第164話・鉄道研究所
この物語のおかげで、今後書く予定の話しの穴や、問題点が洗い出されてきました。
現在書き直しも含め、作業中です。
投稿まで、数年かかると思われます。
今しばらくの間、お待ちください。
その間、文章練習も含め、この物語は続きます。
なお、発表中の『魔王様は出稼ぎに行っておられます!!』は、11月中には開始の予定です。
「やー皆様、ご機嫌麗しゅう!!」
「なーにが、『ご機嫌麗しゅう』だ!! こっちはテメーのせいで大迷惑してんだ!」
上機嫌で『研究所』へ入ってきたカイトに悪態をつくドワーフの皆様方。
先日カイトは、アリアに『交換留学生』の件がバレ、こっぴどく叱られたのだった。
しかし反面、事情を理解したアリアはこうして、機関車製造に関する研究所の設置を、認めてくれてのであった。
実にうれしい誤算だった。
幸いにも、アリアに『俺がグレーツクの事実上のトップ』と言う事はバレなかったしね♪
(彼は未だ、彼女にほとんどバレている事に、気が付いていない)
「『動力』の方は、どうなっている??」
「ああ、今は魔石が放出する魔素を、いかに増やすかが課題だな。 まだまだ今のままじゃ、とても足りねえ。」
魔石が放出する魔素は、微量である。
これを増やさなければ、鉄道の動力には足りない。
今はその研究中のようだ。
うん、鉄道は近いな!!
「いつもありがとう。 お茶でも入れてこようか?」
「いらねーよ、ヤツが時間を見計らって持ってくるんだ。 テメーが厄介な女をここに連れてきたんじゃねえか! そのせいで一定時間ごとに休憩を取らされて、こっちは大迷惑だ!!」
カイトの冗談に、苛立ち気味にそう言い返してきた。
その言葉に賛同するように、他の者たちからも、声が上がる。
「そうだぞ、小僧! あのヤロウ、四六時中俺たちに張り付いてやがるんだ!! そのくせ夜は、何のかは知らんが、勉強中だ。 気になってこっちは、毎日が寝不足だぞ!??」
そうだ、そうだと、声をそろえるドワーフのおっさん達。
この光景に、苦笑を浮かべるカイト。
と、ここで後ろの扉が軽く二回、叩かれた。
「おじ様方、休憩のお時間ですわ。 お茶を入れてまいりましたので、お休みください。」
カイトの背後から、女性の声が聞こえてくる。
この声に呼応し、ヤレヤレと作業の手を止めるドワーフたち。
「よ、頑張っているみたいだね。」
「こ・・これは・・・!!」
カイトの存在に気が付いた彼女は、お茶を載せたお盆を手に持ったまま、きれいに伏礼をとった。
ちなみに彼女の手には、お盆に乗ったお茶が持たれている。
慌てているせいか、彼女はそのお盆におでこをぶつける。
見慣れているせいか、この場に居る者はカイトを含め、その光景を温かく見守った。
彼女は他でもない、ルルアムである。
先日、この街の治療院で彼女を見つけたカイト。
彼女は三年前に、アリアの暗殺を未遂した罪で、身分を奴隷に落とされていた。
そのせいか、体中がドロドロに汚れ、体も大きく衰弱していた。
初めて彼女を見たときの、貴族然とした雰囲気は、そこには一切なかった。
その原因の一端に自分の存在があったカイトは、彼女をどうにかしようと、知恵を振り絞った。
しかし彼女が、アリアの暗殺を企てたのは、紛れもない事実だった。
アリアの心情を考えても、屋敷に迎え入れる事はできなかった。
そこで思いついたのが、『研究所の助手』
機関車製造に関する研究を一手に担っているこの場で、働いてもらうことにしたのだ。
特に危険は感じていない。
魔法で先日、念のため彼女の心を覗いてみたのだ。
念のため。
ここ、重要。
そんな彼女の心は今、『後悔』と『やり直そう』という感情にあふれている。
もちろん、いい意味で。
が、その過程で激しく人見知りするようになってしまった。
そこで彼女には、ここで更正してもらおうと考えたのだ。
幸い、ここにいるドワーフのおっさん達は、いい人揃いだ。
彼女にも、いい影響を与えているようで、俺に対する態度が幾分、軟化し始めてきた。
この調子である。
「ルルアム、なんだか最近は夜、勉強中なんだって? 何の勉強をしているの??」
「い・・・いえいえ! 勉強だなんてそんな・・・私がしているのは、日記のようなものです!!」
「あ・・・そう。」
それならさすがに、詳細を聞くわけには行かない。
いったい夜更けまで、何をしているのかと思っていたのだが・・・・
でも日記か・・・・
自分を振り返っているのだろうか?
いい事だが、やりすぎは禁物である。
後悔している人間が振り返る日記の内容は、読むだけで気がめいってしまう。
それを書いていたら、どんな人間でも参ってしまうだろう。
特に、今の彼女のような者には。
「根をつめすぎないようにな。 夜はちゃんと寝ろよ?」
「おおお・・・お気遣いありがとうございます!!」
再び一礼し、お盆にごちんと、おでこをぶつけるルルアム。
他人のことなので、あまり口出しはできないが、それでも言わずには居れなかった。
命令することも出来るが、それでは何の解決にもならないので。
「ところで小僧、今日は何の用だ? この間みたいに『冷やかしに来た』とか言いやがったら、張り倒すからな!?」
「まさか! ところでさっき言っていた、魔石の事だけどさ、詳しい人に聞いたら『暖かいところほど、魔素を多く出す』って聞いたんだけど・・・」
「なるほど、その性質は聞いた事があるな。 それを応用して・・・」
カイトのこの話に、食いつくドワーフ達。
問題がまたひとつ、解決できそうになった。
「あ・・あの・・・休憩・・・。」
更正ルルアムの言葉は、ヒートアップした彼らには、ついぞ届いていなかった。
彼女の受難は続く・・・・気がする。
まだまだ、鉄道は遠いぞ?
って言うか、いろんなことが起こるな、この物語。
キャッチフレーズの鉄道が、果てしなく遠いです・・・