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オタクはチートを望まない  作者: 福島 まゆ
第9章 次のステージへ・・・
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第182話・途中駅の打診

これからも、頑張っていきます。

感想など、ありましたら、どんどんお寄せください!

「僕に用事って何ですか?」


先日、アリアからもらった『バルアリゾート計画』の書類に目を通していたカイト。

そんな彼を訪ねてくる者が居た。

街の、材木を扱う商会の、使いの人らしい。


「はじめまして、大公様。 私はブレン商会の番頭をさせていただいております、『アルライド・ワシーガ』と申します。 本日はお忙しい中の突然の来訪、謹んでお詫び申し上げます。」


そう言って、俺に頭を下げてくるアルという名前らしい、商人さん。

人と会うという事で俺も、部屋を移動して、彼とは屋敷の客間で話していた。

何かと忙しいようで、俺の隣にいつも控えているはずの、アリアの姿は無い。

アポ無しの突然の来訪だったので、そういった対処が、間に合わなかったのだ。

(ちなみに『堅苦しい』と、それを導入したのは、カイト自身である。)

難しい事でないといいが・・・

ちなみにこういった人が訪ねて来たときには、ヒカリにも席をはずしてもらっている。

つまりこの部屋には、俺とアルさん以外、誰も居ないのだ。


「謝らなくていいよ。 で、用事って何?」


いつもの調子を崩さないカイトは、単刀直入にそう質問をする。

これに、ゴホンと一つ咳払せきばらいをする。

かなり、かしこまった話らしい。

思わず身構えるカイト。


「大公様、本日はある要望があり、参ったのでございます。」


「お願い? 言っておくけど闇取引の話とかなら、俺は聞かないよ?」


商人さんの『お願い』という切り出しに、強い態度をとるカイト。

大公になってこの街が大きく成ってからというもの。

カイトの元には、自らの利益を上げるため、大公である彼と手を組み、街の産業を独占しようなどと考える者などが、頻繁ひんぱんに訪れていた。

奴らは、とてもしつこい。

はっきり断っても、何度も訪れるのだ。

結局、彼らは何度目かで諦め、この街を去っていく者が多い。

こういう奴らにカイトは、怒りの感情がわいていた。

他の街では、こういった事が横行しているのだろうか??


カイトの言葉に、しばし呆然とするアルさん。

すると彼は、ふところから一枚の、紙を出した。

それを、「失礼します。」と言って、目の前のテーブルの上に広げるアルさん。


「これは・・・・。」


あごに手を当て、頭に大きな『?』マークを浮かべるカイト。

その広げられたモノを前に、彼は先ほどまでの『不信感』は消し飛んでいた。

テーブルの上に広げられたのは、ベアル領の地図。

前に鉄道を作る際に作った地図を、そのまま彼は市販したのである。

元々彼の魔法で作られたそれは、川やちょっとした丘陵きゅうりょうなど、地形が詳細に記されていた。

この世界において、何気に初の、市販された立派な地図であった。


この世界では、戦争が頻発ひんぱつしている。

もし敵方に自分たちの住む土地の地図が渡ってしまうと、それは脅威きょういとなる。

戦争において地形などは、勝つか負けるかの、重要なキモとなるのだ。

『テツの亡者』のカイトはこの辺りが、分かっていなかった。

相談もせず、このことがアリアにバレた途端に、彼が彼女に説教を受けたのも、そのせいである。

ちなみにカイトは、まだ理解していない。


「この辺りの地図ですね? これがどうにかしましたか?」


「ここなのですが・・・」


カイトの質問に、地図の一点を指差すアルさん。

それは、ベアル=ボルタ間にある二つの信号所の一つであった。

ここでは、単線を行く列車の、行き違いが出来るようにレールが二本、敷かれている。

二人の人が常駐しており、列車に旗で指示を出してもらっている。

列車はその合図で、発車をするのだ。

技術的に信号機の設置が難しかったので、応急措置だ。

つまり、ここは『鉄道業務用の』施設に他ならない。

なぜこの商人さんは、そんな場所を指差すのだろうか?


「ここは、鉄道の行き違い設備以外、何もありませんよ? もちろんこの先、ここへ街を作る計画は無いので、商店などを出しても・・・」


「いえ、違うのです。」


ははあ~~~。

ここに街ができるとか勘違いして、早手回しに商店を出したいと言いに来たんだな?

と思ったカイトは、その気は無いと商人さんに説明した。


しかし商人さんは、これにかぶりを振った。

分かっちゃいたが、ハズレである。

カイトの勘は今まで、当たったためしがないのでは無かろうか?

偶然を除いて。


「我々はここに、材木積み下ろし施設を作りたいと考えているのです。」


「材木の積み下ろし施設??」


にこやかに、笑顔を振りまく商人さんに、カイトは怪訝けげんな表情を浮かべた。

いったい彼は、何が目的なのだろうか?

そんな彼に畳み掛けるように、説明を始める商人さん。


「我々は先ほども申したとおり、材木を扱う商会です。 木の切り出しから販売まで、一手に引き受けております。」


ここまでの商人さんの説明に、無言でうなづくカイト。

彼には、覚えがある。

二年と少し前、ベアル近郊の森で、木を切り出したいと言ってくる商会があったのを。

たくさんある、事業許可証の発行手続きの中で一際、異彩を放っていたので、よく覚えている。

カイトはこの申し出に、『植林をするなら』と言う条件付で、これを受諾した。

この辺りは、彼らはきちんと、守ってくれているようだ。

まあ、守らなかったらこの街から、出て行ってもらうだけだけど。


「現状では、切り出した材木は、馬車でベアルまで運んでから加工をして、また出荷されます。 ですがこれでは、馬車の輸送量が少なく、かなりの手間なのです。」


「そうなんだ?」


「そこで我々も、『鉄道』を使わせていただきたいのです。 ここにある、この行き違い設備付近に、材木の積み込み設備を作る許可をいただきたいのです。 もちろん、整備費用は商会のほうで、負担させていただきます。」


商人のここまでの説明に、目を丸くするカイト。

これはつまり、『駅を作ってほしい』と言う申し出に他ならない。

今の交換設備のまま、材木の積み込みなんかされてはたまったものではないが、ちゃんと整備はするようだ。

それも、俺に頼むのではなく、自腹で。

彼がこの商人の申し出を、はねつける理由は無かった。


「もちろんです、ちゃんとそういった施設を作っていただけるなら、一向に構いませんよ?」


一転、笑顔を向けるカイト。

この彼の態度に、「ありがとうございます。」と、一礼してくる商人さん。

そこからは、安堵あんどの表情が見て取れる。

彼も、嬉しいようだ。

鉄道の夢は、どんどん膨れるな。


ところで一つ、俺は彼に聞きたいことがある。


「ところでアルさんは、なぜその為にわざわざここまで? 鉄道は『駅馬車組合』の管轄かんかつですよ?」


「申し訳ありません、大公様。 実は最初にそこへ赴いて、『まずは大公様にご許可を』と言われてしまいまして・・・」


「・・・そっか。」


つまはじきにされていないのが嬉しい反面、『そんな事まで俺に持ってくるなよ!!』と心の中で叫ぶ、カイトであった・・・

こうしてカイト達の仕事は、いつも多くなるのである。

駆け足気味で、ごめんなさい。

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