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オタクはチートを望まない  作者: 福島 まゆ
第9章 次のステージへ・・・
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第180話・フラグの予感?

これからも、頑張っていきます。

ご感想や誤字、脱字などがありましたら、感想のページにて、お寄せください。

「じゃあアリア、俺は研究所に用事があるから、先に帰っててね。」


「分かりましたわ。 あまり遅くならないよう、お願い申し上げておきます。」


無事、奴隷たちの解放が終了したカイトは、『機関車用の魔石の調達を、シェラリータに打診してくれ』とアリアに頼んだ。

この先アリアに居られると、非常にマズイので、仕事を作り出してアリアに、先に屋敷へ帰ってもらう事にしたのである。

大事な事に間違いは無いので、あながちウソの要請ようせいでもないわけだし。


アリアの姿が見えなくなると、すぐにカイトも研究所のほうへと、足を向けた。

自然、足早になる。

これから向かうのは、『29人目』の奴隷の下。

俺が王都で買ったのは、男女など合わせて29人。

さきほどアリアと共に解放したのは、28人。

この事はアリアには気づかれていないようで、実に助かった。

弁明が非常に難しい件なので。

そしてその、『29人目』とはもちろん・・・・・


「こんにちは、ルルちゃん居る??」


ノックも無しに研究所に入るなり、目当ての人物を探し始めるカイト。

彼の行為は、かなりの無礼に値する行為だったが、最近このような事が常態化してしまっていた事により、彼をとがめるものは一人も居ない。

この辺り、所謂いわゆる、慣れであった。


「こ、これはカイト様! お疲れ様でございます!!」


「そっちこそ、お疲れ様。」


今はちょうど、休憩の時間中のようで、ドワーフのおっさん達はお茶をたしなんでいた。

給仕はルルアムがやっていたようで、目の前に居た。

作業中とかじゃなくて、良かった。


「よう小僧、来るなりこの女の名前を呼ぶとは、スミに置けねえヤツだな。 二股かける気か??」


「やだなー。 そんな事をしたらアリアに、八つ裂きにされちゃいますよ。」


ドワーフのおっさんの冗談に、冗談交じりに(実際そうなりそうだけど)回答するカイト。

このおっさん達は、相変わらずだ。

傍で聞いていたルルアムも、微笑ほほえみを浮かべている。


彼女と結婚など、ありえない話だ。

そもそもアリアと俺が結婚したのは、ルルアムが彼女を殺害しようとした事に起因する。

アリアは彼女を許せないだろうし、見たくも無いだろう。

数ヶ月前の俺も、必死で忘れようとしていた。

だが彼女は、傷心の優しい女性に成り代わってしまっていた。


これは、俺が原因だ。

俺がやった事のせいで彼女は、精神が崩壊し、その後『身分剥奪』という厳しい立場におかれ、現在に至る。

彼女はその事を俺に、感謝してきたが、そういう問題ではない。

こうして再会できたのも、何かの縁だ。

道を踏み外してしまった者だって、救われるべきだと俺は思う。

だから俺は、彼女が『幸せ』をその手につかむまで、サポートをして行こうと思っている。

今回は、その先駆けだ。


「ルルアム、今日をって、君の身分を『市民』にする。」


「え、それはどう言う・・・・」


ルルアムがここまで言葉を発したところで、カイトはふところから出した彼女の『隷属契約書』を、彼女の目の前で引き裂いた。

それと共に、彼女の首や手足につけられたままになっているかせも、音を立てて壊れ、床に落ちていく。

今やそれらは、ただのゴミへと成り変わった。

こうなることを予想していたようで、ドワーフのおっさん達は、黙ってその光景を見つめる。

驚いたのは、ルルアム本人だ。


「か・・カイト様!? この契約書と枷は、私が奴隷であるために必要不可欠なモノだったのですよ!? それを・・・・・!!!」


カイトに『奴隷』の説明をしながら、必死に粉々になった契約書や枷の残骸ざんがいを拾い集めるルルアム。

その彼女の手を、カイトがつかんで、それを止めさせた。

首を横に振るカイトに、顔を上げて視線合わせるルルアム。


「君が奴隷である必要なんて無いんだよ。 そんな人の自由を束縛するようなモノ、この領地に必要ない。」


「し、しかし・・・・!!」


沈痛な面持ちで、今にも泣き出してしまいそうなルルアムに、カイトはここぞとばかりに、ある報告をする。


「実は先日、この研究所を、グレーツクに移設することが決まったんだ。 もう建物も建っているから、今すぐにも引越しできるよ!?」


「まて小僧! そんな話、聞いて無えぞ!!?」


カイトの突然の話に、驚愕きょうがくする研究所の皆様方。

そもそも彼らは、グレーツクに家族が居る。

それをこっちの勝手で、ベアルに何ヶ月も張り付けにしてしまったのだ。

あくまで彼らが『交換留学生』であるという立場上、帰さねばならない。

でもそのままで帰しては、あまりにももったいないので、グレーツクに諸々、すべて移設しようと言うわけだ。


以上のように鉄道関連事項だと、カイトは非常に頭の回転が速かった。


このカイトの説明に、彼らドワーフ達も納得してくれたようだった。

そして肝心のルルアムだが・・・・


「ルルアム、そんな訳でこのベアルの研究所は、閉鎖になる。 研究所は、グレーツクで存続される事になるんだ。」


「では・・・私もその地へ行けと?」


ルルアムの疑問の言葉に、即座にかぶりを振るカイト。

この彼の反応に、コテンと、首をかしげるルルアム。


「命令じゃない。 ルルアムはもう、奴隷ではなくて一市民だ。 どうして生きて行きたいかは、自分で決めていいんだ。 それに俺の許可なんて、必要ないだろう?」


この言葉に、衝撃を受けるルルアム。

自分が身分剥奪をされてしまったのは、己のみにくい心のせいだと思っている。

そのせいで奴隷になり、しいたげられるのも、仕方の無いことだと。

生きているだけ、犯した罪を償えると、そう思っていた。

その罪は、未来永劫みらいえいごう死ぬまで、許されることは無いと思っていた。


しかし今、自分は『奴隷』から解放され、生き方を指し示してもらった。

それも、三年前に『あやまち』を自分に気付かせてくれた、男性に。

罪はまだ、許されていないであろう。

でも・・・・


「あ、ありがとうございます!! これからも、カイト様のためにグレーツクの地で頑張ります!!」


「・・・いや、俺の為じゃなくて良いんだけど・・・・」


目一杯、彼に感謝を述べた。


自分に、こんなことを言う資格は無いだろう。

でもアリアは、幸せ者だと思った。

こんな優しい方の、傍に居られるのだから・・・・




◇◇◇



「あなた達を、解放します!!」


大公様が言われた言葉は、私の頭に響く。

私は、生まれてからずっと、奴隷だった。

ある屋敷では、馬車車ばしゃぐるまのように働かされた。

ある屋敷では、その屋敷の主人に、犯された。

ナンバーフォウ。

その時の主人に呼ばれていた番号が、私の名前代わり。


今回王都で買われた時も、そうされるに違いないと思っていた。

だが実際は、主人であるこの街の大公様は、私たちにとても優しく接してくれた。

疲れれば休ませてくれた。

空腹であれば、温かい食事を与えてくれた。

彼は、奴隷の私に、『普通の暮らし』と言うものを教えてくれた。

そして彼は、私を含め、みんなを本当の意味で、解放してくれた。


嬉しさと共に、何か分からない気持ちが、私の中から湧き上がってきた。


この胸の内に広がる、気持ちはなんだろう?

温かいのに、焼け焦げてしまいそうなモノはなんだろう??

私にはまだ、それが何なのかが、分からなかった・・・・・・

後の展開の、布石打ちの回でした。


布石が解放されるのは、しばらく先ですが。

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