第17話・武器を所持してみた
拙い文章ですが、どうかよろしくお願いいたします。
これからもどんどん投稿していくつもりです。
異世界生活6日目。
今日は待ちに待った、小柄なおっさんとの約束の日。
そう! 俺の剣がもらえる日なのだ!!!
昨日はうきうきして、夜はよく眠れなかった。
今は完全に、寝不足である。
思わず、欠伸を出してしまいそうだ。
・・・あのおじさんの前でそんなことしたら最悪、武器を渡してくれないかもしれない。
気を引き締めねばならないだろう。
武器屋の入り口に立つと、初めて来た日と同じように、金属を打つ音が聞こえる。
店内をのぞくと、あのおじさんが一心不乱に、何かを作っているのがわかる。
・・・こうしてみると本当に職人さん!!って感じである。 いや、まあ事実そうなんだけど・・・
「あ?何だ小僧か・・・まったく、期日どおりに来てんじゃね~よ!!」
睨むようにこちらを見てくる。
・・・理不尽である。
こちとら、五日という日数を、指折り数えて待っていたというのに。
「てめえの武器はこれだ。掛けてある布ぐらい、自分で取れ!」
そう言って茶色い布にくるまれている俺より大きな長い、物をカウンターテーブルにドカッと置く。
「・・・・。」
俺は今、どんな顔をしているだろうか?
第一印象は、デカイ。 ともかくデカイ、である。
それは布越しでも、前来たときに振った大剣ぐらいの大きさがある。
いや、もっと大きいかもしれない。
おじさん・・・・俺の剣を振ってる光景見たでしょ?
こんなん、俺には絶対使いこなせないって・・・
「何してんだ? さっさと布とって現物確認しろよ??」
これはおじさんの、俺に対する試練なのかもしれない。
『重い剣は、お前の大切な者達の重さだ』とか、聞いたことがある。
俺はあきらめて、布をしゅるしゅる解いていく。
中には、黒々とした重々しいつやつやの何かしらが入ったいた。
・・柄はある。 ということはこの黒光りするのは・・・
「すごい!鞘付きだ!!」
「鞘の無ぇ剣があるか、馬鹿野郎!!」
ごもっともです・・・ でも感動したんですよ。そこは分かってください。
これはつい、見とれてしまう程に綺麗である。
余計な装飾類がない分、鞘の美しさが引き立つ。
柄のほうも、がっしりした木製で、持ちやすいようにグリップが付いており、重厚感が漂う。
「早く鞘から抜いて、何度か振ってみろよ?」
なんだかおじさんがニヤニヤしている。 ふらつくとこでも見て、笑う気なのだろうか?
いきなり持ち上げて重さで落として、刀身に傷でもつけたら大惨事である。
机に置いたまま、ゆっくりと滑らせるように鞘から刀身を引き抜く。
すると中から、黒光りする鞘とは対称的な、銀白色の剣が姿を現す。
「おおう・・・」
その美しさに俺は、言葉を失った。
刀身は、俺の姿が映るほどピカピカ輝いている。
これは武器ではなく、芸術品ではなかろうか?
「・・・・・。」
正面にいる、おじさんの無言の圧力で俺は、一挙に現実へと引き戻された。
ああ、そうでしたね。 振るんでしたね?
さっき以上に気を引き締めて、腕に力を込めて剣を持ち上げてみると・・・
「何これ、軽!!???」
さっきから驚きの連続だったが、これは本当にびっくりした。
軽い。 本当に軽いのだ。
強いて言うなら、買ったばかりの、丸められたカレンダー。
重さとか感覚的にアレに近い。
・・・・すんません。 例えがこれしか思いつかなかったんです・・・。
数回振ってみたが、安定していて手からスッポ抜ける心配も無い。
これは本当に俺にぴったりの剣だ。
あ。 大事なこと忘れてた。
「えっとこれ・・・いくらですか?」
冷や汗を流しながら訊いてみる。
あんまり高いと、所持金全部でも足りないかもしれない。
あれの時はローンだ!!
・・・剣のローンて、なんだろうか?
「ああ~~。 面しれぇもん見せてもらったしな・・・銀貨五枚ぐらいもらっとくか?」
少し考えるようなそぶりを見せて、特に気にかけた様子も無く、そんなことをおじさんは言ってきた。
「ええっっ!安!?」
それでは材料費にしかならないのではなかろうか?
いや、これだけのものだ。 材料費にも届かないかもしれない。
「うるせー。俺がつけた値段に文句あっか?」
「・・・・・。」
ありがとうございまーす。
一生大切にしまーす。
この後、防具について相談をしたら、「そんなことだろうと思った」と、銀貨二枚ですごく良さそうな、
防具を売ってくれた。
本当にいいおじさんだ。
やることはやったし、後はゆっくり宿で明日のことでも考えようと、踵を返したところでおじさんに呼び止められた。
「こいつは餞別だ。持ってけ!」
おじさんの手にあるのは、今もらったロングソードをそのまま小さくしたような中型剣と、
ナイフのような小型剣。
「いやいや、貰えないですよ!? そんな物!」
あれだけ剣とか防具を安くしてもらっておいて、ここまでしてもらうわけにはいかない。
「アホか!? そんなデカイ剣一本で渡り歩けるほど、冒険者稼業は甘くねえ!! 分かったらこれ持ってさっさと帰れ! いつまでも店の中にいられたんじゃ営業妨害だ!!」
無理やり二本の剣を押し付けられ、半ば強制的に店の外へ出された。
俺は一礼して、この場を離れるのだった。
布越しでも、『この剣はすごい』と思う。
かなり俺にはミスマッチな、強い剣だ。
明日からは魔物の討伐とか、しようかな?
明日からのことを考えると、いてもたってもいられない。
後でギルドに行って、依頼の吟味でもすることにしよう。
ちなみにこのすぐ後、服屋の熊おじさんと目が合って、俺に向かってきらりと光る歯を剥き出しにして、親指を立ててきた。
なんかドッと疲れたので、俺は宿でしばらくの間、ゴロゴロしたのだった・・・・・
剣の試し切りは、明日以降にする事にしよう・・・
カイト君、やっと武器が手にできてよかったですね。
ちなみにウサギの『のぞみ』ですが、この日も頑としてカイトに付いてきたので、やむなく、首に巻きついていました。
武器屋のおじさんは、「変わったファッションだな・・・」くらいにしか考えていなかったようですが。




