第162話・建設状況その2
これからも、頑張って行きます。
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「カイト、私まだ、眠いよ・・・・」
「うーん・・・ムニャムニャ・・・・・」
「カイト殿様、このような朝早くに、いったい何用でございますか?」
「みんな起きたな!? 関心、関心!!」
東の空がわずかに白み始めた頃、この時間はまだ、起きている者は少ない。
そんな中、領主邸の玄関前には、四人の姿があった。
トビウサギの、ノゾミ。
魔族の、ヒカリ。
地竜の、ダリアさん。
ばけも・・もとい人間の、カイト。
異色の、面子であった。
「諸君には、重大な使命がある!!」
「それって、今じゃなきゃだめなの?」
「ダメです。」
寝ぼけ気味に目をこするヒカリの質問に、即答で返すカイト。
カイトがこんな時間に、彼女たちを呼び出したのにはちゃんと、理由がある。
それは・・・
「まずは転移だ!!」
カイトのその言葉に呼応し、転移魔法発動の光に包まれる四人。
この事態に気づく者は、誰一人としていなかった・・・・
◇◇◇
「これを、運んでいただきたい!!」
「「どこに?」」
「ほほう・・・これまた、面白そうな物体でございますね。」
転移で彼らがやってきたのは、まだ夜も明けきらないグレーツクの港の一角にある鉄工所。
その前には、鉄でできた棒が、うず高く積まれていた。
そう、『レール』である。
彼はこのできたレールを、先日から順次、建設現場に運び入れる作業に着手していた。
そこで、問題が起きた。
カイト一人では、運べる量に限りがあったのだ。
物理的に。
うっかり落としたら重さの関係で危険なこともあって、浮遊魔法で運ぶこともできなかった。
今までは、これを少しづつ建設現場に、運び入れていた。
そんな時、ふと思ったのだ。
『だれか、力持ちの人が手伝ってくれないかなー』と。
そこで白羽の矢が立ったのが、ノゾミたち人外三姉妹(?)である。
この三人は、ヤバイほど力持ちである。
一人でたぶん、十トンは持てる。
ダリアさんなら、百トンも余裕な気がする。
これを使わない手は無かった。
なお、目立たないなどのためにも、白昼堂々とするわけには行かない。
そこで、この時間である。
「俺が一人づつ、運んでほしい場所に転移で送る。 その場で置いてほしい場所は指示するつもり。」
「ふーん、まあ、カイトが運べって言うなら運ぶけど・・・」
「楽しそうだから良いけど・・・」
ノゾミとヒカリは、一応協力してくれるようだ。
ダリアさんは・・・・
「この『鉄工所』と書かれた建物ごとですか? それはまた重そうな・・・・」
「いや、運ぶのはこの、鉄の棒だけで良いから。 ダリアさん。」
一考するダリアさんに、突っ込みを入れるカイト。
彼女も、問題は無いようだ。
っていうか、建物ごとでも『重そう』の一言・・・
全員、心配は不要のようだ。
「じゃあまずは、ノゾミから! 運んだらただ置くんじゃなくて、もって来たレールの整理もしてくれ。」
「整理?」
カイトとノゾミはそれぞれレールを二本づつ肩に持って、転移をしていった。
残された二人もそれぞれ、持てるだけのレールを持って、その場に待機をした。
◇◇◇
「カイト様、私、言ったはずですよね? 『奴隷たちの仕事を取ってはいけない』と・・・」
「えっと・・・なんで怒ってるの、アリア?」
同日、昼近く。
もはやおなじみの光景の、『説教の図』が再び、出来上がっていた。
カイトが執務室のいすに座っている。
アリアが、両手を机に置き、上半身をカイトのほうに突き出す。
そんな絵面だ。
この格好だと必然、アリアの大きな胸が強調される格好となり、彼の視線も自然、そちらを向いてしまうのだが、さすがに慣れた事もあって、今はそんなことは無い。
一応、成長である。
「どうもこうもありませんわ! 夜のうちに木を切り出して、『まくらぎ』なる物を作ってしまわれましたね!? 彼らに作らせようと踏んでいましたのに・・・!!」
「ああ・・・」
アリアが怒っているのは、『枕木』製造の件について。
これは、俺だけで作ったわけではない。
朝方にレール運搬を手伝ってくれたノゾミたちに、ちょっと手伝ってもらったら、いつの間にか相当な量が出来てしまっていただけである。
それも、転移で工事現場に分散するように、置いてきた。
さすがは・・・・の成果を出した、面子であった。
アリアは当然、そんなことはついぞ知らない。
「『ああ。』ではございません!! いいですか、次の『駅』造りでは決して、このような事は無いようにしてください!?」
「ご・・・ごめんなさい。」
カイトの返答に、怒りをあらわにするアリア。
それに謝るカイト。
相変わらずの二人であった。
「ところでカイト様、また、私を欺いておいででしたわね?」
「え・・・それはどう言う・・・」
ここまでカイトが言葉を発したところで、ダン!!と、机の上に紙の束を置いたアリア。
よく見るとそれは、何かの報告書のようだった。
『交換留学生の動向について』と書いてある。
マズイ・・・・・・
冷や汗をだらだら流すカイトに、笑みを浮かべるアリア。
その笑みは、この上なく冷たい。
「フフ・・・カイト様、きっちり、お話は聞かせていただきますわよ?」
「・・・・・。」
今日は、工事現場に行くのは無理そうだな・・・
そう、あさっての方向に思考をとばす、カイトであった・・・・・
着々と、進んでいっています。




