第181話・秘密裏に
これからも、頑張っていきます。
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ベアルにあった鉄道研究所が、グレーツクへ移設される。
その後、次の日にはカイトの転移魔法で、グレーツクへと向かって行った彼ら。
俺がベアルに帰る際、何度もお礼を述べていたルルアムの姿が、印象的だった。
「カイト殿様、森などへ、どういったご用件ですか??」
そして今、俺たちはベアル近くの森に居る。
当然のごとく約束どおり、ヒカリも横に居るぞ。
この三人以外には、誰も付いて来ていない。
ダリアさんは最強、というイメージからか、護衛兼メイドとして、彼女さえ連れて行けば問題ないことにされたのだ。
ノゾミは何やら疲れたらしく、屋敷で休んでいる。
「もしやカイト殿様、今度こそ戯れを・・・!!」
「!?」
背後から突如として放たれた、強烈なダリアさんの殺気に当てられ、息苦しさを感じるカイト。
横のヒカリも、眉をしかめる。
何やらまた、彼女は勘違いをしているようだ。
恐る恐る、後ろを振り向くと、口角を吊り上げた、世紀末臭をプンプン漂わせる、ダリアさんの姿があった。
「だ・・ダリアさん、違うよ!! 今回するのは、コレ!!」
そう言って、カイトは彼女の眼前に、アイテム・ボックスから出した黒い石を取り出した。
放っていた殺気を引っ込め、キョトンとしてこの石を見つめるダリアさん。
「これは・・・カラの魔石でございますね?」
「そう、魔石ガラ。 昨日、馬車組合の人たちに分けてもらったんだ。」
魔石ガラ。
それは、内包する魔力をすべて発散し、空っぽの状態になった、魔石のことである。
開通した鉄道の主な動力源は、この『魔石』
魔石ガラは、毎日かなりの量が発生していた。
これは開通早々、経済的な面で鉄道を圧迫していた。
魔石はそもそも、メチャクチャ高いのだ。
だからカイトは、逆転の発想に出た。
ちなみにどの辺が逆転したのかは、不明である。
「さあダリアさん! この魔石に、魔力を満タンまで注入してください!!」
「ええええええええええええ!!!???????」
魔石は空っぽになると、逆に周りの魔素を吸おうとする。
だからその特性を利用し、目一杯、魔石に魔素を吸わせようと言うのだ。
ズイッと、魔石ガラをダリアさんに差し出すカイト。
コレに、顔面蒼白でうろたえるダリアさん。
当然だ。
魔石が満タンになるまで魔力を放出したら、こちらがミイラになってしまう。
文字通りの意味で。
しかしダリアさんのこの態度に、心配無いと笑顔を向けるカイト。
「大丈夫だよ、ダリアさん。 俺も昨日試してみたんだけど、一日で十個も注入が出来たんだ。 ダリアさんはドラゴンだから、魔力がスゴイって聞いてさ・・・」
「・・・・・・。」
カイトのチート発言に、唖然とするダリアさん。
この人間は、本当に規格外すぎる。
今更ながら、ステータス表示の種族を偽っている風にしか見えない。
それが知りたくて、彼女は彼の傍に居るのだ。
いまだ、何一つ分かったことは無いが。
「お兄ちゃん、私もやるの?」
「ヒカリはまず、一個だけしてみてくれるかな? 魔力の放出はね・・・」
ヒカリの疑問に、カイトは『魔力の放出の仕方』を教えた。
やらせるのか・・・・・
『無知とは罪である』
この言葉の意味を、身を呈して理解するダリアさんだった・・・・
◇◇◇
「カイト様、バルアの『観光リゾート化計画』に関してなのですが、こちらの書類に後で、目を通していただけますか?」
「うん、分かった。」
夕飯後。
カイトの部屋に訪れたアリアは、彼に書類の束を手渡した。
いすに座るカイトは、机の上におかれたその書類をパラパラめくり、感嘆の声を上げた。
「へえ、もう区画整理まで終わったんだ?」
「皆様が乗り気で、協力を惜しまなかったようですわ。 ノゾミの功績による部分も大きいとの事です。」
「ノゾミか・・・・」
最近また、会えていない気がする。
お互い忙しいからな。
暇を見つけて、また彼女の好きに俺を、連れ回ってもらおうか?
先日は、とても嬉しそうにしていた事だし。
・・・なんか傍から考えると、おかしなセリフだな。
カイトのそんな考えはいざ知らず、アリアは話を続けた。
「バルアまでの『鉄道』の敷設も、考えなければなりませんわね、カイト様。」
「そうだね、まだまだ頑張らなくちゃ。」
そもそも件の『バルア観光リゾート計画』は、鉄道ありきの計画だ。
鉄道による『旅の日常化』が図れなければ、そもそもこの計画は、頓挫してしまうのだ。
これからその計画は、考えねばなるまい。
『それよりも』と、アリアが部屋の奥側へと視線を向けた。
「ところでカイト様、話は変わるのですが、あの元気なヒカリが、夕食も食べずに休むだなんて・・・・今日は何があったのですか?」
「・・・・・・サア?」
夕方に帰るなり倒れこむように、ベットにうつ伏せになったヒカリ。
いつもは元気一杯で、大食いの彼女が『食欲』が無いなど、前代未聞な事態であった。
言わずもがな、カイトの『魔石ガラ注入』により、ミイラになってしまったためである。
実際にミイラになった訳ではないが、その魔力消費に、彼女は憔悴しきっていた。
結局、魔石を七つも生成したダリアさんは、言うまでも無かろう。
「ふうん・・・・ まあ、良いですわ。 お渡しした書類は、見落としが無いようにご確認を願いますわ。」
「分かっているよ、アリア。」
アリアの釘刺しに、笑顔で答えるカイト。
ボルタまでの世界初の、鉄道が出来たのがつい数日前。
それなのにもう、次なる路線の話だ。
カイト達の夢は、広がる・・・・・
次なる路線。
うまくいくと良いですね。