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オタクはチートを望まない  作者: 福島 まゆ
第8章 カイトの願望
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第177話・前夜

これからも、頑張っていきます。

感想など、ありましたら、どんどんお寄せください!!

ガゴン!!


「バッカ! テメェ、せっかくの機関車様を壊す気か??  発車の前に、ブレーキハンドルを右に全開で回せと言っただろうが!!」


「ヒィィ・・! ご・・・ごめんなさい!!」


朝、ベアルの駅に着くと、ドワーフのおっさんの、大きな怒鳴り声が駅の中まで聞こえてきた。

ホームには、明日から走り出す、『鉄道』が止まっている。

そこには、多くのドワーフのおっさんと、多くの馬車組合のおじさんやお兄さんたちがいる。


鉄道もとうとう、開業を明日に控え、駅や列車には、色とりどりの飾り付けがなされている。

馬車組合の人たちも、その関係でここにいるのだ。


『鉄道』は、開業と同時に、『駅馬車ギルド』の管理下に置かれる手はずになっている。

これは一ヶ月ほど前に、鉄道開業の反対のデモが発生した為である。

デモの参加者は、全員が『駅馬車ギルド』の組合員だった。

鉄道開業による、失職を懸念しての行動だったようだ。


ここでカイトは、鉄道をこのギルドの管理下に置いてもらう事とした。

駅員、機関士、車掌、保線員などなど・・・

これら一切を、『駅馬車ギルド』に行ってもらう。

人員をどうするか悩んでいたので、こうすれば一石二鳥だ。

ちなみに列車の製造などは、ドワーフのおっさん達に、一任したままにする。



「ほら、次のヤツだ!! ボヤッとしていると、機関車でくぞ!?」


前の人は終わったようで、次の人がおっさんの前に、進み出てくる。

あの人、ビクビクしてるよ・・・


「お・・・お手柔らかに・・・・」


「ああ!!???? はっ倒すぞ、テメエ!?」


「ごごご、ごめんなさい!!」


恐怖による支配(?)だろうか。

これでは、馬車組合の御者さんたちが可愛そうだ。

助け舟を出してやるか。


「朝から気合、入ってるねー。」


「何だ小僧、来てやがったのか。  頼んでもお前にはもう、神聖なる機関車様の運転室には、乗せてやんねーぞ?」


「えー? そんな~~。」


まずはソフトな挨拶あいさつから。

スパルタ教育中だったドワーフのおっさん達の態度が、幾ばくか軟化した。

襟首えりくびつかまれてた御者さんも手を離してもらい、ホッと安堵あんどのため息を漏らしている。


「どうですか、明日に向けた開業準備は。」


「ま、ボチボチだな。 モヤシばかりだが、お前よりは使えそうなヤツらばかりで、こっちは大助かりしているぜ。」


言葉を発するたびに、イチイチ俺をディスらないでくださいよ。

少なからず、傷つくんですからね?

言っても、直してくれないだろうけど・・・


「あはは、作業が順調そうで、何よりです。 ところでルルアムの姿が、見当たりませんが?」


「アイツなら、研究所でペンを走らせているはずだぜ? 設計した機関車が、納得いかないんだとよ。」


「へ~~~。」


彼女は、頑張り屋だな、とつくづく思う。

このおっさん達が褒めるほどのモノを作り上げたと言うのに、まだ気が納まらないのか。

今度何か、彼女が喜ぶような事をしてあげたいと思う。

なにか、考えておかなくちゃな。


「そっちの嬢ちゃんは、コイツと違って利発そうだな。 おい、お前はこんな阿呆あほうに育つんじゃねーぞ?」


「?」


俺が連れている、ヒカリの姿を見つけたおっさんは、彼女の頭をなでる。

魔族とバレないよう、彼女は胸元を中心に、幻惑魔法で隠している。

これで、直接に触られない限りは、バレることは無い。


それにしても彼が、子供好きだったとは意外である。

この光景だけ見ると、彼が優しいおじちゃんにしか見えない。


「ジロジロと、薄気味わりい顔をこっちに向けて来るんじゃねえよ。 お前がここに来た、用事は何だ。 早くそれを言え!」


「ああ、ゴメン。 ただ様子を見に来ただけなんだ。 ここら辺りで、おいとまするね。」


「は、なんじゃそりゃ!? テメエ、冷やかしに来ただけかよ!??」


ドワーフおじさんの呆れ顔を尻目に、カイトはヒカリと手をつないだまま元来た道を、戻って行った。

それを、悲壮感漂う表情で、見送る馬車組合の面々。


「そら、練習だ!! 出来るようになるまで、今日は帰さん!!」


「お・・お手柔らかに~~~!!」


彼らの苦労は、始まったばかりである。



◇◇◇



「お兄ちゃん、人間がいっぱいいるね。」


「ああ、いつもより多いようだけど・・・明日の開業を聞きつけて、来たのかな??」


ベアルの駅から、家路へ着くカイトは、ヒカリの言葉に賛同する。

いつもより、心なしか、人の往来が多いように感じるのだ。

旅人が多く、カイトの姿を見つけるたび、横でひざまずいて来る。

俺は、どこの神様だろうか??

いつもより、めっぽう歩きにくいのだ。

俺の顔を知っている街の住民は、こちらへ苦笑いを返してくる。

俺に助け舟とかは、無いんですね。


「お兄ちゃん、さっきのおじさんに頭を撫でられたけど、痛かった・・・」


「よくガマンしたな。 偉いぞ。」


カイトに撫でられ、嬉しそうにはにかむヒカリ。

彼女のこの系統の言葉は、何かのおねだりのサインである。

その時の嬉しそうにする顔が、実に可愛いので、つい何度もやってしまう。


「さ、ヒカリ。 今日は屋敷で前夜祭があるらしいぞ? 俺たちも手伝おうな!」


「それって、美味しいの!?」


「ああ、シェフさん達が美味しい料理を準備してくれるってよ?」


「やったーーーーーー!!」


カイトの言葉に、笑顔を振りまくヒカリ。

その声は街中に響き渡り、街全体のお祝いムードに、一層、拍車をかけたのであった・・・・

次話。

とうとう最終回!!

・・・な訳あるかい。

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