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オタクはチートを望まない  作者: 福島 まゆ
第8章 カイトの願望
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第168話・間違いだらけ

これからも、頑張って行きます。

感想など、ありましたら、どんどんお寄せください!!


太陽がちょうど、真上に位置するころ。

ベアルの街には、大聖堂の鐘が鳴り響き、住民たちに昼の訪れを知らせる。

この鐘を合図に、街の住民たちは仕事の手を休め、『昼休憩』を取り始める。


そんな、まったりとした時間が流れ行こうとする時刻。

街を貫く街道を、早馬よりも速いスピードで駆け抜ける、白い服装の青年の姿があった。

最初は何事かと、顔をのぞかせた街の住民たちも、正体が分かると、興味をなくしたかのように、いつもの休憩に戻る。

その青年は、『鉄道研究所』と書かれた看板を出す、先日建てられたばかりの大きな建物に、そのままのスピードで入っていった。


「はあ、はあ・・・・・試作機ができたって本当か!?」


建物に入ると同時に、先ほど聞かされた『ある報告』について質問をするその青年。

言わずもがな、この街の領主、カイトである。

大急ぎで来たようで、彼は肩で息をしており、顔からは汗が流れているのが見える。


「・・・小僧、今は昼休憩中だ。 邪魔すんな。」


特に、ここまで走ってきたカイトを気遣うでもなく、邪険に扱うドワーフのおっさん。

おっさん達はテーブルを囲んでおり、その上には、焦げた物体Xが並んでいた。

それを気にするでもなく、口へ運ぶおっさん達。


「こ、これはカイト様! お忙しい中、このような所へようこそ、おいでくださいました!!」


「やあ、頑張っているっぽいね。 ふう、ふう・・・」


呼吸を整えつつ、おっさん達にまぎれてテーブルを囲んでいたルルアムに、挨拶あいさつを返す。

この物体X・・もとい料理をしたのは、彼女である。

最近彼女は、昼やお茶などで出す、料理やお菓子を、自分で作るようになっていた。


・・・と言っても、貴族時代からもともとそんな、メイドがするような事をしていたはずも無く。

最近始めた料理が、いきなり美味いはずも無かった。

要するに、失敗続きであった。

それは、目の前に並べられた、黒こげ料理が物語っている。

これでも最近は、見た目はともかく味は何とかイケル位には、成長していた。

彼女はそこそこ、器用なようだ。


「最近、料理の腕前も上達したようだね。」


「そ、そんな、とととてもカイト様にお出しなどは・・・・」


「おーそうだぞ、カイト様。 昼休憩中に突入してくるような無礼なテメーになぞ、かけらたりともやらねえからな?」


ルルアムの言葉にかぶせるように、カイトをおちょくって来るおっさんの一人。

「そういうつもりで言ったのでは・・・」と、更にあわてた態度をとるルルアム。

実ににぎやかだ。

ここは来ると、なんだか落ち着く。

屋敷とはまた違って。


そうそう、リラックスし過ぎて、ここへ来た用事を、うっかり忘れそうになってしまった。

これを見なければ、ここまで来た意味が分からなくなってしまう。


「機関車の試作機が出来たって聞いてきたんだけど。」


「ああ、『魔導機関車』な。 そっちの部屋の鍵付の倉庫に保管してある。 無礼なお前には見せてやらん。」


「え~~~、そんなーー!」


このイジワル(?)も、いつもの事だ。

俺が訪ねて来ると、どんな時でもこの調子である。

このおっさん達は、無愛想で困る。

いつもなんだかんだで、こちらの要求は聞いてくれる、優しい人たちなのだけれど。


「ちぇ~~、イジワルだなー。 いいですよ、じゃあ、こっちで昼休憩が終わるまで待ちますから。」


「待ってても、見せてはやらんからなー。」


来た時間が悪かったのは、事実だ。

報告にびっくりしてしまい、なりふり構わずに来てしまったのだ。

こちらが待つのが礼儀である。

別に忙しくも無いしね。

近くの空いた、椅子いすに腰掛けようとすると、ルルアムが何か言いたげにしているのが見て取れた。

彼女も何か、用事だろうか?


「ルルちゃん、どうかした?」


「ああ・・・あの・・・よ、よろしければ、私がご案内差し上げても、よろしいですか?」


「・・・・え?」


ルルアムは、とても恥ずかしそうに小さな声でそういった。

間違いなく。

彼女は、『魔導機関車』の案内をしてくれると、そう言った。

彼女は助手とはいえ、実際には触らせてすら、もらえていないはずである。

が、そんなウソをつく女性ではない事も、よく分かっている。

カイトの驚きも並々ならないモノであったが、ドワーフのおっさん達はそれ以上に、驚きおののいた。


「ルルアム、てめえ本当に小僧を案内できるのか!? 俺たちはお前には、魔導機関車の原理なんざ、何一つだって教えちゃいないぞ??」


このおっさんの言葉に答えるように、彼女は胸元から一冊のノートっぽいのを取り出した。

前にカイトが、『日記を書いている』と言っていたルルアムにプレゼントしてやったものである。

「読んでください」と言わんばかりに、おっさんにこれを差し出すルルアム。

疑心暗鬼といった感じで、これを開いて中のページに視線を落とすおっさん達。

その目が、途中から驚愕きょうがくの色に、染まっていった。


「・・・る、ルルアムよ、これはお前が、全部書いたのか?」


「皆さんが作業されている間に交わされていた言葉と、この研究所にあった『魔術』に関する本の内容を元に書いたのですが・・・ すいません、間違いだらけだったでしょうか??」


ドワーフのおっさんの質問に、上目遣いに悲しげな表情を浮かべるルルアム。

再度彼らは、ノートの中を覗き見る。

そしておっさんの一人が、口を開いた。


「ああ、間違いだらけだ。 だがお前がじゃねえ。 俺たちのほうだ。」


「・・・・・・・・え?」


おっさん達も、賛同するように首を縦に振る。

ん、どういうことだ??


「小僧、やっぱり無礼なお前には、今日は見せん!! 一週間後に出直して来い。」


「昼休憩のときに来たら、叩き出すからな!?」


「え~~、今日はーー!?」


せっかくここまで来たのに、この日カイトは、結局何も見せてはもらえなかった・・・・

こんな事まで書くから、鉄道が遠くなるって、今頃になって気がつきました。

手遅れですが。

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