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オタクはチートを望まない  作者: 福島 まゆ
第9章 次のステージへ・・・
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第188話・またまたグレーツクへ。

これからも、頑張っていきます。

感想など、ありましたら、どんどんお寄せ下さい!!

バルア計画が暗礁に乗り上げて、まだ一日。

カイトの昨日の、お通夜つやみたいな顔はどこへやら。

彼は実に、ハレバレとした表情を浮かべていた。

今にもスキップを始めてしまいかねないような、浮かれ具合だ。

この一連の行動で、妙に彼がバカっぽく見える。

いや、実際そうである事は確かなのだが・・・


その彼から発せられた言葉に、アリアは驚きを隠しきれなかった。


「へ? またグレーツクへ出向かれるのですか?? 先日お出かけになられたばかりではありませんか!?」


「いやさ、ちょっと相談に乗ってほしい事があるとかで、呼ばれちゃったんだよ。 危険はないし、ダリアさんも連れて行くから、安心して?」


カイトの『ちょっとグレーツクに行って来るねー』と言う,まるで、近所の居酒屋へ行くような言い方に、思わず『行ってらっしゃいませ』と、流してしまいかけたアリア。

が、そんな軽い話では、どう考えてもなさそうなので、せめて理由だけでも聞こうと、カイトの進行を食い止めた次第だ。

というより、そもそもグレーツクは、外国である。

彼はそんな場所へ、いったい何をしに行くと言うのか??

そして彼から返ってきたのが、『相談に乗ってと言われた』と言う返事である。


『誰にですか?』


と聞きかけたが、ヤメタ。

前に彼からは、グレーツクの国王と、懇意にしている旨の話は聞き及んでいる。

相談したというのは、その者に違いない。

かなり突っ込みどころ満載だったが、アリアは知らぬ振りをする事に決めたのだ。

彼が、真実を語ってくれる、その日まで。


「そうですか・・・カイト様は、お顔が広いですわね。」


「・・・・・・・・ウン。 込みいった話になりそうだから、明日は帰れそうに無いんだ。」


今回、彼がグレーツクへ赴く事になった理由は二つ。

一つは、発足させる事が決まった、鉄鉱石の合同採掘業者についての話し合い。

これは元々、前に赴いたときに話した事なので、さほど時間は掛からない見通しだ。

する事と言えば、誰と誰が手を組むか、どう作業を分担させるか、位では無かろうか??


そしてもう一つが、(カイトにとっては)メイン。

それは、グレーツクの鉱山内に、鉄道を敷くことである。

今後の合同業者の採掘などの事も考えて、今までのように少量ずつ削っては、港で売ると言うような非効率的な方式では、割に合わなくなってしまうだろう。

もっと多くの鉄鉱石を、一度に港まで運ぶ手段がほしかった。

そこで白羽の矢が立ったのが、『鉄道』だ。

これを坑道近くまで走らせ、その貨車に掘った鉄鉱石を次々に、載せていくのだ。

いわば貨物鉄道である。


その打診に関する魔導電話が、つい先ほど、グレーツクの研究所から、かかってきたのである。

聞いた時は、狂喜乱舞しかけた。

その建設に関する調査のために、赴くのだ。

思い立ったら行動するのが、カイトの信条である。

アリアには、以上のすべてが、秘密だが。


彼女も彼の詮索をする気は無いようで、感心しきりといった感じだ。

しかしカイトはここで知らぬ間に、墓穴を掘っていた。


「ではちょうど良い機会ですわ。 私も連れて行ってくださいませ。 その国王様と、一度お目通り願いたいですわ。」


「!?」


アリアから発せられた言葉に、目をむくカイト。

彼女は、カイトの言うグレーツク国王に、未だ会ったことが無かった。

その者はいはく、忙しくてなかなか会える時間が取れないらしい。

つまり、今回はチャンスだ。

話をするというのであれば、きっと自分にも会う時間ぐらいは、あるはず。

妻として、一度くらいは挨拶をしたいと言うのが、アリアの考えだ。


一方、カイトは冷や汗ダラダラだ。

その国王とは、彼女のまさに目の前に居る、自分のことなのだから。

『懇意にしている』とかいうレベルの話ではない。

つまり、アリアに来られては、非常に困る。

今回の件は、ルルアム絡みなので特に。


「いやいやいや! アイツって人見知りでさ、知らない人を見つけると、物陰に隠れて出て来なくなっちゃうんだ!!」


「はい!!???」


カイトの衝撃発言に、一瞬だけ意識が飛んでしまうほど、驚くアリア。

国王という存在は、何も内政だけやっていれば良いわけではない。

『交易』であれ『戦争』であれ、つまりは外交にも目を向けねば、国は成り立たないのだ。

それをおろそかにすれば、その国は数年と経たず、破綻はたんしてしまう事だろう。

つまりカイトの言う、『極度の人見知り』ではとても、務まらないのだ。

その辺り、カイトは何も考えていなかった。

何も考えずに、テキトーなその場しのぎの言葉を、言い放ってきたのだ。

まあ、今さらそれを突っ込んでも、しようが無いが。


「そ、そう・・なのですか? まあ、それならばご公務に差し支えては問題ですので、今回は自重いたしますが・・・・」


「うん、その方がいいよ! 今度アポはとっておくからさ!!」


動揺のあまり、『アポイントメーション』の略語を使ってしまうカイト。

当然アリアには、何の事かは分からない。

だが、言葉のニュアンス的に、『会える様に話す』というカイトの意図は汲み取ったようで、彼に一礼を返すアリア。

彼女はカイトと違い、この辺りの洞察力が非常に高い。

この彼女の理解力の高さが、ベアル領がなぜか上手くいっている、所以ゆえんである。

比べてカイトは『領主』のくせに、いつも何をしているのやら。


彼女のカイトへの疑惑は深まるばかりだが、突っ込んでも彼はお茶を濁すので、疑問は胸の中にしまう事にする。

自分が付いて行けないとなれば、アリアにできる事は一つだけ。


「ヒカリ、カイト様を頼みましたわよ? 何かあったら、話してくださいね?」


「うん、分かったー。」


傍らに居るヒカリの返事に、肩をすくめるカイト。

彼女はいわゆる『秘密』は、守り通してくれるのだが、いかんせんにも口が軽め。

アリアのその辺りを理解しているので、彼女へ『カイトの監視』を頼んでいるのだ。


ようは、ヘンな事をしなければいいのだ。

そうすれば、ヒカリの印象にも残らない。

そうすれば、流れる情報もない。

カイトは大丈夫であろう、と判断した。

これでアリアも満足したのか、数歩、後ろに下がり、見送ってくれる。


とにもかくにも、グレーツクへ向かう準備は整った。

早く向かって、現地調査をしよう!

そして、鉄鉱石運搬用の貨物鉄道を作るのだ!!


・・・・・不安は多いが。

きっと、大丈夫さ。


カイトの考え、未だ穴ぼこだらけです。

その内、轟沈しなければ良いですが・・・・

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