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オタクはチートを望まない  作者: 福島 まゆ
第8章 カイトの願望
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第163話・建設状況・・・の前に。

これからも、頑張っていきます。

感想など、ありましたら、どんどんお寄せください!!

今日の天気は、晴れ。

空には雲ひとつなく、山脈から吹き下ろす風はこの上なく、心地よい。

まさに、絶好の『鉄道建設日和てつどうけんせつびより』である。


・・・・どんな日和ひよりだろうか?

そんな事お構いなしに、カイトは大きく深呼吸をした。


「大公様、お呼びになりましたか?」


「お、早いね。」


背後からクレアさんの声がして、カイトは窓から眺めていた、外の景色から視線をはずし、室内のドアの方へ顔ごと向けた。

それに呼応するように、一礼するクレアさん。

彼は先ほど、用事があって出掛ける事となり、その為にお付きの者を手配したのだった。

カイトは、これまでの数々の愚行により、その行動を、厳しく制限された。

それが、この『お付の人の手配』に他ならなかった。

ちなみにカイトはタマに、これを忘れては、皆に怒られる。


「残念ながら、本日は私は大公様に付いていく事はかないません。 代わりに手の空いていた、セリアを向かわせようと思っていたのですが、よろしいですか?」


「ん・・あー。 セリアさんね・・・じゃあ、護衛は・・・・・・」


クレアさんから出てきた、『セリア』と言う女性の名前。

この屋敷のメイドの一人である。

三年ほど前、騎士様の剣で怪我をしてしまった、もと王宮のガーデナーメイドさんである。

ちなみにこの屋敷でも、王宮時代同様の仕事を主に、こなしていた。

初見のときのインパクトが強くて、カイトの脳裏に焼きついていたのであった。

いまさっき、彼女の名前が挙がったとき、カイトが言葉を濁したのも、この一件が大いに関係していた。

それは・・・・


「って事は・・・・護衛の中にゼルダさんがいるね?」


「よく、お分かりで。」


ビックリしたような表情を浮かべるクレアさん。

やはりか・・・・

セリアさんと、ゼルダと言うこの屋敷の護衛さんは、いわば恋人であった。

三年前から付き合っている。

それも、先ほどの『騎士様の剣で、怪我をした。』あたりが関係していた。


この二人は相性がいいのか、行動がよく、リンクする。

なぜか使用人たちに与えている休日は、この二人がいつも被っている。

メイドさんと、護衛の騎士さんでは、休日パターンを変えているにも関わらずに・・・だ。

そして今回もそう。

どうしてこの二人はこう・・・・


カイトはこの、ラブカップルが苦手であった。

職務中にも、桃色のオーラが見えてくる。(よう気がする)

完全に、彼の人間の選り好みである。


「あの・・大公様? 何か不都合なことがあれば、おっしゃって頂ければ・・・・」


「いや、何でもない。 もう少ししたら出発するから、玄関に集めてくれるかな?」


「かしこまりました。」


クレアさんはそれだけ言って彼に一礼すると、部屋を退室していった。

それを見送り、さて、とカイトも外出の準備を始めた。


◇◇◇


今日これから向かうのは、この街に最近できた、治療院・・・つまりは病院である。

ここには、王都で買ってきてもらった、奴隷数人が静養していた。

あまりに衰弱が激しかったり、子供だったりした者が、ここに居るのである。

奴隷にこの待遇は普通、ありえないものであった。

しかしカイトを含め、関係者各位はその事を、気にも留めていなかった。


彼らには、『人権』を与えるつもりなのだから、この待遇は当然だ。


それが、共通の認識であった。

そしてカイトが今日、ここへ赴くのは、彼らの『視察』をするためであった。

彼らが仮病を使って居はしまいか、治療経過などはどうか。

それを調べるためだ。


・・・と言うのは、建前。

するのは、『ごあいさつ』だけである。

彼らだって、なりたくて奴隷になったわけではない。

治療院に居るものたちからもその辺りの『生の声』を聞くため、こうして赴いたのだった。

今まで忙しくて、一度も顔合わせをしたこともなかったので。

ちなみに、ヒカリ達は『つまらなそう。』の一言で、付いて来る事はなかった。


「ん?? あの人は・・・??」


治療院の視察中にカイトは、治療院に居るその奴隷たちの中に、見知った顔があるのに、気がついた。

相手は女性である。

この世界に来てまだ三年。

知り合いなんてそう、居はしないので、見間違いかもしれない。

そう思って、顔をのぞき込むと・・・


「!!!!!!  あ・・あなたは・・・!! お・・お願いでございます! あの暗い部屋にはもう、入れないでくださいまし!!」


俺と目を合わせた途端に、カッと目を見開き、すごいスピードで後ずさりをしたその女性。

茶色の髪に、赤く染まった双眸そうぼう

その瞳は、『恐怖』の色で染まっている。

俺は、この女を知っている。

そう、彼女は・・・


ルルアム・ラウゼン。


アリアの従姉いとこであり、元公爵家令嬢である。

三年前、アリアの暗殺を企て、俺がその後に拉致した人間である。

その後、王宮の騎士たちにしょっ引かれ、裁判にかけられたとか何とか・・・

少なくともこんなところに、居るような人間ではなかったはずだ。

いったい彼女の身に、何があったと言うのか?


「な・・・なんで、アンタがここに居るの?」


「すみません、もうあのような事は致しません!! ですからどうか・・どうか!!!」


ダメだ。

三年前にイロイロしてしまった副作用で、すっかり萎縮いしゅくしてしまった頃と何も変わっていない。

彼女から何か聞くのは、無理そうだ。

そこで後ろに居るゼルダさんに聞いてみる。


「は! あの者は、三年前に極刑級の罪を犯した、元ラウゼン公の娘、ルルアムでございます。」


それは知っている。

聞きたいのは、その後。


「彼女は、裁判にて死罪を申し渡されたのですが、国王陛下の情状酌量じょうじょうしゃくりょうで、身分剥奪のみが成されましたようです。」


身分剥奪とは文字通り、身分を没収されると言うこと。

この身分剥奪は滅多に行われず、執行されるとその身分は、最低のものになる。

つまり、『奴隷』だ。

彼女の首には、『奴隷の証』たる枷がはめられている。

これは魔法で縛りがされており、主人以外は外す事はできない。

死罪になるぐらいのケースだったのだから、これは妥当な判断ともいえた。


だが。


「おねがい・・・お願い・・・・・!!」


「・・・・・。」


あちこちが汚れ、衰弱した体。

なるほど、買い付けに行かせた使者が連れて来たのも、うなづける話だ。

目の前に居るのは、もうあの時のゴミカスだった、傲慢な貴族娘ではない。

傷心の、ボロボロになってしまった女性である。


「んーー、見て見ぬ振りはちょっとなーー。」


彼女がこうなってしまった一端は、自分にある。

カイトは一応の、責任を感じていた。

だが屋敷には、『被害者』のアリアが居る。

ルルアムをどうにかするには、まずアリアに配慮をしなければならなかった。


「大公様、何をお考えなのですか?」


「いや・・・う~~ん!!」


まさかこんな事が起こるなんて・・・・

俺って本当、呪われているんじゃなかろうか?

問題が、ひとつ増えてしまった。

同時進行で今現在、いくつの『モンダイ』がある事やら・・・・

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