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オタクはチートを望まない  作者: 福島 まゆ
第9章 次のステージへ・・・
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第184話・改革してください

これからも、頑張っていきます。

感想など、ありましたら、どんどんお寄せください!

今カイトは、グレーツクにある『鉄道研究所』に、機関車の追加発注のために来ている。

思いがけず既に、2台の機関車が出来ている状態で、残り1台もそう長くは掛からないとの報告を受けたカイト。

今回ここへ来た用件はこれだけなので、転移でベアルへ帰る事にする。

その折、カイトを呼び止める女性の声があった。


「どうしたの、ルルアム?」


展開していた転移魔法を中断し、声のしたほうへ頭を向けるカイト。

呼び止めたのは、研究所唯一の正規職員、ルルアムだ。


「あの、私のような者がこのような事を申して良いものか、分からないのですが・・・」


「ルルちゃんは今や、グレーツクの一市民だよ? グレーツクは出来る範囲で、『民主制』をとっているんだ。 言いたい事があるなら、遠慮なく言って?」


この国に、『民主主義』なんて言葉は無いだろうけど。

カイトは自分が政治が出来ない分、住民からの多くの意見などを総合し、これを反映させるという事をグレーツクでしている。

ざっくり言えば、スイスのような直接民主制を取っていた。

不平不満が少なくて、より合理性を求めた結果、こうなったのだ。

ドワーフさん達の評判は、とても良い。

カイトが政治を面倒くさがったのが、功を成したと言える。


「は、はい! あの、カイト様に、お頼み申し上げたい事があるのです!! 一緒に付いて来ては、頂けないでしょうか!?」


「お願い?? 珍しいね。」


汗をブワッと出しながら、大きく体を前方に傾けるルルアム。

カイトも彼女のこの発言には、驚きを隠せなかった。

ルルアムはいつでもどこか、カイトには及び腰で、自分からは何も『希望』などを言ってこない。

これは、これからのいいきっかけになりそうだ。

もちろん、聞かないなんて選択肢は無い。

別に時間ぐらいはあるので、少しぐらい彼女に付き合っても良いだろう。


使用人さんたちには、ちょっとここで、休んでもらおうかな?(魔法で)

彼女と居るところを見られると、何かとモンダイなので。

笑顔で「もちろん。」と返すカイト。

ルルアムもカイトのこの態度に、ガチガチに固まっていた顔の筋肉が、わずかにほころぶのが見て取れた。

そうすると彼女は、視線をカイトからドワーフのおっさん達のほうへと向けた。


「おじ様方、カイト様と少し外出をしてきても、よろしいでしょうか?」


「おうよ、誰もお前さん方のデートの邪魔なんか、しやしねーよ。」


俺達の方へ、手で『早く行って来い』と伝えてくるおっさん達。

その言葉に、お辞儀で返すルルアム。

サラッと流されかけたけど、このおっさん達、今しがた何か、へんなことを言わなかったか??


「え、『デート』って何のこと?」


キョトンとした表情を浮かべるカイトに、ニヤケた顔を返してくるおっさん達。

沸騰したお湯のように、急激に顔を真っ赤にさせるルルアム。

幸いカイトの顔は、おっさん達のほうへ向いていたので、ルルアムの表情は彼には見えていない。


「か、カイト様! お時間をあまりとらせたくはありません! 早く参りましょう!!」


「え? う、うん・・・・」


ルルアムに右手をつかまれ、そこそこ速いスピードで、研究所を後にする二人。

彼女に引っ張られているような感覚で、彼女の顔などは見えない。

この急な事態に、研究所の外で待たせていた、屋敷の使用人さんたちはただ、呆然とするほか無かった。

彼らがカイトを追おうとしたのは、土煙で何も見えなくなった後であった・・・



◇◇◇



「スピーーーーー。」


俺の背中には、すっかり存在を忘れていたヒカリ。(熟睡中)

隣には、ここまで俺を引っ張ってきたルルアム。

彼女の身でさすがにあの距離の疾走(しかも俺を牽引して)は、かなり堪えた様で、彼女の息が、かなり切れているのが分かる。

何でそこまで急いだのかは分からないけど、無理は禁物だよ?

彼女にはとりあえず、俺の回復魔法をかけてやる。

これで彼女の疲れは、取れたハズだ。

その事に気が付いたようで、彼女が礼を言ってくる。


そんな事は良い。

それよりも彼女が、俺を連れてきた場所は・・・・


「ルルアム、ここはグレーツクの、治療院か?」


「はい、ここでは幾人もの方々が、治療を受けております。」


やはりそうか。

外見は他の建物と大差ないため、今まで分からなかったが、中へ入ってみると、多くのベットの上に幾人かのおっさんが、横になっている。

彼らは、体に包帯を巻いていた。

鉄鉱石の採掘中などに、事故などで怪我をしたのだろう。


つまり彼女が、ここへ連れてきたのは・・・


「俺の魔法で、こいつらを治せって事? それ位なら別に構わないけど・・・・」


カイトは、ルルアムにそう、質問をした。

それ位なら、そう人数も多くは無いので、すぐに終わる。

だが彼女は、彼のこの言葉を否定するように、かぶりを振った。


「カイト様、この街だけではありません。 ここの皆様方は、お一人で鉄鉱石の採掘を行っているようなのです。」


「そうらしいね。」


それは前に、ドワーフのガロフさんに聞いた。

それぞれで持ち場を決め、彼らは鉄鉱石を掘っているらしい。

つまりは、縄張りである。

その中では、本人と子孫以外の者は、掘ってはいけない事になっているのだ。

これは、この大陸全体の暗黙の了解となっている。

そういう方法もあるだろうと、今までは流してきた。

なぜそれを彼女は、わざわざ話してきたのか。


「あの、私の浅はかな考えで、カイト様にこのような事を進言するのは・・・」


「いやもう、はっきり言って?」


彼女が何をしてほしいのか。

言ってくれなければ分からない。

カイトは萎縮いしゅくして顔をうつむかせるルルアムに、話の続きを促す。

すると彼女は意を決したように、こんな事を言ってきた。


「カイト様、ここに居る皆様は、怪我をすれば収入が途絶えてしまうらしいのです。 それは、明日を生きるのすら、大変な事にもなりかねないようなのです。  あの・・・・どうにかならないでしょうか?」


「また、問題か~~~・・・・」


ルルアムの嘆願に、カイトは頭を抱えた。

ルルアムの初の『希望』だ、これはどうにかしたい。

だが、どう解決したものか・・・


今日は、ベアルに帰れないかもしれないな。

次なる話が、遠いです。

なぜか。

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