第161話・建設状況その1
これからも、頑張って行きます!!
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「あのー、大公様、あなた様がここに居ると、奴隷たちが仕事をしにくいと思うのですが・・・・」
「え、どうして? 俺のわがままにつき合わせているのだから、俺も何かしなくちゃ。」
そう見張りの騎士に言って、持ち前のバカ力で木を引き抜くカイト。
周りには、三十名ほどの奴隷たちが、同じような作業をしている。
カイトは、アリアに口すっぱく言われている関係もあって、貴族の服装である。
不思議な光景・・・
というより、気になって仕方が無かった。
主に、『何かされはしまいか?』と言う、不安な方向で。
奴隷たちの心臓は、今にも止まりそうである。
カイトは当然、知る由も無い。
「俺はさ、嬉しいんだ。 やっとここまで来て悲願が達成すると思うと・・・。」
「はあ・・・。」
カイトに注意をしては、毎回この返事である。
さすがに参る。
立場上、大公たるカイトのする事にあまり干渉はできないし、かといって現状はマズイ。
その狭間で護衛の騎士は、どうしたものかと、首をひねり続けていた。
そして・・・
「あー! 皆さんは一時間に一回は休憩してくださいね!! 俺は力がみなぎっているので、このまま続けますけど。」
「「「え・・・・・?」」」
奴隷たちにこんな事を言うカイト。
大公様が働いているのに、奴隷が休めるとでも思っているのだろうか?
カイトはまだ、思慮が浅いとしか言いようが無かった。
そうこう言っているうちに、どんどん予定ルート上にある木を、引き抜いていくカイト。
ちなみにこれに呼応して、付いてきたメイドさんや騎士さんたちも、この作業に従事しているのは言うまでも無い。
迷惑な話だ。
「あ。 そういえば、俺用事があった。 ちょっとここ、任せていいかな?」
「も・・・もちろんでございます大公様!! どうかこの場は、どうか我々にお任せください!!」
奴隷たちも、騎士さんの言葉に呼応するように顔を上下に振る。
思いは一つ。
『正直、助かったぞ。』
考えていることは、皆同じだったようだ。
カイトはそんな事、気づくはずも無く、転移でこの場から姿を消していった。
後には、平穏な空気が流れ出した、工事現場が残されていた。
ちなみに『大公様に付いていくの忘れた』と、メイドさんたちが頭を抱えるのは、このすぐ後のことである・・・
◇◇◇
「ダリアさーん、現状どう??」
「これはカイト殿様!」
カイトの姿を見つけて、一礼するダリアさん。
カイトが転移で向かったのは、山脈の頂上付近である。
ここは、標高の関係もあって、草木がほとんど生えていなかった。
そこでカイトはここを、採石場にしたのだった。
目的は、鉄道のレールの下にある砂利・・・
バラスト用である。
この山脈の石を、ダリアさんの魔法で粉々にして、工事現場に行って木を切り倒して土を固めた端から、このバラストを散布していた。
人海戦術で。
さすがにこの石の切り出しは、カイト達でやったほうがよかった。
高山病などになられては、困る。
「カイト殿様、『ばらすと』なる物は、まだ必要でございますか?」
「んーーーー、多くて損は無いから、お願いできるかな?」
「かしこまりました。」
カイトの回答に、一礼を返すダリアさん。
これに満足したのか、カイトは再び転移をした。
やることは、まだまだある。
この後、この辺りの地図から二つほど、山が消えた。
◇◇◇
「おい小僧!! 今までどこ、ほっつき歩いていやがった?? こっちはテメェが居なくて、四苦八苦だったんだぞ!?」
「ごめん、ごめん。 こっちの方は、うまくいってる?」
「ったく、難しい注文しやがって・・・ 言っとくがそうホイホイはできないからな!?」
ドワーフ達の言葉に、笑顔でうなづくカイト。
ここは、グレーツクの鉄工所。
そこでカイトは、『レール』造りを頼んでいた。
これも、彼らにしかできないので、こうした。
ちなみにベアルの交換留学生(形だけ)達には、現在『機関車の研究』を引き続き、していただいている。
「それでさ、今日はまた、頼みたいことがあるんだけど・・・」
「はあ!?? まただと?? もうウチじゃ、今で手いっぱいだ、よそをあたれ!!」
「そう言わずにさーー。」
彼らの肩に手を回し、『酒』で釣ろうとするカイト。
だが現状で満身創痍状態の彼らは、なかなか首を縦には振らなかった・・・・・
◇◇◇
「ここだけは、俺がどうにかするか・・・・・。」
どうにか『車輪の製造』などをグレーツクで取り付けたカイトは、川に居た。
川と言っても、小川ではない。
そこそこ急流の、深い谷のような場所だ。
ここは、ベアル=ボルタ間にある最大の難関。
ここに、橋を架ける。
それが、カイトがここへやって来た目的だ。
ここは谷底が深いので、奴隷たちにやらせては、確実に死者が出る。
そこでここだけは、自分一人でやる心積もりであった。
ただし、課題があった。
「保留・・・かな? ダリアさんが居ないと、俺一人じゃ厳しいし。 材料もどうにかしないとなー。」
まだ着手はできなかった。
まあ、する事はまだあるので、今日のところはそれで良いか。
カイトはそれだけ言うと、再び転移で、その姿を消していくのだった・・・・・
まだ、続きます。