第165話・建設状況その3
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「あの・・・・カイト殿様、本当によろしいのですか?」
「何が?」
今、カイトとダリアさんは、ベアルとボルタの間にある大きな川の側にいる。
この川は流れが急で、巨大な谷間となっており、川は百メートルほど下を流れていた。
ここは鉄道建設の予定ルー途上にあるひとつの難所であった。
ベアルからボルタへ向かう街道が一部、大きく蛇行し、かなりの遠回りをしていたのも、この川のせいである。
鉄道まで、そんなに大きく蛇行させる気は、カイトには更々なかった。
前に山脈を通る街道に架けたような、大きな橋をここに、架けようと彼は考えていた。
もちろん通る予定の『列車』は、街道を通る馬車とは重さが段違いなので、もっと頑丈な物をこしらえるつもりだ。
その過程でどうしても、ドラゴンのダリアさんの力が必要であった。
だが、ダリアさんは乗り気ではないようである。
「こう言っては何ですがカイト殿様、確かあなたは、『護衛』なる者をお連れしなければならないはずでは? 今ここにはカイト殿様のほかには、私しか居りませんが・・・・・」
「・・・・・・。」
不安そうな表情を浮かべるダリアに、乾いた笑みを浮かべるカイト。
ヤバいのは、分かっている。
でも彼らを連れて来たらきっと、アリアに情報が行って、止められる。
だからあえて、連れて来なかったのである。
「ここは、奴隷さんたちにさせたら難工事になる。 谷底に落ちて死ぬ人も出るかもしれない。 俺はそれを、どうにか阻止したいんだ。」
「まあ、気持ちは分からないでもないですが・・・・」
「トンネルはね、どうせ掘る予定なのは一つだけだから、任せることにしたけど、この川は何分、危険が多いんだ。 後は・・・・」
ここまで言ったカイトは、腕を組んだ後、ダリアさんに向き直った。
そこには少し、困惑の感情が見えていた。
「ダリアさんに手伝ってもらうのに、俺以外がいたら危ないなーって。」
「私は正体がバレようが、メイドを辞める気はありませんが?」
カイトの発言の意味を、いち早く汲み取ったダリアさんは、間髪を入れず、そう答えた。
さっきも言ったが、彼女の正体はこの世界でも『力』の象徴とされる、ドラゴンである。
三年前にカイトとガチンコバトルをして、善戦した過去を持つ。
要は、『正体がバレたら、メイドどこの話じゃない』のである。
どこかカイトのように抜けている彼女は、この辺りがよく、分かっていなかった。
「まあ、良いや。 ダリアさん、ドラゴンになってくれる? 今から橋を作るから。」
「・・・頑張りますが、カイト殿様の『浮遊魔法』の手助けが・・・・」
「大丈夫、大丈夫。 前より小さいから。」
山脈の街道整備の際、バカデカい橋を持ち上げさせられ続けたダリアさんは、次の日、竜生初めての筋肉痛になった。
彼女の中では、そこそこなトラウマになっている。
その話をしているようだった。
ここは山脈の河川とは違い、流域が広くないので前よりは橋も、小さくなる予定である。
だが。
「じゃあダリアさん、部分で組み立てて行くから、持ってて。 行くよーー?」
ずん!!!
「~~~~~~~~っっっ!!!!」
カイトの声と同時に、自分の手にかかった重量に、ダリアさんは苦悶の声を上げた。
いや、重たすぎて、声が出せなかった。
『列車通過用の、強度の高い橋』は、小さくてもかなりの重量があったのである・・・。
◇◇◇
「おー。 レールも枕木もきれいに敷けているね。 駅はどう?」
「大公様、お探ししていたのですよ! どこへ行っておられたのですか!?」
「ちょっと用事でね・・・うん。」
護衛の騎士さんの質問に、お茶を濁すカイト。
先ほど、架橋工事も無事終了し、元居た工事現場へと、転移で戻ってきたのだった。
ちなみに傍らに、ダリアさんの姿はない。
架橋終了と同時に、ひっくり返ってしまったのである。
彼女は人間化できるまで、体力を回復させた後、屋敷へ帰した。
今は、代わりに別のメイドさんが、傍らにいる。
ちなみにヒカリはすねており、このところ付いて来ていない。
先日置いていった事を、根に持っているようだ。
寂しいが、こればっかりはどうしようもない。
時間が解決してくれることだろう。
「レールとか枕木とか・・・だいぶきれいに敷けているね。 安心したよ。」
「はい! 寸分の狂いもなく、工事に当たらせております!!」
「・・・ちゃんと休憩も?」
「三時間に一度、『おやつ』なる物を取らせております!!」
騎士のこの報告に、満足そうにするカイト。
ここは、肉体労働だ。
一時間に一度の休憩、三時間に一度の栄養補給を徹底させていた。
栄養の補給の観点で、奴隷たちには適度な『休憩』と『間食』を取らせていた。
これは、重要なことである。
やっと、夢が現実のものとなりかけているのだ。
彼らには適度に休憩を取らせ、休みもきちんとやる。
この点、カイトにしては珍しく、抜かりは無かった。
「トンネルは掘り抜いたんだっけ? 今はどうなってる?」
「現在は奴隷の一人に、中面を補強させて居ります。 そう長いトンネルではないので、まもなく終了するでしょう。」
報告に、さらに満足そうにするカイト。
この工事に当たり、彼は奴隷に魔法を教えていた。
もちろん、教えるのは能力バカの彼ではなく、教会の人たちなどに。
手に職があって、損は無いと、彼は踏んだのである。
魔法はあって、困るようなものではないのだから・・・・
鉄道建設工事は、大詰めを迎え始めていた。
とおい。
てつどうがとおい・・・・




