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オタクはチートを望まない  作者: 福島 まゆ
第8章 カイトの願望
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第170話・魔導機関車

説明口調の話です。

魔導機関車の形などが説明されます。

「よー、諸君の皆様!! お約束どおり『一週間後』に参上しました。」


「--ったく、昼休憩と同時に現れんじゃねえよ、このボケナス。」


カイトのバカっぽい挨拶あいさつなぞガン無視で、悪態をついてくるドワーフのおっさん。

俺はただ、言われたとおりの時間にやってきただけである。

理不尽だ。


「『れーるていけつ式』とか何とかはどうした? 今日じゃなかったのか??」


「そうだ。 これでもう、今すぐにでも運行開始が出来るんだろう?」


「それは昨日。 それにレールが一本つながっただけで、交換設備も駅も、まだ出来ていない所は沢山あるんだ。 開業はまだ先だよ。」


カイトのこの言葉に、「なーんだ」と、ため息をつくおっさん達。

鉄道は、そんなに軽く出来るモノではないのだ。

でも積み重ねのおかげで、ここまで来れたのだ。


「こ・・これはカイト様、このような場所へようこそ、おいでくださいました!!」


「よ、相変わらず頑張って・・・」


「きゃああああああああああああ!!??????」


ここまでカイトが発したところで、ルルアムが悲鳴を上げて卒倒した。

床に叩き付けられる前に、それを抱きかかえるおっさん。

ほっとしたが、なぜ彼女は卒倒したのか。

ここにいるのは、俺とドワーフのおっさんと・・・


「お兄ちゃん、あの人健康そうだよ? どうして倒れたの??」


「・・・・。」


ヒカリが居るの、忘れてた・・・

彼女は不思議そうに、倒れたルルアムの方を指差す。

彼女の胸元には、赤黒い魔石が輝いている。

これが露出していないと、居心地が悪いのだそうだ。


彼女は、ようするにこの世界で『恐怖』の対象となる、魔族である。

イロイロあって屋敷に居るのだが、今でもっても、彼女をはじめてみた者は、こうして卒倒する。

彼女の存在を忘れ、配慮をおこたると、こうなる。


「あー、ルルアム!? 起きて!! 彼女は問題ないから!!」


ペシペシと、彼女を起こそうとするカイト。

だが彼女を起こしたら、どう言って説明する事やら・・・・



◇◇◇



「そ・・そうだったんですか、記憶をなくされた魔族・・・変わった方ですのね。 ははは・・・」


「うん、驚かせてごめんね。」


あの後、気がついた彼女に結局、洗いざらい全部を話したカイト。

隠したところで、この世界では『ステータス』などで種族は、すぐにバレてしまう。

俺の魔法での隠蔽の方法もあったが、そんな危ない橋を渡るより、本当のことを教えてしまう事にしたのだった。

彼女も、ヒカリのその、年相応の態度に、少しは警戒を解いたようだった。

もともとヒカリに、誰かに対する『敵意』なんて無いし。


「ではカイト様、『魔導機関車』のご説明に入らせていただきます。」


「うん、よろしく。」


そうルルアムが言うのと同時に、大きな倉庫の扉がゆっくりと、開いていった。

同時に、暗闇だった倉庫の中に光が差し込み、大きくて、黒光りするそれが姿を現した。


「おおお・・・・・!!!」


少し前に一度、おっさん達には設計図などは見せてもらっていた。

助言をしたりして、より俺の知っている『蒸気機関車』らしい形に仕上げていった。

だが、二次元の設計図と、実際に見る現物は、もうまったく別モノに見えた。


「カイト様のご助言を基礎にして、『動輪』は二対としました。 それに車体を支えるための補助車輪が、一対の計、六つの車輪があります。」


魔石の量などをかんがみて、あまり大きな機関車は出来なかった。

そこで動輪などを減らした。

そうなると必然的に、車体も小さくせねばならない。

形は近いモノで言えば、『一号機関車』がそれに近い。

日本で最初に走った、SLだ。


次に俺は、機関車の運転室へ案内された。

そして、石炭を入れるような扉の説明を受けた。


「ここから適宜てきぎ、魔石と炭を投入します。 この中では常に炭で炎を起こし、そこへ魔石を投入して、より大きな力を得ます。」


「なるほど。」


魔石は、熱ければ熱い環境下に置かれるほど、その魔素の放出量が上がることが判明した。

その中で特に、最適な魔素を放出してくれるのが、大体200℃ほどであったらしい。

炭をくべて燃やすことで熱したこの中に、魔石を入れれば、かなりの魔力が抽出ちゅうしゅつできる。

これは機関車の動力とするのだ。


ここまで説明をしたところで、ルルアムは再び運転室の外へ出た。

彼女はなんだか、イキイキしている。

それを見ていると、俺の嬉しさもひとしおだ。


「『ボイラー』の上にある三つの突起のうち、運転室側にあるのが、走る事で受ける風を押し出して鳴る『汽笛』です。」


これは、俺が提案したものだ。

原理としては、『笛』のようなものだ。

魔物に効き目はないが、『警告』位にはなりえる。


「真ん中の大きな四角い箱は、『媒体庫』です。 漏れ出た魔素をここに入れた、魔石ガラに吸収させます。」


魔石から出た魔素は、すべてをエネルギーに代えられるわけではない。

漏れでた余剰な魔素は、そのまま空気中へ霧散むさんしてしまう。

これは一度ならば問題は無いが、鉄道は一日何度も往復する。

そうなると、漏れ出た魔素は空気中にどんどんまっていき、下手をしたらボルタとベアルの森が、魔窟まくつになってしまう危険性すらあった。

なにより、漏れ出る魔素がもったいない。

そこで、『媒体庫』と言う魔石ガラの保管庫を『ボイラー』の上部に設け、漏れ出た魔素を吸収させようという考えだ。

これならば、一石二鳥である。


「最後に一番前にあるのが、炭の燃えカスなどを排出する『煙突』になります。 ちなみにですが、機関車の前部は開くようになっていて、そこから入って定期的に点検などをします。 それと、車輪ですが・・・」


彼女の説明は、とどまる事を知らなかった。

その一つ一つを聞く度に、『鉄道が出来た』という実感がわく。


「お兄ちゃん、私、眠くなってきちゃった・・・・」


「ごめんな、もう少し辛抱しんぼうして。」


ヒカリには難しかったようだ。


コイツを、早く試運転してみたいものだ。

動いたとき、どんな音がするだろうか・・・

カイトは期待に、胸をおどらせるのだった。

魔導機関車の運行原理についての補足説明。


①ボイラーに、炭をくべてそこへ火を入れる。

 上記は、定期的に炭をくべて、温度調節を行う。

②そこへ石炭車から出した魔石を、少量入れる。

(魔石は、あまり高密度で入れると魔素の放出が少なくなるので、気をつけねばならない。)

③出てきた魔素は、魔力伝道管を通って、動力棒へ伝達。

④魔力で動力棒が動き、車輪が回転する。

 効率を上げるため、動力棒一つで二つの動輪が回る。


※石炭車とは、魔石と炭を入れる炭水車のようなもの。

 今回の機関車には、重量の関係で、『石炭庫』しかない。


※燃やした炭により発生した煙は、前部の煙突から吐き出される。


あと、ブレーキは普通です。

外側からパットを押し付けて、その摩擦で減速させます。

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