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オタクはチートを望まない  作者: 福島 まゆ
第8章 カイトの願望
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第171話・完了

これからも、頑張って行きます。

感想など、ありましたら、どんどんお寄席ください!!

「大公様、ご報告いたします。 駅とレールの敷設など、予定の全ての工事が、完了したとのことでございます。」


多くの書類を片手に、目の前でそう報告をしてくる騎士さん。

俺はそれを聞いた後、念押しをするように質問をした。


「近隣に、巨大な魔物などはいないね? 壊される心配はないね??」


カイトのコレに、苦笑交じりに言葉を返す騎士。


「ご安心ください、魔物はF級ですら確認されていません。 盗賊などもこれまで、一度も出没した事はないので、ご心配には及びません。」


「そうか・・・・・」


騎士の答えに、ホッと安堵あんどのため息を漏らすカイト。

これまで彼は、いい所で何か起きては、予定が先延ばしなどに陥っていた。

今回のこれも、そこから来るものであった。

しかし今回ばかりは、ほとんどそういった事は、起こっていない。

彼が安堵あんどするのも、無理はなかった。


ここに三年も勤めている騎士さんも、そのあたりは理解していた。


「ちょっと、出掛けてくるよ。」


「大公様、どちらまで・・・?」


「『研究所』さ。 夕方までには戻るよ。」


「そうでございますか・・・・行ってらっしゃいませ。」


研究所は街中にあるので、特に護衛やメイドを連れて行く義務はなかった。

騎士さんのこの質問も、そこから来るものであった。


「お兄ちゃん、今日も『研究所』に行くの? あそこつまんないよ。」


「ごめんなヒカリ。 大事なことがあるんだ。」


数日前以来、片時も離れてくれなくなったヒカリが、不満げな表情を浮かべる。

彼女の気持ちは分かる。

別に戦うとか、激しいことをするわけではなく、毎度する事といえば、『話し合い』。

彼女には、つまらなくて仕方が無い時間なのだ。

ならば屋敷でアリアと一緒に留守番して遊んでもらえ、と言えば『それは嫌だ』と言うので、連れて行くしかないのであった。

別につまらないからと言って彼女は、騒がしくしたりするわけでもないので、カイトは気にしない。


「お兄ちゃん、いつも好き勝手やってるんだから、今度手が空いているときに、遊んで。」


垢抜あかぬけない笑顔をこちらへ向けてくるヒカリ。

正直、可愛い。

可愛いが、彼女の『遊んで』は、街を殲滅せんめつないし、蹂躙じゅうりんしたいと言っているのと同じである。

前回が、そうだったのだ。

スラッグ連邦の邦都襲撃以来、すっかり味を覚えてしまったらしい。


「・・・常識的な、許される範囲内でな。」


「やったーーー!」


カイトが彼女にいえるのは、現状これが精一杯だった・・・・・


◇◇◇


「おせーーぞ、小僧!! さっさとこれを運び出しやがれ!! 次が出来ねえだろうが!!」


「ごめん、ごめん! いますぐ運ぶから!!」


研究所に到着して早々、カイトはドワーフのおっさん達に怒られた。

別に約束に遅れただとか言うことではなかったのだが、カイトは彼らに謝罪をした。


「これかい? 今日出来たと言うのは。」


「ああ、文句あるか?」


カイトたちの前にあるのは、いわゆる『貨車』が三両。

箱のような形の車体に、二対の車輪だけがある。

この中に、『鉄鉱石』や『その他の交易品』を入れるのだ。

彼らは鍛冶的かじてきな魔法でこれを作っていたので、出来るのが早い。

ちなみに昨日は、二両目の機関車が完成した。


「昨日も作った機関車が、あと何両か要るんだろ? それと同時進行だから、これからもこんなもんだ。 文句を言うなら自分で作れ!」


「文句なんか無いですよ! いつもありがとうございます。」


彼らに礼を述べた後、感慨かんがいにふける、カイト。

これで貨車は全部で六両。

実際は、『車掌車』的な車両が中に含まれているので、貨車は四両。


「ねえ、お兄ちゃん、『かしゃ』についてるあの、大きな丸いのは何?」


「ん、あれか? あれはこの列車を、止めるための設備さ。」


ヒカリが指差したのは、貨車の横についた、大きなハンドル。

これは正確には、非常用のブレーキハンドルである。

何かあったとき、これを回して、ブレーキをかけられるようにしたのだ。

ちなみに通常時は、『余剰魔素』を活用して、機関車からの制御でブレーキがかかる。

いわばこのハンドルは、『保険』のようなものだ。

使う機会がない事を、望む。


「一丁前に何を勝手に講釈こうしゃくたれてんだよ、小僧。 それはこの女の仕事だろうが、なあ??」


「い・・いえいえ! さすがはカイト様です。 昨日の一度のご説明だけで、覚えてしまわれるなんて。」


悪態をつくドワーフのおっさんに、慌てつつカイトを賞賛するルルアム。

彼の記憶はただ、『興味がある』から、忘れなかったダケである。

日本での、少しの知識もあるし。


それよりも。


カイトを賞賛する彼女の頬には、黒い汚れがついている。

もしかしなくても、列車作りの最中に付いたものであろう。

着ているボテッとした作業着も、黒く汚れている。

前の彼女を考えれば、信じられないことであった。

それだけ彼女が頑張っているという、証明でもあった。


「いやー、頑張ってるな~~。」


「は、なんだそりゃ??」


彼女の『昔』を知らない彼らは、真面目で聡明そうめいな彼女しか知らないので、カイトの言葉の意味は、通じない。

それが、彼女にいい影響を与えたのだ。

これからも彼らに、それを教える気は無い。

何より、『俺だけが知っている事』とか、なんだかロマンを感じるし。


「おい、小僧!! うす気味悪い笑顔を見せてねえで、さっさと出来た貨車を、駅に持ってけ! 俺たちは次の仕事で忙しいんだ!!」


「あーー、ごめんごめん。」


収納の魔法に、大きな貨車三両を入れるカイト。

相変わらずの、能力バカである。


「明日も、今日位に来ればいいかな?」


「さあな、へんな時間に来たらたたき出すとだけ言っておく。」


「エー? それじゃ分かりませんよ!?」


次に彼らが作るのは、『客車』。

数日後に控えた『試運転』に備えて、彼らには様々なこの路線で走る予定の、車両を作ってもらっている。


カイトは出来た貨車を手に、ベアルの商業地区に出来た駅へ、ヒカリと共に向かった。

ここには、機関車二両に貨車など六両がある。

この世界初の鉄道は、もう目前であった・・・・

路盤などの鉄道施設は、完成。

車両作りなども、順調のようです。

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