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オタクはチートを望まない  作者: 福島 まゆ
第9章 次のステージへ・・・
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第185話・合同採掘業者の発足計画

『魔王様は出稼ぎに行っておられます!』

執筆を開始しました。

もしよろしければ、ご覧ください。

こちらは最終話がありますので、悪しからず。

ルルアムに、グレーツクの治療院で『この現状をどうにかしてほしい』と言われたカイト。

彼はあの後、ルルアムとは別行動をとり、今はグレーツクの,鉄鉱石を掘り出す岩盤の上にある草原に、その身を横たえていた。

ここはグレーツク中で特に、俺が気に入っている場所だ。

下の草から香る青々しい匂いが、気持ちをやわらげてくれる。

シェラリータでも俺が悩んでいたときは、こうしていたっけな・・・・


彼女のどうにかしてほしいと言う問題は、とてもシンプルで、

かつ難しい問題であった。


『カイト様、ここに居る皆様は、怪我をすれば収入が途絶えてしまうらしいのです。 それは、明日を生きるのすら、大変な事にもなりかねないようなのです。 どうにかならないでしょうか?』


「どうにか、か~~~・・・」


カイトは頭の中でルルアムの言った言葉を反芻はんすうすると、大きくため息をついて、青く澄み切った空を、あおぎ見た。

この大陸に住むドワーフ達は、主な生業として、鉄鉱石を掘っている。

それは家族単位で掘られているものらしく、その他の者は、立ち入る事すら許されない場合が多い。

落盤などの事故が起これば、彼らはお金を稼ぐ手段を失ってしまう。

ルルアムがカイトに『どうにかしてほしい』と訴えたのは、まさにその事であった。


「どうにか・・・確かにしたいな~~~。」


誰に言うでもなく、カイトは空を仰ぎながら、先ほどより大きなため息をついた。

どうにかはしたいが、いい策は思いつかなかったのだ。

のど元まで何かが出掛かっているのだが、そこで詰まっているような・・・

なんとも、もどかしい気持ちにさせられる。


「スピーーーーーーー。」


「ハハ・・・・お前が、うらやましいよ。」


カイトは横で眠る、ヒカリに苦笑をらした。

こういう時は、なんとも自由な彼女がうらやましい。

俺も一冒険者だったあの頃に、出来れば戻りたい気分だ。


カイトも大概なぐらいに自由だったが、彼はそれを、棚上げしていた。

アリア達に行動を制限されている時点で、彼的には今は、『自由』ではないのだ。


「あああ、何か良い方法、思いつかないかなー。」


カイトは再び、ヒカリから視線を外して大空を見た。

心地よい風が、彼の頬をなでる。

久しぶりに、ゆっくりとした時間が流れた。

その折、ガチャガチャと、金属のこすれる音がした。

誰かが、近付いて来ているようだ。


「はあはあ、大公様、ここに居られましたか・・・・ ふうふう・・・」


「大公様、ご無事で・・・で・・・・・・・・何よ・・・・・・」


「(バタリ)」


「・・あ・・・・・・・・・・。」


しまった、忘れていた。

やって来たのは、グレーツクに来るにあたり、屋敷から連れて来た使用人さん達。

ルルアムに連れられ、彼らを研究所に置いてきてしまったのだ。

三人は全員、一様に息を切らしている。

どうやら、今まで俺達の事をずっと、探してきたようす。

俺達ばかりこんなところで休んで、悪い事をしてしまったな。


心なしか、呼吸困難に陥っているようにも見えたので、謝る前に、彼らに回復魔法をかけるカイト。

効果があったようで、死相すら浮かんでいた彼らの表情は、みるみる良くなっていった。

草原にうつぶせに倒れていたメイドさんも、元気を取り戻したようで、ゆっくりと立ち上がる。


「すいません、少し考え事をしていました。」


バツが悪そうに、彼らに謝罪するカイト。

このカイトの態度を前に、「お止めください、自分達はもう大丈夫ですから。」と、逆に回復魔法をかけてくれた事を感謝してくる彼ら。

優しい人たちで、良かった。


「これは良い場所ですね。 抜けていく風が、とても気持ち良い限りです。」


「でしょ? ここ、お気に入りなんだ。」


大きく深呼吸をして、気持ち良さそうにする彼らに、気分を良くするカイト。

その声に呼応するように、ヒカリも眠そうにしながら体を起こす。

いつもここには一人で来ていたのだが、多くの人と共有するほうが、ずっと良い。


「大公様は、いつも来ているのですか? いやはや、感服しました。」


「ははは・・・」


ゼルダさんの賛辞の言葉に、乾いた笑みを浮かべるカイト。

カイト自身、こうしてめられるのは苦手だった。

何もできていない自分が、さも『スゴイ人だ』と言われるのは、何とも形容しがたいフクザツな感情しか湧かないのだ。

止めさせようとするとエスカレートする傾向があるので、何も言わないが。


「カイト様、おこがましいとは思いますが、こちらで何を、お考えだったのですか?」


「ああ、ちょっとある住民に『ここの鉄鉱業のり方を、どうにかしてほしい』と頼まれちゃってさ。 ここまで出掛かっているのだけど、何も出なくて・・・」


メイドさんの質問に、首に右手を横に当てながら、説明をするカイト。

起きたばかりのヒカリは、興味なさそうに大きな欠伸あくびをする。

だがメイドさん達はカイトのこの説明に、呆然とした。


「大公様、なぜこの国の産業の事を、あなた様がお考えなのですか?」


「!!????」


彼らからの質問に、「しまった!」と思ったカイト。

さも当然とばかりに説明したが、彼らはカイトがグレーツクを治めている事は、知らない。

理由は簡単。

アリアに怒られないため。

「何かしらの流れ」でグレーツクを治める事になってしまったカイトは、アリアにこれを隠す事にした。

なんかもう、彼女に殺されてしまう気しかしないので。

その延長線上で、屋敷の者にも話していないのだ。


ようするに、カイトは自爆したのだった。


「いや! 今言ったのは、あくまで相談であって、友達の悩みを聞いていると言うか・・・」


そうしてカイトは、苦しすぎる言い訳を言い放った。

もう穴だらけすぎて、いっそ清々しいレベルだ。

アリアが聞いたら、彼女の何もかもが吹き飛ばされてしまう事だろう。

呆れ過ぎて。


「ほう、大公様は、この国の国王様と懇意こんいにされているのですか!? さすがは大公様です!!」


「・・・・・・・・ウン。」


さすがはカイト様なので、使用人たちはこの彼の、苦しい言い訳も、当然のことと受け取った。

カイトは非常識な存在なので、彼らもこういった対応に、慣れている。

未だ慣れていないのは、アリアぐらいだ。

というより、危険なのでこれは、慣れてはいけないヤツだ。

アリアが居なくなったら、どうなってしまう事やら。


そんな危惧はいざ知らず、カイトは狂気に出た。

彼は開き直って、彼らにも相談してみる事にしたのである。

『三人居ればもんじゅの知恵』とも言うではないか。

掘った墓穴には、とことん入ろうと言うわけだ。


「『一度ケガをすると、治るまで収入がゼロになる』と言う話を聞きまして・・・どうにかしてあげたいんですが・・・」


「はあ、また難しい問題でありますな。」


思いがけずカイトに愚痴ぐちを聞かされた彼らは、『相談されているのか。』と、思いのほかすぐに、理解した。

忘れがちだが彼らは元、王宮の使用人たち。

そんじょそこらの者より、ずっと優秀な人材なのである。

肉体的にも、教養的にも。


「我々は大公様のご厚意で、体調を崩しても、休む事ができる体制になっていますよね? 彼らにもそれが適用できれば・・・」


「できればな~~~!」


メイドさんの提案に、さらに頭を抱えるカイト。

屋敷とは全然違うので、そのままそれを活用する事はできなかった。

だがカイトの中に、何かがひらめいた。


「待てよ・・・ 個人で掘らずに、会社みたいなのを作ってもらって、従業員としておっさん達を雇えば・・・」


カイトの頭の中に浮かんだのは、昔日本のテレビで見た『炭鉱労働者』の姿。

おっさん達を鉄鉱石採掘の従業員として会社で働いてもらい、そこから給料を配分するようにする。

怪我などをすれば、日本のように『保険』とかで・・・・・

こうすれば、彼らをローテーションで休ませる事も可能だし、何かあれば代わりに誰かがシフトに入ることもできる。

いける!

これはいけるぞ!?


「ありがとう、いい案が浮かんだよ!? 俺はちょっとおっさん達と話してくるから!!」


「え・・た、大公様!?」


満面の笑みを浮かべてメイドさんの手を上下に振り回したカイトは、再び彼らを残し、街のほうへ高速で、下りて行ってしまった。

草原を吹き抜ける風は、どこまでも冷たかった・・・・

これからは基本、二作品同時での掲載となります。

当作品は、そのうちの一本となりますので、滞る事は無いと思います。

物語のストックが、パないもので・・・

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