何よりだ。
ここで入って、本当に何もなかったら、それはそれで、時間がもったいないので。
『収穫』があって、良かったと安堵のため息をつくカイト。
このまま、何もなければ良いのだが。
「あ・・・カイト様。 あれを・・・・」
「ん?」
ルルアムの指差す方向に、視線をうつすカイト。
そこには・・・・
◇◇◇
「行き止まり・・・・か。」
進路上に立ち塞がった土の壁に、右手を置くカイト。
ルルアムが見つけたのは、この坑道の終点。
どうやらこのトンネルは、ここで行き止まりのようだ。
昔はもっと、続いていたかもしれないが、百年前に起きた『地震』とやらで、落盤したのだろうと考えられる。
ここは、大きな採掘場になりえるだろう。
本当に、いい場所が見つかったと思う。
『掘ろうとすると事故が起こる』という話は、よそ者がここを荒らさないように作られた、作り話であろうと推測された。
だがこれからこの街での、鉄鉱石の採掘は『合同業者』によって行われ、それぞれの業者が、それぞれの持ち場を管理する事になる。
『自警団』などを組織して。
『荒らし』は、起こりえない。
だとすれば、こんな良い場所を放ったからかしにする事は、ないであろうと考えるのが、自然な流れであった。
何よりここは、『鉄鉱石』が多く埋蔵されている様なので。
異様な空気に包まれるこのトンネルに、嫌な予感がして入ったのであるが・・・
カイトもルルアムも、ほくほく顔である。
まさに、『棚からぼた餅』であった。
「特にここまで来る間にも、何も起こらなかったし、大丈夫じゃないかな? 何よりここを掘ったら、『合同業者』も上手くいくと思うんだけど。」
「はい! おじ様方に良い報告ができそうで、私も嬉しいです。」
カイトとルルアムは共に、笑顔で顔を見合わせる。
古びた坑道内には、若い男女の笑い声が響いた。
それは、下卑た笑いではなく、誰かが幸せになるのを、喜ぶような・・・・
カイト達は、心底嬉しかったのだ。
『許さん』
「ん、ルルアム何か言った?」
「いいえ、私は何も・・・」
今、何かが聞こえたような気がしたのだが・・・
気のせい・・かな?
気にしなくても別にいいか。
「ルルアム、早くここを出て、鉄道のルートチェックをしてから、おっさん達に報告に行こう! ここはもっと、深くまで掘れる気がするんだ。」
「はい、ここの分配についても、話し合わねばなりませんからね。」
きびすを返し、坑道を後にしようとする二人。
そこへまた、あの声が響いた。
『ここを掘る事は、ゆるさんぞ・・・!?』
坑道内に響く、怒気をはらんだ地響きのような声。
先ほど聞こえたのと、同じ声だ。
ルルアムにも聞こえたようで、驚いた様子で、塞がった坑道を見据える。
どうやら、空耳ではないようだ。
ここには俺と、ルルアムの二人しかいないはず。
なにより聞こえてくるこの声は、一度も聞き覚えがなかった。
少なくとも、この街のおっさんのタチの悪い、いたずらでは無さそうだ。
「誰だ!?」
カイトの上げた声が、坑道内に響く。
彼の魔法で作られた光源が、不気味に揺らめく。
坑道内の空気が冷たく、そして重くなった感じがする。
やはり、何かが居たようだ。
しばしの間、静寂に支配される坑道内。
ルルアムは恐怖を感じたのか、自然にカイトの後ろへと下がる。
カイトも冷や汗を流しながら、生唾をゴクリと飲む。
そんな彼らの目の前に立ちふさがっていた土壁が、轟音と共に崩れていく。
舞い上がる土ぼこりに、カイト達の視界は、奪われていった。
「ルルアム、ここから逃げろ!」
危険を感じ取ったカイトは、ルルアムにこの場からの避難を指示した。
何か起きるのは、確定だ。
ルルアムがここに居ては、文字通り彼女の命が危ない!!
「わ・・分かりました! でもカイト様も、お逃げ下さい!!」
「俺はダメだ! 何か良くない事が起こるなら、ここで食い止めないと!!」
領主として、この地の最高権力者として、ここから逃げるわけには行かない。
それは得てして、不幸へつながるから。
ルルアムも、それは分かっている。
彼女としても、この異様な場所から早く安全な外へ、逃げたいのは山々。
だがここに、彼を置いて行くのは、許容できない。
「しかし・・・!!!」
『何人たりとも、ここからは逃がさぬ!!』
ガラガラガラガラ・・・・・・ズドーン!!
「うわあああああああああ!!」
「きゃああああああああああ!!」
崩れていく坑道。
坑道内に響く二人の悲鳴。
それは察知魔法などでいつもカイトを観察しているダリアさんにすら、届いてはいなかった・・・・
何か、起きましたね。
必然的に今後の予定が、押す事となりました。




