第183話・列車の増備
これからも、頑張っていきます!!
感想など、ありましたら、どんどんお寄せください!!
「と言うわけで、列車の追加発注を頼みに来ました。」
ゴッ!!
「いたーーーーーーーーーー!!????」
ここはグレーツクに新しく出来た、『鉄道研究所』の一室。
このみなと近くにある建物は、玄関から直結する形で、おっさん達の集う事務所に、行き着く。
連れて来たゼルダさんをはじめとした使用人達は、建物の外で待たせてある。
ヒカリは、俺の背中で気持ち良さそうに、寝息を立てている。
ちなみに彼らは今、鉄鉱石掘りを続けながら、この研究所にタマに訪れる形をとっており、常駐しているわけではない。
だがまるで集会所のように、ここにはドワーフのおっさん達が、三人以上は常時、ここには居た。
この研究所に、カイトは来ている。
そして挨拶をした途端、そこに居たドワーフのおっさんに、殴られた。
「何が『挨拶』だ、こっちの忙しさも知らねえで! メシをお替わりするみたいに軽く言うんじゃねえ!!」
「そうだ、そうだ!!」
おっさん達が、声をそろえて俺に、批判の声を上げる。
こうなる事は、なんとなく分かってはいた。
俺だって、出来ることなら魔法で作って、彼らの負担をなくしたい。
だが貨車はともかく、機関車はデリケートで、それが出来なかったのだ。
せっかく作った試作機は、今はベアルの駅前に、オブジェとして飾っている。
駅の場所を知る、いい目印にはなった。(涙目)
それはともかく。
「材木卸などで、機関車がもっと必要になりそうなんですよ、お願いします。」
「そんな事、知るか!! 大体おれ達は・・・」
ここまで彼が発したところで、奥の扉がノックと共に開かれた。
扉の置くから姿を現したのは、この『研究所』唯一の正規職員。
ルルアムである。
正規職員とはつまり、国王((カイト))から給料をもらえる研究所職員と言うことである。
本来はガロフさん含め、ドワーフのおっさん達も、正規職員に指定するつもりであった。
だが彼らは、『俺達は誇りある鉄鉱石掘りだ。 研究所職員なんざを本業に出来るか』と、これを断った。
ルルアムも彼らのこの態度に遠慮をし、『正規職員』を断りかけたのだが、なぜかこれをドワーフのおっさん達が総出で止め、晴れて彼女だけが、正規の研究所職員になった。
以来、俺の知らないところでモノスゴイ馬力で、頑張っているらしい。
「こ、これはカイト様! お久しぶりでございます!! あああ、すみません、今は体が真っ黒で・・・すぐに湯浴みを・・・!!!」
部屋に入ってきたルルアムは、カイトが居るのを見つけると、慌てた素振りで彼に挨拶をした。
慌てる彼女に、気にするなと伝えると、再び彼女は、俺に対し一礼をしてきた。
体は油か何かで真っ黒に汚れており、目の下にはクマがあるように見える。
彼女が頑張っていると言う噂は、想像以上らしい。
「やあルルアム、久しぶり。 毎日、頑張っているらしいね。 でもちゃんと夜は寝ろよ?」
「は・・はい! 頑張ります!!」
カイトは彼女に暗に、『少しは休め』と言ったつもりだったのだが、彼女は顔を紅潮させ、ビミョーに違う答えを返して来た。
・・・せめて、逆効果になっていないと良いが。
室内のおっさん達が、こちらをニヤニヤした表情で、見ている。
何だろうか?
一応言っておくが、俺と彼女の間に、男女の関係は無いからな!??
「カイト様、このような場所に来て下さり、嬉しく思います。 本日は遊びに参られたのですか?」
「・・・・いや、ちょっと用事がね・・・」
黒く汚れながらも屈託の無いキレイな笑顔を、カイトに向けてくるルルアム。
そして、別に悪い事をしたわけでもないのに、バツの悪い表情を浮かべるカイト。
彼のこの返答に、ルルアムは全身の血の気が引いた。
「え・・・す、すみませんカイト様! 私のような者がカイト様の行動を推し量るなど・・・!!」
「・・・・・・・・・・・気にしないで?」
ルルアムにそんな事を言いつつ、カイトは内心、少なからずショックを受けていた。
ここへ訪れた目的が、『遊びに来た』と思われる。
それも、真面目になったルルアムに。
落ち込んで、然るべきと言える。
そもそもカイトが毎度のごとく、用も無いのに転移でたびたびこの地を訪れているのが、根本的な問題と言えるが。
一気に顔面蒼白となった彼女は、腰を90度まで曲げ、彼に謝罪を繰り返す。
おっさん達は、助けもしてくれず、大爆笑だ。
俺に味方は居ない。
「ルルアム、もうその辺で・・・ 今日は用事があるんだ。」
「は、はい! 汚名挽回の為にも、死ぬ気で頑張ります!!」
今話して、大丈夫なのだろうか?
ますます彼女にとって、眠れない夜が訪れないか、心配だ。
しかし言わなければ、ここまで来た意味がなくなってしまう。
カイトは意を決して、彼女に用件を話した。
「実はさ、ベアル=ボルタ間の列車本数を増やしたいんだ。 それで機関車がもう、三台ほど入用で・・・」
頭の後ろに手を当て、申し訳なさそうな態度をとるカイト。
しかしここまで聞いたところで、ルルアムは満面の笑みを浮かべた。
なぜ、そこまで嬉しそうにするのだろうか??
「本当でございますか、カイト様!? それならば今、ちょうど二台目が出来たところでございます! ぜひお持ち帰りください!! 残り一台も、突貫でお造りいたしますわ!!」
「うそ!?? もしかしてグレーツクに来てからずっと、作っていたの!!?」
カイトの疑問に、ハッとした顔になるルルアム。
機関車を作るには、たとえ一台でもかなりの、時間がかかる。
今はルルアムがグレーツクに来てからおよそ、十日目。
それで二台となると、たとえ三人で作業したとしても夜通しで、作業をした事になる。
どおりで、彼女の目の下にクマが出来ているわけだ。
彼女はバツが悪そうに、顔を下へ向けている。
カイトが自分の休息を気にしている事は、彼女はきちんと知っているのだ。
「ルルアム、とっても助かるよ。 でも夜はしっかり寝なよ?」
「・・・はい、ご心配をおかけして、申し訳ございません。」
言って、聞いてくれるだろうか?
カイトは、不安が隠しきれなかった・・・
そこのニヤニヤ顔のおっさん、ルルアムのこれ、知っていたんでしょ?
何で止めないんだよ。
彼女、過労死するぞ!?
次へのステップが、とてつもなく遠いです。
自分でも不思議です。




