表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オタクはチートを望まない  作者: 福島 まゆ
第8章 カイトの願望
188/361

第176話・改めて告白を

これからも、頑張っていきます。

感想など、ありましたら、どんどんお寄せください!!

ある日の昼下がり。

俺の家のリビングには、一人の来訪者の姿があった。

彼女は白い修道服に身を包み、アリアと話に花を咲かせている。


この街の大聖堂の司教、イリスさんである。

彼女はタマに、こうしてこの屋敷に訪れては、アリア達と話していくのである。

気さくな人だとは思っていたが、ここまでとは思っていなかった。

『司教』という立場なのに、こうちょくちょく、やって来て問題はないのだろうか?


カイトは自分のいつもの行動を棚上げして、毎週この家へやってくる、イリスさんの心配をした。

言わせてもらえば、『大きなお世話』である。


「まずはカイトさん、この度はおめでとうございます。」


「え、何が??」


そしてイリスさんが言ってきたのは、まず初めは俺への、祝福の言葉であった。

一瞬、何の事だか側からなかったカイト。

それを汲んで、カイトの脇の辺りを、小突くアリア。

それに、やっと何を言われたのかを理解したカイト。

この辺り、まだ彼はニブイ。


「そうそう、三日後に『鉄道』が開通するんだよ、長かったな~~~。」


「存じ上げています。 ご念願がかなって、何よりです。 きっと神様が、カイトさんをお導きくださったのでしょう。」


そう言って目を閉じて、胸の前の辺りで両手を合わせ、お祈りのポーズを取るイリスさん。

彼女は、マイヤル教という宗教の、聖職者だ。

その信者の一人であるアリアも、それにならって同じように、お祈りをささげる。

無宗教論者のカイトには、苦手な光景だった。

別に、イリスさんがどーとかでは、無いが。

ちなみにカイトは、お祈りしていない。


しばしの静寂の後、彼女達のお祈りも済んだようで、お祈りのポーズを解き、目を開ける。

するとアリアが、何かを聞きたそうにイリスさんに、言葉をかけた。


「聖女様。」


「アリアさん、私の事はお名前で呼んでくださいと、言ったはずですよ?」


イリスさんはそう言って、かぶりを振って、アリアの口元に人差し指を立てていった。

一瞬、言葉を止めて息を呑むアリア。

何この一コマ。

イリスさん、かっこいーーー!!


カイトのそんなバカな考えをよそに、アリアは言葉の続きをつむぎ始めた。


「イリス様、先ほどカイト様に『彼が鉄道を作りたい』と言っていた事を、知っていたとおっしゃいましたが・・・・ そもそもなぜ、カイト様とイリス様は、お知り合いに?」


「い・・・いや! アリア、それは・・・!!!」


アリアがイリスさんに質問した内容に、大慌てするカイト。

彼がそもそもイリスさんと出会ったのは、三年ほど前。

王都で世界がイヤになって、自殺未遂したことまでさかのぼる。

あの時彼は、こってり駄女神様に、怒られたのである。

以来、自分がしたい事を探し続け、現在に至る。

ちなみにまだ、発展途上だ。


なーんて事、アリアには知られたくなかった。

過ぎたことではあるが、恥ずかしい歴史であるのである事には、変わり無いので。

どうにか、話題を変えたい。


「あ、あのさイリスさん、それよりも・・・」


「フフ。 いいではありませんか、カイトさん。 彼女はあなたの、伴侶はんりょなのでしょう? 夫婦の間に、隠し事はよくありません。」


「・・・・・。」


無理であった。

カイトよりイリスさんの方が、数枚上手である。

分かってはいたが。


そうしてイリスさんは、カイトと出会った時の話をし始めた。

『彼が、ノゾミとけんかをして、落ち込んでいたところで会った』という事を。

アリアはこの話を顔を真っ赤にさせながら、大いに聞き入った。

時折、こちらに伺うような視線を向けてくる。


非常に恥ずかしい話をされてしまったが、俺の意向を汲み取ってくれたのか、イリスさんは『自殺未遂』の話はしなかった。

ひとまず、ホッとした。


「カイト様、その・・・・今更なのですが、私などがカイト様の傍にいて、よろしいのでしょうか?」


「え・・・何を今更。」


彼女達の話に一区切りがついた頃、アリアがこちらに不安げな表情を向けてきた。

もう、結婚してから三年近くが経つ。

今更それを言うのか、って感じだ。

そもそもそれは、どちらかと言えば、俺のセリフである。


「アリアは俺なんかより頭もいいし、度胸もあるし、すごく尊敬しているんだよ?」


「・・・カイト様、女としてその褒め言葉は、とてもフクザツなのですが・・・」


どうしてだろうか?

常日頃から思っていた事を、そのまま口に出しただけなのだが・・・・

アリアは、すごくビミョーな表情を、こちらに向けてくる。

この際、いい機会でもあるし、いつも思ってることを言うか。


「え、そう?? でもアリアは本当に器量もいいし、厳しいけどなんだかんだで優しいし、姿かたちもすごくキレイだし・・・俺には過ぎた嫁だなって、いつも・・・。」


「わ、分かりましたわ、カイト様。 もうお止めになってください。 恥ずかしさで死んでしまいそうです・・・」


それだけ言って、アリアはソファに深く腰掛け、顔を両手で押さえ始めた。

心なしか、頭の辺りからは湯気のようなものが立ち昇っているように見える。

俺は何か、ヘンな事を言っただろうか?


「フフフ、お二人は本当に、愛し合っておられるのですね。 これもきっと、神様の思し召しですわ。」


「いやいや、イリスさん!! そういう話じゃなかったでしょ!??」


カイトはアホなので、自分が言ったことが『アイラブユー』の遠まわしバージョンである事など、気付いてすらいないようだった。

口元を、ムズムズさせるイリスさん。

彼女もこの事態に、笑いがこみ上げてきているようだった。

言わなくても言い事まで言って、勝手に自爆したのは彼なので、(気付いてないけど)笑ってもいいと思うのは、作者だけだろうか??


「カイトさんが、『アリアさんを泣かせた』などと言う話を聞いて、少し心配になって来たのですが、杞憂きゆうだったようですね。」


「あ・・・あははは・・・・・。」


イリスさんの言葉に、乾いた笑みを浮かべるカイト。

アリアは、相変わらず両手で、顔をおさえて、ソファでうずくまっており、微動だにしない。

先日その件は、アリアが立ち直った事で一応、解決という事になった。

少しはまだ、気落ちしているようだが、だいぶ良くなったと思う。


あの話、イリスさんの耳にまで入っていたのか・・・・

人の噂って、コワイ。

恐怖心をつのらせるカイトをよそに、イリスさんは話を続ける。


「カイトさん、鉄道の開業は、三日後でございましたね?」


「ああ、そうだよ。 皆に手伝ってもらって、やっとここまで来たんだ。 嬉しいなー。」


そう言って、満足そうにするカイトに、微笑みを向けてくるイリスさん。

そうして、立ち直ったアリアと共に、『仕事がある』と言うイリスさんを、見送ることにした。


「カイトさん、今日はとても楽しかったです。 三日後の鉄道開業、教会としましても、全面的に祝福させていただきますわ。」


「ありがとう。」



どこか意味深に、カイトにイリスさんはそう言い放ち、教会のほうへと帰って行った・・・


「カイト様・・・」


「ん、なにかあった? アリア。」


「いえ・・・やっぱり何でもありませんわ。」


こっちも意味深な・・・・

まあ、いいか。


イリスさんを見送り終えると、カイト達は屋敷の中へと入って行った。

業務放送。


カイト様は気付いていません。

チャンスです!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ